【意味一覧】
(例)
⓪意味/「於」の後ろの語に付く読み
①(~場所)で/~ニ
②(~対象)に/~ニ
③(~原因)に/~ニor~ヨリ
④(~比較物)よりも/~ヨリor~ヨリモ
⑤~によって(受身)/~ニ(~セラル)
⑥(~目的語)を/~ヲ
⑦(~起点)より/~ヨリ
⑧(「おイテ」で)~でor~に(関係・時間・場所)
①~⑦は置き字としての用法で、⑧は置き字ではない用法です。
置き字の「於」は、その前後の語に様々な意味を付加する役割を持ちます。
①~⑦を見分けるポイントは、後ろ(⑤は前も)の送り仮名と文脈(特に後の語の性質)です。
まず、後ろの送り仮名が「ニ」であったら①②③⑤、「ヨリ」であったら③④⑦の可能性があります。
その次に注目すべきは後ろの語です。(⑤のみ前)
うしろ=場所→①
うしろ=対象物→②
うしろ=原因→③
前=「~セラル」→⑤
うしろ=比較物→④
うしろ=場所や時間などの起点→⑦
このあたりは結局、文章全体の流れも考慮しながら判断していく必要があります。
【例文】
①荘子釣於濮水。(荘子 濮水(ぼくすい)に釣る。)『荘子』
→荘子は濮水で釣りをしていた。
②斉景公問政於孔子。(斉の景公、政を孔子に問う。)『論語』
→斉の景公が政治の(理想の)あり方を孔子に尋ねた。
③明日当死於雷。(明日当に雷に死すべし。)『新続列女伝』
→明日きっと(あなたは)雷が原因で死ぬはずだ。
④氷水為之、而寒於水。(氷は水 之を為して而も水より寒(つめた)し。)『荀子』
→氷は水から形成されるが、その冷たさは、元の水よりも冷たい。
⑤君子役物、小人役於物。(君子は物を役し、小人は物に役せらる。)『荀子』
→立派な人物は物を使いこなすが、未熟な人物は物に使われてしまう。(=振り回されてしまう)
⑥君子博学於文。(君子は博く文を学ぶ。)『論語』
→立派な人物は、広く書物を学ぶものだ。
⑦千里之行、始於足下。(千里の行も、足下より始まる。)『老子』
→千里もの長い道のりも、足もとの第一歩からはじめる。
⑧先主於永安病篤。(先主 永安に於いて病篤(あつ)し)『三国志』
→先主は永安で危篤になった。
④は有名な「藍より青し」の一部です。
元々大して冷たくない水でも氷のように冷たくなれるように、人間も大した才能がなくとも、努力次第で優れた存在になれると述べています。
⑤における「物」は、現代だとスマホやネットが当てはまるでしょう。
優秀な人はこれらを有効活用できますが、ダメな人はこれらに振り回されて時間を奪われてしまいます。