1、「敢」の意味+理解するための説明
敢(あエテ)
①思い切って~する(強い意志を表す)
①’(不敢で)進んで~しない(行為に消極的なさまを表す)
②恐れながらor僭越ながら~する(相手に失礼になることをする場合に用いる)
③どうして~するでしょうか。いやするはずがありません(反語)
④(敢不で)どうして~しないだろうか。いや~する(反語)
①の意味は、「勇敢」の「敢」(思い切りの良いさまor遠慮のなさま)と同じ意味なので、記憶しやすいと思います✨
②は①の意味の派生と考えると分かりやすいです。
①は主な対象が物事である一方、②は他者が対象であり、「他者に対してグイグイ遠慮無く接する」という感じです。②の後ろには「問」が来て、「敢て問う(失礼ながら質問させてもらいます)」のように用いるケースが多いです。
また②は、現代日本語の「あえて」と似ています。現代日本語における「敢(あえ)て」は、強調or強い意志を表し、「勉強はしなければならないが、今日はあえてサボってみる。」のように、必要性や常識に反してでも何かを行うことを指します。
②の「失礼」は、礼儀という「常識」に反しているという点では、現代日本語の「あえて」と似ていますね💡
③④の反語はやっかいですね💦「敢」は元々積極的なニュアンスを含むので、強い主張を表す反語と結びつきやすいです。このようなイメージの連想を持ってもらえると、頭に入りやすいと思います✨
だいたいのイメージが掴めてきた所で、次章で例文を確認して、「敢」についてさらに学びを深めましょう!
2、「敢」の例文
①臣乃敢上璧。(『史記』)
臣乃ち敢て璧を上(たてまつ)らん。
私はそこで進んで璧を献上します。
①の例文はこれだけだと分かりづらいので、前文を含めたものをこちらに書いておきます。
大王亦宜斎戒五日、設九賓於廷。臣乃敢上璧。
今大王も亦た宜しく斎戒すること五日、九賓を廷に設くべし。臣乃ち敢へて璧を上(たてまつ)らん。
今、大王様も(趙王と同じように)5日身を清め、宮廷で正式の引見を行うべきです。(そうすれば)私はそこで進んで璧を献上します。
つまりこの文章は、「丁寧な対応をしてくれたら、みずから進んで貴重な宝石=璧を献上します」という意味となります。
①’身体髪膚、受之父母。不敢毀傷、孝之始也。(『孝経』)
身体髪膚、之を父母より受く。敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり。
【現代語訳】
(我々の)髪の毛や皮膚を含む身体(の全ては)、両親から授かったものである。(従って自分の身体を)進んで傷付けるようなことをしないのは、親孝行の第一歩である。
②敢問、「夫子悪乎長。」(『孟子』)
敢えて問う、「夫子悪(いず)くにか長ぜる。」と。
【現代語訳】
恐れながらお尋ねします、「あなたはどのような点で優れているのですか?」と。
③郡臣敢忘君乎。(『左伝』)
郡臣敢て君を忘れんや。
【現代語訳】
(私たち)郡臣がどうして君主のことを忘れましょうか。(いや、忘れることなどありません。)
④臣敢不聴令。(『戦国策』)
臣敢て令に聴(したが)わざらんや。
【現代語訳】
私がどうして命令に従わないでしょうか。(いや、必ず命令に従います。)