漢文における「与(と・ためニ・ともニ)」の意味とその識別方法について解説 | ハナシマ先生の教えて!漢文。

漢文における「与(と・ためニ・ともニ)」の意味とその識別方法について解説

こんにちは。ここでは、漢文によく出てくるややこしい「与」について、意味とその識別方法についてお伝えします!
問題として出やすい順番で並べているので、①②③あたりまでは必ず抑えておきましょう!(余裕があれば、④⑤⑥⑦⑧も知っておくと万全ですが、無理はしないように💡)

1、「与」の意味一覧と識別方法

①と(与)→~と一緒に(助字)→超頻出
【解説・識別ポイント】
・英語で言う所の「with」の意味。必ず返り点が付く。(返読文字)
・書き下す際には「と」とひらがな表記!
「名詞+与+名詞」の並びだったら、高確率で「と」と解釈すべし。

②ためニ→~のために(助字)→頻出
【解説・識別ポイント】
・英語で言う所の「for」の意味。必ず返り点が付く。(返読文字)
「与+名詞+用言」の並びだったら、高確率で「~のために」と解釈すべし。

※助字とは?
・現代文法で言う所の接続詞・助動詞・前置詞を総括した語。名詞・動詞・形容詞などに付き、意味を加える(=補助)する語。

③ともニ→一緒に~する(副詞)→頻出
【解説・識別ポイント】
・意味は、①とほとんど同じだが、用法が異なる。
→①は返読文字である一方、③は副詞であり、返り点は付かない

④あたウ→与える(動詞)
・現代日本語の「与える」と同じなので、問題として出ることはほぼない。

⑤あづカル→参加する・関係する(動詞)
・「関与(関わり与かる)」の「与」の意味。

⑥くみス→力を合わせる・味方をする(動詞)
・「与党(大勢が与する政党。つまり、沢山の人が集まって政権を握る政党を指す)」の「与」の意味。

⑦や・か→疑問・反語の助字
⑧かな→詠嘆の助字
・文末に存在し、ひらがなで書き下す。
・問題文で出ることはほとんどないが、念のため記しておく。

①~⑥に共通する意味とは?
・「与」は多くの意味があるが、共通しているのが「二者間で」というニュアンス。
①「与(と)」→「(A)と(B)」
②「与(ため)に」→「(AがBの)ために」
③「与(とも)に」→「(AとBと)ともに」
④「与える」→「(AがBに)与える」
⑤「与(あづ)かる」→「(AがBに)参加する」
⑥「与(くみ)する」→「(AがBと)力を合わせる・(AがBに)味方する」

2、「与」の例文を紹介!

①「名と身と孰れか親しき。」→名声と身体では、どちらが大切か。(『老子』)
②「君の与(ため)に一曲を歌わん。」→君のために一曲歌おう。(李白「将進酒」)
③「竪子 与(とも)に謀るに足らず。」→子どもとは一緒に計画を練ることができない。(『史記』)
④「玉斗一双、亜父に与(あた)えんと欲す。」→玉で作ったひしゃく(=高価なもの)を亜父に与えたい。(『史記』)
⑤「蹇叔の子 師に与(あづ)かる。」→蹇叔の子どもが軍隊に参加した。(『左伝』)
⑥「天道 親無けれども、常に善人に与(くみ)す。」→天は特に親しい存在を持たないが、いつも善人に味方する。
⑦「是れ魯の孔丘なるか。」→この人は魯の孔丘なのか。(『論語』)
⑧「自ら喩しみて志に適えるかな。」→自分で楽しんで自分の意志通りだなぁ。(『荘子』)

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