古代中国の親孝行とは?現代日本とは大きくズレている? エピソードとあわせて紹介 

ポイント

  • 中国の親孝行は、現代日本とはズレている部分がある。
  • 具体的には、「親の言うことは絶対」「法律より親孝行」「立身出世=親孝行」という3点で異なり、これらの特徴を抑えると、漢文が読みやすくなることがある。
  • 中国で親孝行が重視されてきた理由は、①「社会に秩序をもたらすため」、②「仁(まごころ)を育てる根本になるため」の2つ。
  • 中国の親孝行エピソードも、独特な部分が存在する。
  • 陸績のミカンを持ち帰った話、冷たい母親にまごころをもって接した閔子騫の話、母親の無茶な要求に応えた孟宗の話から、「たとえマナー違反をしてでも、それが両親のためならOK」「親がどんなに子どもに優しくなくとも、子どもは親に孝行を尽くす必要がある」という親孝行観が読み取れる。

1、「孝」=親孝行とは何か?

こんにちは。今回は、漢文を読むにあたって重要な「孝」の思想を学びましょう!

先生こんにちは。「孝」って親孝行のことですか?

そうです💡孔子をはじめとして、古代中国では、親を敬うことを重要視しました。ナナさんは、親孝行って具体的に何をすることだと思いますか?

うーんと…父の日や母の日にプレゼントあげたり、誕生日に祝ったりですかね?あと、親に心配させないよう、健康でいることでしょうか?

現代日本において、そのように考えたりする方が多くいらっしゃいますね。ただし、古代中国における親の敬い方は、必ずしも現代日本とは異なる部分があります。
特に、「親の言うことは絶対」「善悪より親孝行」「立身出世=親孝行」という3点で異なり、これらの特徴を抑えると、漢文が読みやすくなることがあります

単に親孝行って言っても、現代と昔の中国ではズレてる部分があるってことですね💡

2、親の言うことは絶対!

第1に、「親の言うことは絶対」ということです。言い換えれば、「親の意向に従えば、親孝行をしていることになる」ということです。

えぇー、、、💦なんか嫌です💦

気持ちはよく分かります。今だと、子どもの人権が大切にされ、子どもでも社会の一員として尊重されています。しかし、昔の中国(や日本)では、親の権力が圧倒的に強く、「親の言うことに従っておけば立派な人間になれる」という価値観がありました💡

親だって別に完璧な存在じゃないから、 「親の言うことに従っておけば立派な人間になれる」っていうのは違うような…💦

その通りです。しかし当時は、それくらい親が上の立場だったということですね。

親と子の上下関係をよく示す孔子の言葉があります。

注目

親子関係が分かる言葉①

先生がおっしゃるには、「父母の所にいる際、(もし父母に正しくないことがあれば)に遠まわしに指摘するべきである。父母の気持ちが自身の諫めを受け入れないようであれば、尊敬の気持ちを持ち続けて従い、世話を焼いて文句を言わない。」と。

(子曰く、父母に事えては、幾(ようや)くに諌(いさ)む。志の従われざるを見ては、又敬して違わず、労して怨みず。)

えぇ…💦つまり、正しいかどうかより親の意向を優先すべきってことですか?

孔子の考えではそうなりますね。孔子は、両親を完璧な存在ではなく、間違うこともある存在だと考えてはいたようです。ただし、その間違いを正すよりは、親の意向(もしくは親への感謝)を優先すべきだと考えていたようですね。

「親への感謝」かぁ…確かに、赤ちゃんの時から世話してもらってるから、一理はあるかなぁ…でもなんかもやもやします💦

「正しさ」を取るか「親の気持ち」を取るか、これは難しい問題ですね。どちらが正しいかは決められませんが、少なくとも孔子は 「親の気持ち」 を取ったようです、

とはいっても、これはあくまで傾向であり、「親の気持ち」より「正しさ」を取るべきだと考える人々もいました。例えば、孔子の後継者である孟子(もうし)という人は、「親にへつらい従って親の評判を落とすことは親不孝である」と述べています

私は孔子より孟子の考えのほうが好きだなぁ…親が間違ってるなら、正しい方向に進んで欲しいって思っちゃいます💡

3、法律より親孝行!

第2に、「法律より親孝行が優先されるべき」という考え方です。これについても、孔子が以下のようなことを述べています。

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親子関係が分かる言葉②

葉公は孔子にこう述べた。「私の郷里の中に、「まっすぐ」な者がいます。父親が羊を盗みましたとき、その子の父が盗んだと証言しました。」と。孔子はおっしゃった。「私の村のまっすぐな者は、それと違います。(仮に盗難があった場合)父は子の悪事を隠し、子は父の悪事を隠します。「まっすぐ」の本当の意味は心の中にあります。」と。

葉公(しょうこう)、孔子に語りて曰く、吾が党に直躬(ちょくきゅう)なる者あり。其の父、羊を攘(ぬす)みて。子之を証す。孔子曰く、吾が党の直なる者は是れに異なり。父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直なること其の内に在り。

読んでもらったら分かるように、これは厳密に言うと「法律より親孝行」というより、「法律より家族愛」といったほうが正しいですね。しかし、親を法律の上に置いているのは確かです。

罪を犯しても家族を優先…気持ちは分かるけど、それやっちゃうと国がめちゃくちゃになりそう💦

よい視点です!それは、孔子のライバルであった韓非子(かんぴし)という人物も述べています。しかし、中国では長らく「法律より親孝行(や家族愛)」という価値観が根強く残りました。

私は法律を優先すべきだと思うけど、家族を優先させる人の気持ちも分かりはします💦

実際、親孝行をすれば罪が無くなったり、減らされたりするというケースは、中国あるあるです。以下のエピソードをご覧下さい。

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親孝行>法律のエピソード

孟宗(もうそう)という人は、孝行者として有名だった。母親が亡くなった際、自分の職務を放棄して母親のもとへ向かってしまった。当時の法律では、後任の人が来るまでは、勝手に持ち場を離れてはいけなかったが、孟宗はその法律に違反してしまう。結果、孟宗は処刑されそうになるが、他の有力者が減刑をお願いしてきたため、処刑は免れた。

4、立身出世=親孝行!

第3に「立身出世=親孝行」という価値観です。この考えは、以下の言葉から確認できます。

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親子関係が分かる言葉③

出世して正しい道を行い、名声を後世に残す(ほど出世し)、両親を顕彰することが、最も優れた親孝行である。

身を立て道を行い、名を後世に揚げ、以って父母を顕わすは、孝の終わりなり。

うーん…分かるような分からないような…💦
自分が出世すると、なんで両親を顕彰することになるんですか?

それは、「自分が立派になると、両親の育て方が正しかったことの証明になり、名誉にもなるから」です。

ナナさんは、自分のお母さんから、同級生が勉強でよい成績を残したり、部活動で活躍したりする話を聞いたことがありますか?

「○○ちゃん部活で県大会行ったんだって!すごいね~」みたいなのはよく聞きます笑

その時お母さんは、お母さん同士の井戸端会議で、「どういう風に育てると○○ちゃんみたいな子になるんですか?」みたいな会話を恐らくしています。ナナさんも、他の同級生のお母さんに褒められているかもしれませんね。

前、同級生のお母さんと話したとき、そんなことを言われた気がします笑

その時、ナナさんのお母さんはとても嬉しかったと思いますよ。このように、子どもが優れていると、その子どもだけでなく両親も褒められます。だから立身出世が親孝行になるわけですね

なるほど、立身出世が親孝行になる理由がよく分かりました。これは現代日本でも同じですね💡

5、なぜ「孝」を重視するのか?

これまで、是非抑えておいて欲しい中国の親孝行観を3つお伝えしてきました。

第1・第2は私には合わなかったけど、第3のやつは分かりました!

では最後に、なぜ中国では親孝行を重視するのかを学んで終わりにしましょう💡これについては、孔子の弟子である有子(ゆうし)が述べています。

注目

親子関係が分かる言葉③

有子が述べるには、「人となりが「孝弟(こうてい。孝は父母によく仕えること、弟は良く年長の兄弟に仕えること)」である人物(の中で)目上の人に逆らうことを好まない者は少ない。目上の人に逆らうことを好まない(者の中で)反乱を起こしたものはいない。君子は、物事の根本を大切にしている人である。根本が確立すると道(正しい生き方)が分かる。「孝弟」は「仁」を得るための根本である。

有子曰く、「其の人と為りや孝弟にして、上を犯すを好む者は鮮(すく)なし。上を犯すことを好まずして、乱を作(おこ)すを好む者は、未だ之れ有らざるなり。君子は本を務む。本立ちて道生ず。孝弟なる者は、其れ仁の本為るか。」と。

つまり、①「社会に秩序をもたらすため」、②「仁(まごころ)を育てる根本になるため」に親孝行が大切にされているわけですね💡

その通りです!素晴らしい✨

確かに、理屈としては分からなくもないです。親に優しくできれば、目上の人や他者にも優しくできるかもしれません✨あと、そういう人が増えると、社会全体も優しくなりそう✨

もちろん、「親に優しくなくても他者には優しい人」もいるので、絶対ではないですけどね。一理はあると思います。

漢文読解のために勉強してるけど、今日の内容は漢文関係なく面白かったです。ありがとうございました!

6、親孝行エピソード① 陸績(りくせき) 親孝行のためにミカンを持って帰った人

ここまでは3つの特徴的な親孝行観を探りましたが、ここからはエピソードからさらに中国ならではの親孝行を知っていきましょう!

第1に、陸績(りくせき)という人のエピソードを紹介します。

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陸績の親孝行エピソード

陸績は六歳のころ、袁術(えんじゅつ)という権力者のもとで暮らしていた。あるとき袁術は、陸績におやつとしてミカンを与えた。陸績は、そでにそのミカンを3つ忍ばせて持って帰ろうとした所、そでからミカンがこぼれ落ちてしまった。

袁術は、「君はどうしてこんな泥棒のようなことをするのか?」と質問した所、陸績は「とてもおいしそうなミカンなので、家に持ち帰って母親に食べてもらい、親孝行しようと思いました。」と答えた。それを聞くと袁術は陸績を親孝行だと褒め称えた。

すごい親孝行な六歳だなぁ…私が六歳のころなんて、自分のことしか考えてなかったと思います笑

私もそうです笑。このエピソードは長い間中国で親孝行の手本として語り継がれていました。しかし一方で、出されたものを持ち帰るという、ややマナー違反な行為が正当化されているという点に注目して欲しいです

少しずれますけど、現代で友だちの家にお邪魔した時でも、出されたお菓子を持って帰るのは、よくないですね💦

中国では、「たとえマナー違反をしてでも、それが両親のためならOK」とされることがあります。これは抑えておきましょう💡

7、親孝行エピソード② 閔子騫(びんしけん) 再婚した母に冷たくされるも、孝行を尽くした人

第2に、閔子騫(びんしけん)という人の親孝行エピソードを紹介します。

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閔子騫の親孝行エピソード

閔子騫は、幼い頃に母をなくしたが、父が再婚して義理の弟が2人ができた。新しい母は、実の子ども2人を愛したが、血の繋がっていない閔子騫をうとましく思っていた。冬になると、実の子たちには暖かい着物を与えたが、閔子騫には薄くて暖かくない着物を与えた。

父は、閔子騫が寒さに凍えているのを見て、新しい母と離婚しようと言うと、閔子騫は「今、母上が居なくなると、3人の子供は凍えます。私1人が凍えていれば、弟2人は暖かいのでどうか離婚しないで下さい。」と言った。これを聞いた母は感激し、閔子騫も可愛がったという。

このエピソード、閔子騫の孝行っぷりより、再婚したお母さんの態度が許せません💢
血の繋がってる子どもを大切に思う気持ちは分かるけど、義理の息子の閔子騫をないがしろにしすぎだと思います!

私もそう思いますよ。母親は最終的に改心していますが、あまりにひどいと思いますね。
しかし、このような話は、中国では割とあるあるで、そこまで批判されることはありませんでした。

つまり、「親がどんなに子どもに優しくなくとも、子どもは親に孝行を尽くす必要がある」という考えです。

うーん…私は納得できません!でも、前回勉強した「親の言うことは絶対!」と似た部分があって、その分理解はしやすいです。

そうですね。ちなみに、閔子騫は孔子の弟子の一人なので、名前を知っておいて損はないでしょう💡

8、親孝行エピソード③ 孟宗(もうそう) 母親のわがままな要求に答えて孝行を尽くした人

第3に、孟宗という人のエピソードを紹介します。ここでも、閔子騫と同じく「親がどんなに子どもに優しくなくとも、子どもは親に孝行を尽くす必要がある」という考え方が垣間見えます。

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孟宗の親孝行エピソード

孟宗は、幼い時に父を亡くし、年老いた母を養っていた。ある時、病気になった母は、色々と食べ物を欲しがった。ある冬に、タケノコが食べたいと言った。孟宗は竹林に向かったが、冬にタケノコが見つかるはずがない。孟宗は涙を流して天に祈りながら雪を掘っていた。

すると、天に願いが叶ったのか、たちまち雪が融け、土の中から沢山のタケノコが出てきた。孟宗はとても喜び、タケノコを採って帰り、熱いスープにして母に食べさせると、病気はすぐに治って長生きした。

これも、確かに良い話ではあるけど、母親のワガママな所が気になる…💦笑

そうですね。季節外れの食べ物を食べたいなんて、すごいワガママに捉えられても仕方がないと思います。身体が弱っていたからこそ、本音が出てしまったのかもしれません。

とはいっても、孟宗の母親は、とても優れた人です。例えば、あるとき孟宗は魚を管理する役職だった時、自分で魚を捕って漬物にし、母親に送ります。しかし母親は、「私に魚を送ると、不正したと疑われるかもしれないので、やめておきなさい」と諭します。

確かに、魚を管理する人が、自分の母親に魚を送っていたら、不審に思う人はいそうですね。お母さん賢い!

これまで3つの親孝行エピソードを見てきましたが、どれも印象的だけどこかズレている所もあって面白かったです。ありがとうございました!

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