本ページでは、大学受験で出題される漢文を解くコツや現代語訳をするコツをできるだけ詳しく解説します。
※このページは、最低限書き下しができるのが前提です。書き下しに不安がある方は、以下のページで学んでおきましょう!
もくじ
1、まずは出題者がくれたヒントを確認して活かすべし!
ヒントその① 注釈
・漢文は非常に難しい語句が多く、頻出のもの以外は、本文の末尾に注釈が付けられることが多い。
・注釈の種類は、「人名or土地名」「特殊な漢字の用例」「特殊な単語」の3つ。それぞれ読解に役立つので、必ず確認すべし!
・「注釈なんて大して意味ない」と考える学生は多いが、読解する上で必須な場合が多いので、注釈に対する意識を高めましょう!
ヒントその② 難しい漢字のフリガナ
・難しい漢字には送り仮名が振られていて、別の簡単な漢字に置き換えられそうなら、置き換えて解釈するだけでOK!(下の例を参照)
「趨(おもむ)キ」→「赴き」 「瞰(み)テ」→「見て」
「罕(まれ)ナリ」→「稀なり」「径(みち)」→「道」
見たことがない漢字が出てきても、全く怖がる必要はない。大抵フリガナか注釈で理解できるようになっている。
ヒントその③ リード文
・リード文とは、問題の冒頭にある簡略な説明のこと。(特に共通テストではつけられていることが多いが、無い場合もある。)
・リード文は、注釈やフリガナと共に、出題者が問題の難易度を調整するため(特に易しくするため)に添えているもの。必ず活かすべし!
より詳しく知りたい方はこちら
2、よく出る文法知識・句形・単語が出題されていないか確認すべし!
受験漢文において現代語訳を求められる際、登場する漢字・文法・句形はある程度決まっています。下の100個で全体の80%は網羅できていると思います。必ず定着させた上で、問題に登場していないかどうか確認しましょう。
学ぶ際には、現代日本語との関わりを意識すると、定着させやすいです。
漢文・頻出の漢字
1、相(あ)イ→お互いにor共に 「相愛(相イ愛ス)」の「相」の意味。
相(しょう)=大臣or宰相の意味もあり。
2、勝(あ)グ→全て取り上げる
しばしば「不可勝~(勝ゲテ~すべカラず)」で「~しきれないほど多い」の意味となる。
(例)不可勝数(勝ゲテ数ウルベカラズ)→数えられないほど多い。
この場合の「勝(あ)グ」は、「取り上げる」に限定せず、「(後ろに来る動作が)しきれない」という意味となる。
3、敢(あ)ヘテor肯(あ)ヘテ→わざわざ
「敢」については、3種類の用法を抑えるべし!
①不敢~(敢ヘテ~ず)=わざわざ~しない。
②不敢不~(敢ヘテ~ずンバアラず)=どうしても~しない訳にはいかない。
③敢不~(敢ヘテ~セザランヤ)=あえて~しないことがあるだろうか。いや~する。(反語)
※肯(がへん)ズ=承知する」の用法も抑えるべし!
4、中(あ)ツ。→
①(的や予想が)当たる。「的中=的ニ中ツ」の「中」
②(毒や酒に)あたって健康を損なう。「中毒=毒ニ中ル」の「毒」
③「傷付ける」。「中傷=中(あ)テテ傷(そこな)ウ」の「中」。
5、能(あた)ウ→(~することが)できる。。「能力=能(あた)ウ力」の「能」
6、豈(あ)ニ→
①どうして~か。(疑問)
②どうして~か。いや~ない。(反語)
文末の送り仮名が「ヤ」なら①の意味、「ンヤ」なら②の意味。
7、過(あやま)ツor過(あやま)チ→失敗するor失敗 「過失=過(あやま)チ+失(敗)」の「過」
「過グ(過ぎるor越える)」の意味もあり!
8、道(い)ウor謂(い)ウor曰(い)ウor云(い)ウ→
①言うor伝える
「道」には②「正しい生き方(「人道」の「道」)」、
③「みちびク(導くの代字)」の意味もあり。
9、(~と)雖(いえど)モ→~ではあるが
「1円といえども、大切にしなければならない」のように、日本語としても現役。漢字のみに注意!
10、何如or何若or何奈(いかん)→どうであるか。
「如何or若何or奈何」のように「何」が後ろに来ても「いかん」と読む。
また「如何or若何」の場合は「いかんセン(どうすべきか。いやどうしようもない。)」のような反語の用法も存在する。
「奈汝何(汝ヲ奈何セン)」のように、目的語がある場合は間に挟むので注意。
11、未(いま)ダ~ず→まだ~していない。(再読文字)
12、苟(いやしく)モ→もしもor仮にも
13、幾or幾何(いくばく)→どれくらい
「幾」は「幾(ほとん)ド」という用法もあり。
14、些(いささ)カ→ほんの少し。「些細=些(いささ)カ+細(ささ)ヤカ」の「些」
15、徒(いたずら)ニ→
①無駄に
②むなしく。「徒労=徒(いたずら)ニ労(ろう)ス」の「徒」
16、孰(いず)レカ→どちらが~だろうか。(疑問)
17、安(いずく)ンゾor悪(いずく)ンゾor焉(いずく)ンゾ~(や)
①どうして~か(疑問)
②どうして~だろうか。いや~ない。(反語)
18、安(いずく)ニカor悪(いずく)ニカor焉(いずく)ニカ~(や)
①どこに~か(疑問)
②どこに~だろうか。いやどこにも~ない。(反語)
19、所謂(いわゆる)→世間一般で言う所の
「先生がいつも生徒にきつく接しているのは、いわゆる(=所謂)パワハラだ」のように、現代日本語としても用いられている。
20、A況(いわ)ンヤB→BはなおさらAである。
21、愈or逾(いよいよ)→ますます
「愈or逾」の「兪」には「変換する」というイメージがあり、「ますます」=「内容が転換する」という意味を持つようになった。
なお、「治癒」の「癒」が「病気の状態が変換する」、「比喩」の「喩」が「何かを分かってもらうために別の何かに変換して説明する」を表すのと通じる。
22、得(う)→
①手に入れる 「得点(得ル点)」の「得」の意味
②~することができる 「得意(得ル意)」の「得」の意味
23、以為(おもえらく)→思うor判断する
元々「以テ~ト為ス」と読まれていたが、この「為す」が「思うor判断する」の意味を示すため、「以為(おもえらく)」と熟して読まれるようになった。
24、凡(およ)ソ→全て
漢文における「凡(およ)ソ」=現代日本の「だいたい」という意味ではないのには注意!
25、乎→①乎(かorや)→
①~だろうか(疑問or反語)
②乎(かな)=~だなぁ(詠嘆)
③乎(や)→~よ(呼びかけ)
※文末だと①②③、文中だと於(置き字)と同じ用法が存在する。
26、耶or邪(かorや)→①~だろうか(疑問or反語)
※文末に来る場合。文中に来る「邪」は高確率で「②よこしま」の意味。
27、哉(かな)→
①~だなぁ(詠嘆)
②哉(かorや)→~か(疑問or反語)
28、如レ此or如レ是or若レ是or若レ是(かクノごとシ)→このようである
「此(かク)」「是(かク)」は「此(これ)」「是(これ)」の読みではないので注意!
29、且(か)ツ→その上orしかも
「且」には「②且(まさ)ニ~セントス」(再読文字)という意味もあるので注意!
30、嘗(かつ)テ→以前に
「未嘗(未ダ嘗テ~ズ)」=「今まで一度も~したことがない」という形でよく登場する。
31、易(か)ウ→変える。「貿易=(か)う+易(か)う」の「易」
「易」には②「易(やす)シ(平易=平ラカニシテ易(やす)シ)」の「易」の意味もあり。
32、蓋(けだ)シ→恐らく
33、希(こいねが)ウ→希望する。
34、冀(こいねが)ハクハ→①どうか~して下さい。②どうか~させて下さい。
35、請(こ)ウ→①~して欲しい ②~したい
36、於レ是(ここニおいテ)→そこでorこういう訳でor従って
意味に幅があるが、いずれも「話の進展を示す」点に注目すべし。
「是」は「これ」ではなく「ここ」と読むので注意!
37、是(ここ)ヲ以(もっ)テ→従って
「以レ是(こレヲもっテ)」は「これを用いて」「これを理由に」であり、ややこしいので注意!
「以レ是」の「レ」点と是「レ」ヲ以テの「レ」が共通していると紐付けて覚えよう!
38、対(こた)ウ→答える。「応対=応ジテ対エル」の「対」
39、悉or尽(ことごと)ク→全て
「悉」は「悉達多(ブッダの漢字表記。シッダールタ)」に用いられる。「悉達多=悉く達すること多し」であり、ブッダにぴったりの漢字となっている。
40、辞(じ)ス→
①辞める。「辞退=辞シテ退ス」の「辞」
②別れを告げる。「辞世=世ヲ辞ス」の「辞」
41、然ラバ→
①それならば
②然ルニor然レドモ→しかし
③然(しか)リ→そうであるorその通りである
42、数or屡(しばしば)→しばしば
43、謝(しゃ)ス→
①断る。「謝絶=謝(しゃ)シテ絶ツ」の「謝」
②謝る。「謝罪=罪ヲ謝ス」の「謝」。
③礼を述べる。
一語だと③のみをイメージしやすいが、①②の意味も漢文ではよく用いられるので注意!
44、寡(すくな)シ→少ない。「寡黙=(言葉が)寡(すくな)ク黙ナリ」の「寡」
45、須(すべか)ラク~ベシ→~する必要がある。(再読文字)
46、已(すで)ニ→
①すでに。「已然(已ニ然リ)」の「已」
②已(や)ム
③已(のみ)の用法にも注意!
47、乃(すなわ)チ→
①そこで
②しかし(逆接)
③意外にも
④そこでようやく
話の進展を示して一呼吸置くイメージ。進展は順接だけでなく逆接のパターンもある。
48、則(すなわ)チ→
①(「~レバ」に続いて)~ならば
②~はor~の場合は
③そこで
→①の意味が頻出。「~ならば」でどうしても違和感を覚える場合は、②③の意味を当てはめてみると良い。
49、即(すなわ)チ→
①すぐに。「即興(即チ興ス)」の「即」。
②つまり
③~ならば
④そのたびごとに
まずは①の意味で解釈し、違和感を覚える場合は②③④と当てはめていくと良い。
50、抑(そもそも)→さてorところで
話を転換する時や話をまとめる際、文頭で使う。
51、其(そ)レor夫(そ)レ→さてorそもそも
50と似た用法。
「夫(か)ノ」「其(そ)ノ」=このorそのという意味もあるので注意!
「夫」は文末にくると「かな(~だなあ)」という意味となる。
52、直(ただ)チニ→すぐに。「直後=直(す)グ後ニ」の「直」
53、忽(たちま)チ→あっという間に。「忽然=忽(たちま)チ然リ」の「忽」
54、縦(たと)イ~トモ→もしorたとえ~でも
※73「縦(ほしいまま)ニス=勝手にする」の意味もあるので注意!
55、但(た)ダor唯(た)ダ→ただ~だけ(限定)
「唯(た)ダ=どうか~して下さい(願望)」の意味もあり。
56、偶(たまたま)or適(たまたま)→たまたま。「偶然=偶(たまたま)然リ」の「偶」
57、足(た)ル→
①多い
②充分である(「満足」の「足」の意味。)
③できる
58、事(つか)ウ→仕える。
事=①仕事 ②出来事 という意味も抑えるべし。
59、毎(つね)ニ→いつも 「毎度=毎(つね)ノ度ニ」の「毎」
「~毎(ごと)ニ」のように返読する場合もあり。
60、遂(つい)ニor卒(つい)ニor終(つい)ニ→とうとう
話のオチを表す言葉。
「遂」=「遂グ」、「卒」=「兵卒」「卒(にわ)カニ」の用法もあるので注意!
61、具(つぶさ)ニ→詳しく。「具体=具(つぶさ)ニ体(=中身)アリ」の「具」
62、A与(と)B→
①AとB(並列を表す)
②「与(あた)ウ」
③「与(とも)ニ」
④「~ノ与(ため)ニ」も併せて覚えよう。
①②③④どれも「二者間」という共通の意味が存在している。
63、称(とな)ウ→
①述べる。
②称ス=呼ぶ 「名称」の称
③称(たた)フ=褒める 「称賛」の称
64、倶(とも)ニ→一緒に 「不倶戴天=倶ニ天ヲ戴カズ」の「倶」
65、勿(なか)レ→~するな(禁止)。勿忘草(わすれなぐさ)=「忘ルル勿カル草」の「勿」
「勿忘草」の名前はドイツの昔話が由来。ある時、騎士と恋人がデートしていた時、恋人が川辺の花を欲しがり、騎士が取りに行った。しかし騎士は急流に流されそうになる。諦めた騎士は「私を忘れないで」と言って流されてしまった。その花が勿忘草の花であったことから、「私を忘れないで」という意味を持つ「勿忘草」となった。
66、為(な)ス→
①~するor~だとみなす
②「為(ら)ル=~られる(受身)」
③「為(た)リ=~である(断定)」
④「為(ため)ニ=~のために」
⑤「為(な)ル=~となる」の意味も抑えるべし!
67、莫(な)シ→~無い。 「莫大(大ナルハ莫シ)」の「莫」
68、猶(な)ホor由(な)ホ~ごとシ→あたかも~のようだ。(再読文字)
69、何(なん)ゾ~ヤorンヤ→①どうして~か。(疑問)②どうして~か。いや~ない。(反語)
70、何(なに)ヲカ~ヤorンヤ→①なにを~か。(疑問)②なにを~か。いやなにも~ない。(反語)
71、盍or蓋(なん)ゾ~ざル→どうして~しないのか。いやすべきである。(反語・再読文字)
72、悪(にく)ム→嫌うor憎む。「憎悪=憎(にく)ム+悪(にく)ム」の「悪」
※17の「悪(いずく)ンゾ」にも注意!
73、俄(にわか)ニor遽(にわか)ニ→急に。「俄然=俄(にわか)ニ然リ」の「俄」
74、遺(のこ)ス→
①残す。「遺産=遺ス(財)産」の「遺」
②遺(おく)ルの用法もあり。
75、耳(のみ)or而已(のみ)or爾(のみ)→~だけ(限定)
文末に現れる。「爾」は「爾(なんじ)」の用法もあり。
76、私(ひそ)カニor窃(ひそ)カニor陰(ひそ)カニ→ひっそりと。
「私語=私カニ語ラウ」の「私」
「窃盗=窃(ひそ)カニ盗ム」の「窃」
「陰謀=陰(ひそ)カニ謀ル」の「陰」
77、可(べ)シ→
①~できる
②~してよい(許可)
③~すべきだ
④~だろう(推量)
78、恣(ほしいまま)or縦(ほしいまま)or肆(ほしいまま)→勝手なさま。
79、欲ス→①~したい ②~であってほしい
現代語の「~が欲しい」という意味より、①②のほうが漢文ではよく用いられる。
80、殆(ほとん)ドor幾(ほとん)ド→ほとんど
81、亡(ほろ)ブ→滅ぶ。「滅亡=滅ブ+亡ブ」の「亡」
「亡くなる」ではないので注意!
82、将(まさ)ニor且(まさ)ニ~セントす→今にも~しようとする(再読文字)
83、当(まさ)ニ~べシ→当然~すべきだ(再読文字)
84、方(まさ)ニor正(まさ)ニ→ちょうどorまさしく
85、亦(ま)タor復(ま)タor又(ま)タ→~もまた
86、宜(むべ)ナリ→当然である。
「宜(よろ)シク~ベシ」の用法もあり。
87、寧(むし)ロ→むしろ
88、若(も)シor如(も)シ→
①もし
②若(ごと)シor如(ごと)シ=~のようである
③若(し)くor如(し)く=同等である
(よく「不」とセットで用いて「若or如カズ(=及ばない)」となる) 「百聞は一見に如かず」の「如」
89、固(もと)ヨリor故(もと)ヨリor素(もと)ヨリ→はじめから
「固有=固(もと)ヨリ有ス」の「固」
「故郷=故(もと)ノ郷」の「故」
「素行=素(もと)ノ行イ」の「素」
90、以(もっ)テ→
①(後ろに手段・方法が来て)~で
②(後ろに理由・条件が来て)~のためにor~によって
③(後ろに対象が来て)~を
④(後ろに時間が来て)~の時間に
⑤そして
→「以」は後ろに来る内容で判断すべき。「以」に返り点が付いていない場合は、⑤で解釈してOK。
91、見(まみ)ユ→会う。 「見参=見(まみ)エテ参ル」の「見」
92、之(ゆ)クor往(ゆ)ク→行く
「之(これ)」の用法もあるので注意!
93、故(ゆえ)ニ→
①従って 「何故(何ノ故)」の「故」の意味
②「故(もと)ヨリ」=はじめから
③故(ことさら)ニ=わざと 「故意」の「故」の意味
94、所以(ゆえん)→
①理由
②方法
95、自(よ)リor従(よ)リ→①~から
②「自(みずか)ラ」 ③「自(おのずか)ラ」の用法にも注意。
96、因(よ)リテ→そのため 「因習=因リテ習ウ」の「因」
97、宜(よろ)シク~べシ→~したほうがよい(再読文字)
98、少(わか)シ→若い 「少年=少(わか)キ年」の「少」
「少ない」の場合は「少(すく)ナシ」と送り仮名が「ナシ」となるので、そこで判別できる。
99、見(る)or被(る)or所(る)→~られる(受身)
100、使(し)ムor令(し)ムor教(し)ムor遣(し)ム→~させる(使役)
101、寡人(かじん)・孤→わたし(王様など、貴い身分の人物が謙遜して述べる自称。)
102、臣(しん)→わたし(君主に仕える臣下の自称。)
103、妾(しょう)→わたし(妻の自称。)
104、子(し)→あなた(「子ども」の意味ではないので注意!)
105、汝or爾or若or女(なんじ)→お前(104「子」よりはやや上からものをいうニュアンスを含む。)
106、左右(さゆう)→側近(いつも「左右」にいて従っていることから。)
107、夫子(ふうし)→1先生、2あなた
108、君子(くんし)→道徳的に立派な人物。
(漢文においては、理想的な人物の代名詞として登場する。)
109、聖人(せいじん)→知恵と道徳が極めて優れた人物。
(漢文においては、君子と共に理想的な人物の代名詞として登場する。)
110、小人(しょうじん)→不道徳で品性のない人物
(108君子とは対義語)
114、故人(こじん)→友人
(「亡くなった人」の意味ではないので注意!)
115、百姓(ひゃくせい)→人民
(「ひゃくしょう」=「農民」の意味ではないので注意!)
3、意味が分からない漢字があった場合、熟語から類推しよう!
2でよく出てくる漢字は抑えていますが、それ以外にも一語で出てきて意味がよく分からない漢字を訳さないといけないシチュエーションはよくあります。その際には、その漢字を用いた熟語を思い浮かべて、その意味から一語の漢字の意味を類推して下さい。
以下に、よく受験生が躓きがちな漢字が含まれている熟語を80個挙げています。少しでも良いので理解できておくと理解しやすくなります。
漢文によく出る漢字を含む熟語 80個
(「ポイント」の部分が漢文に出る漢字+読みです。)
1未遂(みすい)/未だ遂(と)げず=まだ成し遂げていない
ポイント:遂ぐ=成し遂げる
2憂患(ゆうかん)/憂う+患(うれ)う=憂うこと
ポイント:患(うれ)う=憂う
3閑静(かんせい)/静か+閑(しず)か=静かな様子
ポイント:閑(しず)か=静か
4寡黙(かもく)/(言葉が)寡(すくな)く黙なり=口数が少ない様子
ポイント:寡(すくな)し=少ない
5服従(ふくじゅう)/服す+従う=言うことを聞いて従うこと
ポイント:服す=従う
6的中(てきちゅう)/的(まと)に中(あ)つ=予想が当たったり、物に直接当たったりすること
ポイント:中(あ)つ=(的に)当たるor(予想が)当たる
7中毒(ちゅうどく)/毒に中(あ)つ=有害物質を摂取して健康を損なってしまう状態
ポイント:中(あ)つ=(毒や酒に)あたって損なう
8中傷(ちゅうしょう)/中(あ)てて傷つく=(主に言葉で誰かを)傷付ける
ポイント:中(あ)つ=傷付ける
9衆目(しゅうもく)/衆(おお)くの目=多くの人の目
ポイント:衆(おお)し=多い
10大衆(たいしゅう)/大(おお)くの衆=人々
ポイント:衆(しゅう)=人々
11道徳(どうとく)/道+徳(どちらも「正しい生き方」の意)=人が守るべき規範
ポイント:道=道徳
12邪道(じゃどう)/邪なる道=オーソドックスではない方法
ポイント:道=方法
13報道(ほうどう)/報じて道(い)う=(ニュースなどを)伝える
ポイント:道(い)う=言う
14嫌悪(けんお)/嫌いて悪(にく)む=嫌いになって憎む
ポイント:悪(にく)む=憎む
15屈辱(くつじょく)/屈して辱なり=屈服させられて辱められること
ポイント:辱(じょく)なり=恥ずかしい
16徐行(じょこう)/徐(おもむろ)に行く=ゆっくりと進む
ポイント:徐(おもむろ)に=おもむろにorゆっくりと
17奇才(きさい)/奇なる才=優れている才能
ポイント:奇なり=優れている
※「奇=珍しい」の意味もあり。
18応答(おうとう)/応(こた)う+答う=問いや話しかけに答えること
ポイント:応(こた)う=答える
19已然(いぜん)/已(すで)に然り=既にそうなっている
ポイント:已(すで)に=既に
20平易(へいい)/平らかにして易(やす)し=簡単である
ポイント:易(やす)し=簡単である
21貿易(ぼうえき)/貿(か)う+易(か)う=商品を交換して売買すること
ポイント:易(か)う=交換するor変える
22遺産(いさん)/遺(のこ)された産=家族などに残された財産
ポイント:遺(のこ)す=残す
23遺漏(いろう)/遺(わす)れて漏れる=漏れて抜け落ちること
ポイント:遺(わす)る=忘れるor抜け落ちる
24遺棄(ほうき)/遺(す)つ+棄(す)つ=捨てる
ポイント:遺(す)つ=捨てる
25過失(かしつ)/過(あやま)ち+失(敗)=過ち
ポイント:過(か)=過ち 失(しつ)=失敗
26挙国(きょこく)/国を挙げる=国の皆で
ポイント:挙(あ)げて=皆で
27推挙(すいきょ)/挙ぐるを推す=採用することを推薦する
ポイント:挙(あ)ぐ=採用する
28強引(ごういん)/強いて引く=抵抗や無理を押し切って行うこと
ポイント:強(し)いて=無理やりor精一杯
29発芽(はつが)/芽を発(ひら)く=植物などの芽が出ること
ポイント:発(ひら)く=開く
30発掘(はっくつ)/発(あば)く+掘る=(埋まった物を)掘り出す
ポイント:発(あば)く=あばくor掘る
31発表(はっぴょう)/発(あらわ)す+表す=知らせ示す
ポイント:発(あらわ)す=表す
32発射(はっしゃ)/発(はな)つ+射(う)つ=(弾などを)打ち出す
ポイント:発(はな)つ=放つ
33発見(はっけん)/発(あらわ)す+見(あらわ)す=何かをはじめて見つけること
ポイント:発(あらわ)す=見つける
34見参(けんざん)/見(まみ)ゆ+参る=目上の人のもとに来る
ポイント:見(まみ)ゆ=会う
35何故(なぜ)/何の故に=どうして
ポイント:故(ゆえ)=理由
36故意(こい)/故(ことさら)なる意=わざと
ポイント:故(ことさら)に=わざと
37故郷(こきょう)/故(もと)の郷=生まれた地域
ポイント:故(もと)の=以前のor本来の
※重要単語「故人」の「故」は、「以前関わりがある」→友人の意
38貴公(きこう)/貴い公=あなた
ポイント:公=あなた
39公正(こうせい)/公なり+正し=偏っていない
ポイント:公なり=偏っていない
40私語(しご)/私(ひそ)かに語らう=公的な場所でこっそりと話す
ポイント:私(ひそ)かに=こっそりと
41私欲(しよく)/私なる欲=個人的でわがままな欲望
ポイント:私=個人的でわがままな
42自首(じしゅ)/自(みずか)ら首(もう)す=(特に罪について)自ら伝える
ポイント:自(みずか)ら=みずから 首(もう)す=伝える
43師事(しじ)/師に事(つか)う=師匠に仕えて教えを請う
ポイント:事(つか)う=仕える
44事業(じぎょう)/事+業=仕事
ポイント:事=仕事or役割
45釈明(しゃくめい)/釈(と)きて明らかにす=(特に誤解について)解説をして誤解を解く
ポイント:釈(と)く=解説する
46釈放(しゃくほう)/釈(と)きて放つ=(捕らえていた人を)解放する
ポイント:釈(と)く=解放する
47卒倒(そっとう)/卒(にわ)かに倒る=突然倒れる
ポイント:卒(にわ)かに=突然に
48卒年(そつねん)/年を卒(お)う=亡くなる
ポイント:卒(お)うor卒(しゅっ)す=亡くなる
49卒業(そつぎょう)/業を卒(お)う=(学校などの)全課程を終える
ポイント:卒(お)う=終える
50兵卒(へいそつ)/兵+卒=下級兵
ポイント:卒=下級兵
51忖度(そんたく)/忖(はか)る+度(はか)る=(他者の気持ちを)慮る
ポイント:度(はか)る=慮るorはかる
52法度(ほうど)/法+度=法則orきまり
ポイント:度=法則orきまり
53鋭利(えいり)/鋭し+利(と)し=鋭い
ポイント:利(と)し=鋭い
54弁別(べんべつ)/弁(わ)ける+別ける=分ける
ポイント:弁(わ)ける=分ける
55太古(たいこ)/太(はなは)だ古し=とても古い
ポイント:太(はなは)だ=とても
※「甚(はなは)だ」もあり。
56絶世(ぜっせい)/世を絶す=世の中から抜きんでて優れている
ポイント:絶す=優れている
57称賛(しょうさん)/称(たた)う+賛ず=褒める
ポイント:称(たた)う=褒める
58白状(はくじょう)/状を白(もう)す=(特に秘密を)伝える
ポイント:白(もう)す=伝える
59首席(しゅせき)/首(はじめ)の席=トップの成績を取った人
ポイント:首=はじめorトップ
60横行(おうこう)/横(おう)に行う=自分勝手に振る舞うこと
ポイント:横(おう)なり=自分勝手である
61普遍(ふへん)/普(あまね)し+遍(あまね)し=広くの物事に共通すること
ポイント:遍(あまね)し=広い
62徒労(とろう)/徒(いたずら)に労す=無駄に苦労する
ポイント:徒(いたずら)に=むだに
63直後(ちょくご)/直(す)ぐ後に=すぐ後に
ポイント:直(す)ぐ=すぐに
64暫時(ざんじ)/暫(しばら)くの時=しばらくの間
ポイント:暫(しばら)く=しばらく
65都度(つど)/都(すべ)ての度=その度
ポイント:都(すべ)て=全て
66忽然(こつぜん)/忽(たちま)ち然り=すぐに
ポイント:忽(たちま)ち=すぐに
67具体(ぐたい)/具(つぶさ)なる体=詳しい中身があること
ポイント:具(つぶさ)に=詳しく
68急遽(きゅうきょ)/急に+遽(にわ)かに=突然に
ポイント:遽(にわ)かに=突然に
69俄然(がぜん)/俄(にわ)かに然り=突然に)
ポイント:俄(にわ)かに=突然に
70果然(かぜん)/果(は)たして然り=やはりor予想通り
ポイント:果(は)たして=やはりor予想通り</p>
71窃視(せっし)/窃(ひそ)かに視(み)る=こっそりと見る
ポイント:窃(ひそ)かに=こっそりと
72陰謀(いんぼう)/陰(ひそ)かに謀る=こっそりと計画を立てる
ポイント:陰(ひそ)かに=こっそりと
73概略(がいりゃく)/概(おおむ)ねの略(=あらまし)=おおよその内容
ポイント:概(おおむ)ね=おおよそ
74正午(しょうご)/正(まさ)に午(=12時)なり=12時ちょうど
ポイント:正(まさ)に=ちょうど
75親書(しんしょ)/親(みずか)ら(書いた)書(=手紙)=自ら書いた手紙
ポイント:親(みずか)ら=自ら
76固有(こゆう)/固(もと)より有り=元から持っている
ポイント:固(もと)より=元々
77素行(そこう)/素(もと)よりの行い=普段からの行い
ポイント:素(もと)より=元々
78漸次(ぜんじ)/漸(ようや)くの次=少しずつ
ポイント:漸(ようや)く=少しずつ
※「漸次」の「次」は程度を表す語。年次の「次」と同じ。
79善戦(ぜんせん)/善(よ)く戦う=力を尽くしてよく戦う
ポイント:善(よ)く=よく
80原始(げんし)/原(もと)+始め=物事のはじめ
ポイント:原=もとorはじめ
80個の熟語について、みなさん大半は知っていたと思いますが、一字ごとの漢字まで厳密に考えたことがなかった方は多かったのでは?
このように、熟語の意味を一字ごとに考えて理解できると、その理解が漢文読解でも役立ちます。
4、漢文の特徴5つを知った上でオチを予測すべし!
漢文は独特ですが、特徴を知っていれば、格段に読みやすくなり、話のオチも予想できるようになってきます。
具体t系には、以下の5つの特徴抑えておきましょう。
①道徳的な内容が多い
参照:道徳にまつわる漢文の出題例
・2011年センター試験
・2015年センター試験
・2016年センター試験
・2019年センター試験
・漢文の中で最もオーソドックスな内容。そもそも、漢文を書く人はとても賢いエリートであったため、生きる上で大切なことや、含蓄のある意識高めな話を書くことが多い。
・では、漢文を書く人にとっての「生きる上で大切なこと」とはなにか?それは、「道徳的に生きること」である。具体的には、「自分がされて嫌なことは他人にはしない」「両親を大切にする」「外面より内面を磨くべきこと」など。(基本的には、孔子の言葉を思い浮かべればOK。)
現代社会において、「生きる上で大切なこと」は沢山ありますよね?学力学歴、容姿、お金、コミュ力etc…しかし、漢文の世界においては異なり、道徳的であることがとてつもなく重視されました。この当時の常識を知っていると、漢文は読みやすくなります。
②教訓的な内容が多い
参照:教訓にまつわる漢文の出題例
・2006年センター試験
・2008年センター試験
・2009年センター試験
・2010年センター試験
・2011年センター試験
・2013年センター試験
・2018年センター試験
・2023年共通テスト
漢文は、読んだ人間が今後の人生に活かせるような役に立つ内容=教訓を述べることが多いです。もちろん、この教訓には①の道徳が含まれますが、それ以外にも様々なバリエーションがあります。
教訓系の話を理解できるようになるには、そのような話をできるだけ読んで慣れるしかありません。以下に有名な教訓的エピソードを紹介しているので、読んで慣れてみましょう!
関連記事(教訓)
・人生に役に立つ漢文の面白い話 3選
・古代中国の名教育ママに学ぶ! 学ぶ上で大切な二つのこととは? 「孟母三遷」「孟母断機」
③漢詩がよく作られた
参照:漢詩にまつわる漢文の出題例
・2007年センター試験
・2020年センター試験
・2021年共通テスト
・2022年共通テスト
そもそも、漢文の書き手は、ほぼ100%漢詩が読み書きでき、おびただしいほどの漢詩が残されているので、出題されることも多いです。(科挙の問題には作詩問題もあります。)
漢詩を読解する際には、以下の5つを知っていれば、読みやすくなります。是非ここで学んでおきましょう!
その1「漢詩のスタイルを知ろう」
・漢詩のスタイルとして、絶句(ぜっく)、律詩(りっし)の他、古詩(こし)が存在する。
・絶句は起承転結の4句、律詩は2ペア×4セットの8句、4句でも8句でもないものは古詩と判断してOK。
(古詩は基本的に偶数の句数となる。)
・1句が5字のものを「五言」、7字のものを「七言」と言い、五言絶句、七言律詩のように組み合わせて称する。
・絶句と律詩の区別が難しい場合は、「絶句するほど短い絶句」=4句、「長くて規律の多い律詩」=8句で覚えよう。
その2「五言詩は2・3、七言詩は2・2・3で区切ろう」
・漢詩を読む際は、五言詩は2字・3字、七言詩は2字・2字・3字で区切って解釈しよう。
(高い確率で、漢詩はこのようなまとまりで作られている。)
→具体的には、区切る箇所に線を引いてみると良い。
→受験では、返り点なしの漢詩を解釈させる問題が登場する場合があるため、その際はこの法則に基づいて解釈すべし。
その3「押韻の法則を知ろう」
・漢詩には、押韻(おういん)というテクニックが用いられている。
・押韻とは、主にリズムを良くするために用いる。(現代日本の音楽でも用いられる)
・絶句と律詩は、偶数句末の漢字が押韻する。(また、1句目末も押韻することがある。)
→受験だと、押韻の箇所を空欄にして、「選択肢の中から最もふさわしい漢字を選べ」という問題がよく出てくるので、同じ韻の漢字+意味から総合的に判断すればOK。
その4「漢詩は2句ごとに解釈しよう!+句読点の付け方」
・漢詩は基本的に2句ごとで意味が区切れてるため、2句ごとに現代語訳していくとよい。
・奇数句の後に「、」、偶数句の後に「。」を付けると、読みやすくなる。
(ただし、あくまで目安。実際に訳す際は、「、」の所を「。」としたほうが良い場合もある。)
その5「対句の法則を知ろう」
・対句とは、同じ品詞を用いてペアとし、見た目の美しさを高めるためのテクニック。
→漢詩の場合は、1句目と2句目or3句目と4句目などで対句がされる。
→これを知っていると、意味を類推しやすくなる。
(内容について、道徳・教訓・漢詩の他、政治・怪異・隠者なども登場する。)
関連記事
・男同士の友情と別れの漢詩 7選
・月が登場する風流でロマンチックな漢詩 5選
・大学受験に必要な漢詩の知識・テクニック まとめ
④比喩表現が豊富
参照:比喩表現にまつわる漢文の出題例
・2006年センター試験
・2010年センター試験
・2012年センター試験
・2014年センター試験
・2017年センター試験
漢文は比喩表現が大好きです。比喩表現といえば、たとえば「猿も木から落ちる」(「木登りが得意な猿がまれに木から落ちるように、なにかを得意な人も失敗することがある」の意味)みたいなものです。
また実は、皆さんたちは漢文の比喩好きの恩恵を受けています。なぜなら、漢文で生まれた比喩表現のうち、特に優れたものは「故事成語」として日本でも定着し、現代でも用いられているからです。
(例)矛盾・逆鱗・杞憂・朝三暮四・顰みに倣う・木鶏・胡蝶の夢・五十歩百歩・蛇足・完璧・呉越同舟・井の中の蛙大海を知らず・漁夫の利・虎の威を借る狐etc…
比喩表現をうまく理解するためには、高度な言語能力が必要です。鍛えるためには、漢文独特の感覚に慣れるしかありません。以下のページの比喩表現を見て、少しずつ慣れていきましょう!
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・韓非子の故事成語から比喩の技術を学ぼう!
・故事成語「多岐亡羊(たきぼうよう)」から現代日本との関わりを考える
・心に響く四字熟語を一覧にして紹介! 人生をより豊かにするために
⑤可能な限り簡略に書かれている
漢文の文章は、非常に簡略に書かれています。主語や目的語などはもちろん、表現したほうが分かりやすい部分もあえて削り、洗練させています。
これは、①で述べた通り、漢文の書き手が政治家のエリートであることが深く関係しています。エリートは懇切丁寧に長く説明した文章より、簡潔で美しく文章を好んだので、漢文には省略が非常に多いです。
従って、漢文を読解する際には、積極的に補足する必要があります。(具体的なコツは下で述べます。)
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・ 漢文で現代語訳する際は補足をしよう! ―主語と目的語の省略と補足
・反語と抑揚では補足して意味をしっかり理解しよう!
・ストーリーがある漢文の場合は、積極的に過去のニュアンスを補足しよう!
・上下関係が存在する漢文では敬意の補足をしよう!
5、積極的に補足をすべし!
4ー⑤で述べた通り、漢文は省略がとても多いです。従って、私たちが漢文を読む際には、積極的に補足をしながら現代語訳していく必要があります。
以下に、具体的に補足が必要な場合を挙げるので、注意しておきましょう。
①主語と目的語がない場合
→ 漢文で現代語訳する際は補足をしよう! ―主語と目的語の省略と補足
②反語と抑揚が登場する場合
→反語と抑揚では補足して意味をしっかり理解しよう!
③ストーリーがある場合
→ストーリーがある漢文の場合は、積極的に過去のニュアンスを補足しよう!
④上下関係が存在する場合
→上下関係が存在する漢文では敬意の補足をしよう!