もくじ
ポイント
- 漢文を学ぶ意味(メリット)として、「1、自分にとっての理想の生き方を見つけるヒントを得られる」「2、日本語の能力(特に漢字・熟語への理解度)が高まる」「3、他者を理解する能力orコミュニケーション能力が上がる」「4、グローバルな環境に適応することができる」が挙げられる。
- 学習指導要領が述べる漢文を学ぶ意味として、以下の5つが挙げられる。
- 日中関係を足がかりとして、①自国文化への理解・尊重、②他文化への理解・尊重ができるようになり、③自国と他国の関わりへの興味を持てるようになるため。
- ④自分の生き方を決めるための参考として活かすため。
- ⑤自分の考えや気持ちを表現するノウハウを漢文(や古文)から学ぶため。
1、漢文を読む意味はない?
今日は質問があるんですけど、いいですか?
良いですね!疑問を持つことは大切です✨何でしょう?
数年前、「RADWIMPS」の野田さんが「漢文の授業は意味ない」ってTwitterで言ってましたが、そもそも、漢文を勉強する意味って何ですか?💦
私もそのツイートは見たことあります。「なんで漢文じゃなくて中国語にしないのか?」ともおっしゃっていたと思います。興味深い内容ですね。
漢文が「意味ある」「意味ない」と考えるのはあくまで個人の感想なので、個人で自由に決めれば良いと思います。しかし私自身は漢文を学ぶ事には沢山のメリットがあると想っています。
じゃあ、漢文にどんな意味があるんですか?
2、漢文を勉強するメリットは沢山ある!
私個人としては、漢文を勉強するメリットとして、以下の4つが挙げられると思います💡
1、自分にとっての理想の生き方を見つけるヒントを得られる
→「どのように生きるべきか」について、漢文では多種多様な観点から理想の生き方を描く。その中には、きっと自分と相性の良い理想があり、生きる上での指針になっていく。
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2、他者を理解する能力orコミュニケーション能力が上がる
→漢文には、現代の我々にも通じる考え方や感性が豊富に含まれている。それを理解できれば、他者を理解しやすくなり、コミュニケーションを取りやすくなる。
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3、日本語の能力(特に漢字・熟語への理解度)が高まる
→漢文は古代の中国語だが、ある意味日本語でもある。なぜなら、日本語(の特に文章語)は漢文を下地として発展してきたから。
→実際、漢字や熟語など、漢文は現代日本語とも密接に関わる部分がある。熟語は最小単位の漢文。
・熟語力を高めて漢文を読めるようになろう! 熟語の種類の解説付き
・熟語を細かく分類できればスラスラ漢文が読めるようになる?(上級篇)
4、グローバルな環境に適応することができる
→昔の中国人の文章=漢文を読むということは、昔の中国の文化・価値観に触れるということである。→他国の文化・価値観を学ぶということは、結果的に自国の価値観を認識することにも繋がる。
→しっかりと自国・他国を知ることができれば、異文化を頭ごなしに「気持ち悪い」「理解できない」と否定しづらくなり、グローバルな環境にも対応しやすくなる。
メリット沢山ですね!私はまだ漢文をそこまで勉強したことがないから、ピンとこない所も多いですが、沢山勉強してきたら分かるものでしょうか?
そうですね。中学・高校での漢文教育は、あまり時間をかけない傾向にあります。(中にはほとんど実施しない学校や先生もいます)あと正直、学校の先生自体が漢文をさほど理解しておらず、生徒に漢文の意味を伝えられないケースも多いです。従って、メリットを感じづらい側面はあります💦
しかし、それなりに勉強してくると、上のようなメリットが感じられてくると思います✨
今は実感できないけど、漢文を勉強すれば、自分にとってベストな生き方を選べて、日本語力やコミュ力・国際力をアップすると信じて頑張ってみます!
漢文を含め、何事もそうですが、全く意味がない勉強なんて存在しないと考えたほうが、幸せになりやすいと思います💡
深いですね💦難しいですが、漢文だけでなく、他の教科にも意味があるって思って勉強してみます!
3、国・学校としての漢文教育の目標
一方、漢文を読む意味について、文部科学省も学習指導要領(がくしゅうしどうようりょう)にて述べています💡私個人だけでなく、学校や日本の教育を仕切る文部科学省も意味があると思っているからこそ、国語の授業に組み込まれていますし、受験でも必要になってくる場合があるということです。
先生、「学習指導要領」ってなんですか?
全国の各学校が参照すべきカリキュラムの基準です。各教科ごとにあり、その教科を学ぶ目的や内容について、ざっくり書かれています。
定期的に改定されていますが、現時点(2021年)では、「国語総合」「国語表現」「現代文A」「現代文B」「古典A」「古典B」のように、学ぶ内容が分けられています。(2022年度以降、変更の予定あり)
そこに、漢文を学ぶ意味が書かれてるのですか?
そうです。現行の学習指導要領(平成23年告示)では、古文・漢文の目標を以下のように示しています。以下、引用はこちらから行います。
「古典としての古文と漢文,古典に関連する文章を読むことによって,我が国の伝統と文化に対する理解を深め,生涯にわたって古典に親しむ態度を育てる。」(60ページ)
堅苦しくて良く分かりません笑!
指導要領は堅苦しいですからね笑。しかし、しっかりと後ろで補足してくれているので、そちらもあわせて紹介します。
まず、「我が国の伝統と文化に対する理解を深め 」については、以下のように補足しています。
「急速に国際化の進む社会で生きていくに当たって,諸外国の伝統と文化を理解しそれを尊重するためにも,我が国の伝統と文化について自覚し,我が国と郷土を愛し,それを尊重する態度を育成することが大切となる。そこで,我が国の文化の形成に強い影響を与えた中国の文化との関係について考察することなどを通して , 我が国と外国とのかかわりにも関心をもち,我が国の伝統と文化をより深く理解する必要がある。」(61ページ)
うーん…これでも分かりにくいなぁ…つまりどういうことですか?💦
つまり、「漢文を通じて中国文化と日本文化の関わりを学ぶことにより、日中関係を足がかりとして、①自国文化への理解・尊重、②他文化への理解・尊重ができるようになり、③自国と他国の関わりへの興味を持って欲しい」ということかと思います💡
少しだけ分かった気がするけど、まだ疑問もあります💦②③の大切さは、今グルーバルな社会になってるから分かるんですが、なんで ①自国文化への理解・尊重が必要なんですか?
4、自国と他国を尊重すること
それは恐らく、「自国を尊重できない人に、本当の意味で他国を尊重することはできない」と考えているからです。
???
自国と他国、どちらも尊重することってできるんですか?普通は、「日本人は礼儀正しいけど○○の国は礼儀がなってない」とか、「日本は年功序列で才能のある若者が中々出世できないけど、○○の国は実力主義で優れている」とか、国の文化を比較して善し悪しを決めてませんか?
今日のマオさんは特に鋭いですね…💦その通りです。人は日常生活において、「日本は良い」「○○国は悪い」など、文化に優劣をつけることが多いです。優劣をつけたがるのは人情なのですが、これは尊重とは真逆の差別思想につながってしまう危険性があります。
確かに…💦
だからこそ、自国と他国、どちらも尊重する必要があるのだと思います。本当の「他国の尊重」とは、「自国と他国、どちらもしっかりと理解した上で尊重する」ということです。
つまり、「みんな違ってみんないい」ってことですね!
そういうことです!中々難しいことではありますが…
そして、ここで大切となるのが、「しっかりと理解する」ということであり、漢文は日本と中国、どちらの文化を理解する上で良い教材と言うことができます。
漢文は昔の中国人が書いた文章だから、学べば中国文化を理解できるのは分かるけど…
なんで漢文を学んだら、日本文化も学んでいることになるんですか?
5、漢文と日本文化の深い関わり
それは、日本文化は漢文を含めた中国文化を受容することによって発展していったからです。
日本は、遣隋使や遣唐使をはじめとして、主に漢文を通じて中国の政治・文学をはじめとする文化を受容してきました。そこから日本独自の文化が花開いていきました。
また、中国から漢字を受容することによって、そこからひらがな・カタカナを発明し、日本語を作っていきました。日本文化における中国文化の影響を挙げ始めると、きりがありません💦
たしかに…中国との関わりは日本史でも習っていたけど、確かに影響が大きいというか、切っても切れない関係ですね。日本の歴史に漢文が大きな役割を果たしていたということですね💡
そうですね。実際、明治大正期までの歴史に名を残した日本の偉人―学者(中江藤樹・新井白石…)はもちろん、戦国武将(上杉謙信・直江兼続…)や明治大正期の文豪(芥川龍之介・夏目漱石…)、政治家(菅原道真・伊藤博文…)など、その多くが漢文の教養を持っており、それぞれの活動の原動力となった部分があります。
日本史で学ぶ人ばっかりですね…💦日本史に大きな影響を与えた人物の多くが漢文を学んでいたのだから、「漢文を学んだら、日本文化も学んでいる」というのも納得できるかな?
6、「生涯にわたって古典に親しむ態度を育てる」の意味
先生が色々と説明してくれたおかげで、指導要領の漢文を学ぶ目的のうち、「我が国の伝統と文化に対する理解を深め」の意味は分かりました!
じゃあ、あと1つの「生涯にわたって古典に親しむ態度を育てる」ってどんな意味ですか?
こちらも指導要領に解説がされているので、そちらを引用してみましょう。
「生涯にわたって古典に親しむ態度を育てる」は,長年にわたって伝えられてきた古典を読むことを通して,人間,社会,自然などに対する様々な考え方や感じ方を知り,人生を豊かにしていく ことのできる人間を育成することを示している。具体的には,日常生活において古典や古典に関連する文章を読むことを通して,古典の中の人間の生活や人生を知り,自らの生き方を見つめ直すとともに進むべき方向を模索しようとする態度,また,古典などの表現から自らの思考や感情を表現する様々な方法を見いだし,表現に生かそうとする態度などを育成することになる。(61ページ)
これも小難しいなぁ…でもさっきよりは分かるかも💡
つまり、①自分の生き方を決めるための参考として活かす、②自分の考えや気持ちを表現するノウハウを漢文(や古文)から学ぶ、ってことですか?
その通りです!①について、漢文には、今の日本人が生きる上で参考になりそうな内容が沢山あります。それだけ普遍性があるということです。
例えば、下のようなページの内容が挙げられます。
頑張る人・頑張れない人を奮い立たせて励ます漢文の言葉・名言(受験・部活動・習い事) 3選
また、現代日本とは違う文化や同じ文化を認識することにより、視野を広げるという点でも、「生きる上でも参考になる」ということができます。
確かに、漢文に出てくる漢字は、今の使い方と違う部分や同じ部分があって、熟語で考えて導いたりしたけど、それで視野が広がったかもしれません💡
①自分の生き方を決めるための参考として活かすについては、ひとまずこのように解釈すればよいかと考えています。
じゃあ、②自分の考えや気持ちを表現するノウハウを漢文(や古文)から学ぶ はどう解釈したらいいですか?
これを具体的に説明するのは難しいですが…要するに、表現の幅を漢文で広げて欲しい!ということだと思います。
例えば、「私は東大に合格できない」の「合格できない」をできる限り強調するとして、マオさんはどのように表現しますか?
「私は絶対に天地がひっくり返っても東大に合格できない」とかですか?
面白い表現ですね💡まず、「天地がひっくり返る」という表現は、恐らく漢文から来ています。とある漢文の作品に、「天翻地覆(てんほんふく)」という言葉が使われています。
また、今回の漢文で出てきた反語を使えば、「私がどうして東大に合格できるだろうか、いやできるはずがない」のように表現することができます。
「私は絶対に天地がひっくり返っても東大に合格できない」
「私がどうして東大に合格できるだろうか、いやできるはずがない」
どっちも同じことを言っているのに、受ける印象がけっこう変わりますね💡
なるほど…こうやって漢文(や古文)を通じて表現力を磨いていって欲しいってことですね!✨
そうです!正直、今回のやりとりだけで、漢文を学ぶ意味をしっかりと伝えられてはいませんが、少しでも分かってもらえたのなら嬉しいです。
最初は受験のためだけに漢文を何となく学んでいるだけだったけど、今日の話で漢文を学ぶ意味が少しは分かったと思います。やる気が少し出てきました✨ありがとうございました!
こちらこそありがとうございます✨私自身、漢文について改めて考える良い機会をもらえました。今後も疑問や気がかりな点があれば、遠慮無く言って下さいね。お疲れ様でした。