ストーリーがある漢文の場合は、積極的に過去のニュアンスを補足しよう!

ポイント

  • 漢文では、時制の意識があまりなく、本文中には表れないことが大半なので、自分で訳する際は積極的に補うべし!(特に過去のニュアンス)
  • ストーリーものの漢文は、積極的に過去のニュアンスを足していくべし。ただし、発言の部分では過去形で訳さない方がよい部分も存在する。
  • 一方、仮定形や再読文字を含んだ文章においては、過去のニュアンスが必要ないので注意!

1、漢文では時制の意識があまりない!

こんにちは。本日は、「漢文で現代語訳する際は補足をしよう!③ 時制(過去)の省略と補足」ということで解説していきます。

今回の「時制の補足」は、先に解説した主語や目的語の補足ほどは重要ではないですが、使用頻度で言えば多いので、今回でしっかり抑えていきましょう!

こんにちは。「時制」って聞くと、どうしても英語の現在進行形やら完了形やら過去分詞やらが思い浮かんで、眉間にシワが寄ります笑

英語の時制はルールや覚える表現が多くて大変ですよね💦あと、古文でも時制は重要になってきますね。しかし安心して下さい。漢文の時制は、英語や古文ほど難しくないですよ!

そもそも、漢文で時制ってあんまり聞いたことないから、何だか新鮮な気持ちです💡

確かに、あまり取り上げられることはないですね。
というのも、そもそも漢文は、言語的に現在・過去・未来という意味を含め、細かいニュアンスを表現しないことが多いです。

どういうことですか?

これは例文を見ればすぐに理解できます。

1、私は本を書く。/I write a book./我記書。(我 書を記す。)

2、私は本を書いた。/I wrote a book/我記書。(我 書を記す。)

3、私は本を書いている。/I am writing a book/我記書。(我 書を記す。)

日本語は語尾が変わっていていたり、英語は単語が変化したりするのに、漢文だけ変わっていない笑

そういうことです。一応、「遂・卒・終(ついニ)」「曽(かつテ)」「昔」「向(さき)」など、漢文でも過去を示す語は存在するため、その場合は例外ですが、漢文では過去や現在進行といったニュアンスを出さないことが多いです。その場合は積極的に時制のニュアンスを補足しましょう!

2、ストーリーを書いた漢文は積極的に過去形で訳そう!

時制と補足について、もう少し具体的に解説します。時制の中で最も訳する際に用いるのは過去です。

ストーリーを書いた漢文は、積極的に過去形のニュアンスを補足して訳してOKです💡

言われてみれば、漢文はストーリー仕立てのものが多いですね。多分これまでも何となく過去形にして訳してきた気がするけど、今度からはより自信を持って訳せそうです✨

実際に、具体例を挙げてみましょうか。以下の例文を過去を意識しながら訳してみて下さい。

『戦国策』燕策・「漁夫の利」

趙且伐燕。蘇代為燕謂恵王曰、「今者臣来過易水。蚌正出曝。而鷸啄其肉。蚌合箝其喙。鷸曰、「今日不雨、明日不雨、即有死蚌。」蚌亦謂鷸曰、「今日不出、明日不出、即有死鷸。」両者不肯相舎。漁者得而并擒之。今趙且伐燕。燕趙久相支、以敝大衆。臣恐強秦之為漁父也。願王熟計之也。」恵王曰、「善。」乃止。

 趙(ちょう) 且(まさ)に燕(えん)を伐たんとす。蘇代(そだい) 燕の為に恵王に謂いて曰く、「今 臣来たりて易水を過ぐ。蚌(ぼう) 方(まさ)に出でて曝す。而して鷸(いつ) 其の肉を啄(ついば)む。蚌合して其の喙を箝(はさ)む。

 鷸曰く、「今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん」と。蚌も亦た鷸に謂いて曰く、「今日出でず、明日出でずんば、即ち死鷸有らん。」と。両者 相舎(す)つるを肯(がえん)ぜず。漁者得て之を并(あは)せ擒(とら)う。

 今趙 且に燕を伐たんとす。燕と趙久しく相支へ、以て大衆を敝(つか)れしめば、臣 強秦の漁父と為らんことを恐るるなり。故に王の之を熟計せんことを願うなり。」と。

 恵王曰く、「善し。」と。乃ち止む。

 趙は今にも燕を攻めようとしていた。蘇代が燕のために、(趙の王である)恵王に言った。「いま私が(こちらに)来るときに易水を通り過ぎました。ハマグリがちょうど(水の中から)出て日にあたっていました。そしてシギ(=鳥の一種)がその(=貝の)肉をついばもうとしました。ハマグリは(貝殻を)合わせてその(=シギの)くちばしを挟みました

 シギが言うことには、「今日も雨が降らず、明日も雨が降らなければ、(ひからびて)死んだハマグリができあがるぞ。」と。(しかし)ハマグリもまたシギに向かって言うことには、「今日(くちばしが貝殻から)出ず、明日も(くちばしが貝殻から)出なければ、死んだシギができあがるぞ。」と。両者とも、互いを放そうとしませんでした。(すると)漁師が両方を一緒に捕らえてしまいました

 趙は、今にも燕に攻めようとしています。燕と趙が長い間(戦いに)持ちこたえ、そのために(両国とも)国民を疲弊させたならば、私は強国の秦が漁師のように(燕と趙を一緒に得ることを)恐れております。そのために王がこれ(=燕に攻め入ること)をよくお考えになることを願うのです」と。

 恵王は「わかった。」と答えた。そこで(燕に攻め込むことを)やめた

※太字の部分が過去を補足した部分。

こうやって実際の漢文で見ると一目瞭然ですね。漢文自体には過去のニュアンスが表現されていなくとも、現代語訳する際は補足することが多いのが良く分かります

そうですね。ただし一方で、過去を補足すべきではない箇所もあることにも注意しましょう。何でも過去にして良い訳ではありません
また、一部の漢文では全編にわたって論文調(~すべき)のものがあるので、そちらは過去形にする必要はありません。

何でも過去にする必要はないということですね💡気を付けます!

あと地味に疑問なんですけど、蘇代さんが恵王に話している時、過去+敬意を補足しているんですが、これはどういうことですか?

良いことに気がつきましたね!ここでは、蘇代より恵王のほうが身分が高いので、あえて敬意も補足しています。敬意も「漢文と補足」の中で解説が必要ですが、これは次回に行います✨

フライングしちゃいましたね笑 次回の解説も楽しみにしておきます!

3、仮定の意味がある文章では過去のニュアンスを補足する必要なし!

前に述べた通り、ストーリーものの漢文では積極的に過去のニュアンスを補足して欲しいですが、一方で過去が必要ない場面も割とあります。
その代表格が「仮定の意味がある文章」です。

「仮定の意味がある文章」ってどんなやつですか?

以下のような文章を指します。

①学若不成死不還。(学若し成る無くんば、死すとも還らず。) 

→学問が成就しないのであれば、死んでも帰らない。(釈月性/「将東遊題壁」)

②其身不正、雖令不従。(其の身正しからずんば、令すと雖も従われず。)

→(君主の)身が正しくなければ、命令を下しても従ってくれない。(『論語』子路篇)

③学而不思則罔。(学びて思はざれば則ち罔(くら)し。)

→学習していても(自分で)考えることがなければ、本当に理解したとは言えない。(『論語』為政篇)

④苟富貴無相忘。(苟も富貴となるも、相忘るること無からん。)

→たとえお金持ちになって豊かになっても、(あなたを)忘れることはないだろう。(『史記』陳渉世家)

⑤仮令得地失兄弟心如何。(仮令(たと)い田地を得るとも、兄弟の心を失うは何如。)

→たとえ土地を得たとしても、兄弟の心を失うのはどうだろうか。(『北斉書』巻46)

⑥今子食我、是逆天帝命也。(今 子 我を食わば、是れ天帝の命に逆うなり。)

→もし今、あなたが私を食べたら、(あなたは)天帝の意向に反してしまうことになります。(『戦国策』・楚策)

「如・若・苟(もシ)」「縦・仮令(たとイ)」「Aレバ則チB」「苟」「今」など、仮定形の文法が絡む場面では、過去形では訳しません。

なるほど…というか、「仮定」形って言ってるんだから、未来の話になるので、過去で訳さないのは当たり前ですね笑

そうですね💡しかし、改めて認識しておくと、より訳しやすくなると思いますよ!

4、再読文字が登場する文章では過去のニュアンスを補足する必要なし!

仮定の他、再読文字が登場する文章でも、基本的に過去のニュアンスを出す必要はありません。

①及時当勉励、歳月不待人。(時に及んで当に勉励すべし。歳月は人を待たず。)

→その時々で勉強に励むべきである。時間は人を待ってはくれない(のだから。)(陶淵明「雑詩」)

②病癒多忘慎。須常思病苦時。(病癒ゆれば多く慎みを忘る。須く常に病苦の時を思うべし。)

→病気が治れば慎んで生活することを忘れてしまう。常に病気で苦しんでいる時を(忘れずに)覚えておくべきである。(貝原益軒『慎思録』)

③宜戒却奨、須叱反笑。(宜しく戒しむべきに却(かえっ)て奨(ほ)め、須く叱るべきに反(かえっ)て笑うべし。)

→(普通だと)注意すべき(時)逆に(子どもを)褒めてやり、叱るべき(時には)逆に笑って(対応する)べきである。(『顔子家訓』教子篇)

④惟仁者宜在高位。(惟だ仁者のみ宜しく高位に在るべし。)→ただ仁である者だけが高い位に就いているべきである。(『孟子』離婁上)

⑤天将降大任于斯人也、必先苦其心志。(天の将に大任を斯(こ)の人に降(おろ)さんとするや、必ず先ず其の心志を苦します。)
→お天道様が人に大切な役目を与えようとする時には、必ず先にその人の心を苦しめる。(『孟子』告子下)

⑥驕而不亡者、未之有也。(驕(おご)りて亡びざる者は、未だ之有らざるなし。)
→おごり高ぶって身を滅ぼさない者は、これまで存在したことがない。(『春秋左氏伝』定公13年)

⑦子盍為我言之。(子蓋ぞ我が為に之を言わざる。)
→あなたは、どうして私のためにこれを言ってくれないのですか。(『孟子』公孫丑下)

⑧過猶不及。(過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし。)
→過ぎている(状態)は、まるで不足している(状態)と同じである。(『論語』先進篇)

再読文字は勉強したことありますが、時制に気を付けて見るのははじめてなので、なんだか新鮮な気持ちです。確かに、どれも過去のニュアンスはありませんね💡

まぁこのあたりは、既に意味を覚えていれば、過去がどうのこうの言う必要はないですが、一応お伝えしておきます。

普段何気なく過去形にして訳している方は、こちらのページを読み、改めて意識して訳してみましょう!お疲れ様でした💡

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。