もくじ
ポイント
- マンガは漢文読解に有効で、楽しみながら得点力アップになる。背景知識が分かれば、漢文の話のオチが予想できたり、うまく補足できたりできることがある。
- ①『梨花(りか)の下で 李白・杜甫物語』は、杜甫と李白の人生を描いたマンガ。これを読めば、「中国における詩が重要視された理由」「李白と杜甫の人生と性格」が分かり、漢詩が読みやすくなる!漢詩が苦手な人にオススメ!
- ②『史記』とは、古代中国の有名な人(君主・政治家・将軍など)の生き様を、オムニバス形式で紹介するマンガ。これを読めば故事成語や中国政界について学ぶことができ、漢文読解にも役立つ。
- ③『孔明のヨメ。』は、黄月英(こうげつえい)という女性と、諸葛孔明(しょかつこうめい)の仲睦まじい新婚生活を描いた作品。このマンガを読むと、当時の女性観・夫婦観・生活観などを知ることができる。
- ④『千年狐』は、1000年以上生きる狐の妖怪が、他の妖怪や人間と交わっていく様を、時にコミカルに、時にシリアスに描くマンガ。このマンガを読むと、志怪小説というジャンルに慣れることができる。
(志怪(怪異を志(しる)す)小説は、漢文の1ジャンルを形成しており、割と受験にも登場する。) - ⑤『マンガで分かることわざ・故事成語』は、有名な故事成語を易しくギャグ風に解説したマンガ。故事成語は漢文文化のキーワードである比喩表現と密接な関わりを持っており、それに慣れるだけで漢文全般が読みやすくなる。
1、マンガが漢文読解に役立つ?
こんにちは!本日はマンガという観点から、背景知識について学んでいきましょう!
先生こんにちは。私はマンガ好きなので楽しみです!でも、本当にマンガで背景知識が学べるんですか?💦
学べるマンガはありますよ!まず、漢文を読解する上で背景知識を学ぶことは大切です。
背景知識が分かれば、話のオチが予想できたり、うまく補足できたりできるですよね?
その通りです。漢文を書いた人と、現代日本の我々とでは、価値観や考え方が大きく異なる場合があります。それを埋めるのが背景知識です。
そして、今回伝えたいのは、「背景知識は勉強だけではなく、マンガからでも学ぶことができる」ということです。
今回は、6つのマンガを具体例として、どのように漢文読解に必要な背景知識を学んでいきましょう!
2、①『梨花(りか)の下で 李白・杜甫物語』 李白と杜甫の生涯を4コマで教えてくれるマンガ
先生オススメのマンガとして、杜康 潤『梨花の下で 李白・杜甫物語』(全1巻)を紹介させて下さい。
あの詩人で有名な李白と杜甫が出てくるマンガですか?
そうです。これを読めば、「中国における詩とは何か?」「李白と杜甫の人生と性格」が分かります。この2つは、非常に有効な背景知識です。
メリット1 中国における詩の意味が分かる!
「中国における詩の意味」ってどういうことですか?
ご説明します。まず、マオさんは現代日本で「詩(ポエム)」はどんな人が書いて、社会的にどのように認識されていると思いますか?
詩を書く人は…思春期の人とか、感受性が特別豊かな人ってイメージがありますね。
(実は私もポエム書いてるのは秘密…💦)
あと、社会的には「音楽や絵描きと同じ芸術系の趣味の1つ」って感じかなぁ…?
なるほど💡ありがとうございます。しかし、漢文世界における「詩」とは、色んな意味で現代日本とは違っていました。
漢文世界における詩は、「政治家なら当然作れるべきもの」で「政治において非常に重要なもの」です。
??? なんで詩が政治に関係あるんですか?意味が分かりません…
中国における詩は、昔から「民衆が間接的に政治的な不満を伝える手段」であり、「他者の気持ちを学んで道徳的になるための手段」だったため、政治において重要視されました。
??
「民衆が間接的に政治的な不満を伝える手段」 とは、例えば民衆の兵役が重かった場合、中国ではその歌が作られ、流行することがあります。いわゆる社会風刺の歌ですね。
社会風刺の歌?
社会の不安や不満を歌に乗せて伝えているものですね。現代日本だと、Mr.Childrenなどがよく行っているイメージです。あと、最近だと森山直太朗「最悪な春」が、コロナ禍における社会を風刺していますね。
なるほど… 「最悪な春」 を聞いてみましたが、コロナ禍で思うように過ごせない人々の気持ちが描かれていますね。
詩=「民衆が間接的に政治的な不満を伝える手段」 の意味が良く分かりました。詩や音楽と政治って関係あるんですね💡
まぁ今だと詩と政治の関係はそこまで強くないですけどね。中国では民衆の間で流行っている詩歌を聞くことで、政治の方針を決めることができるため、重要視すべしという価値観がありました。
つまり、中国では世論を新聞やネットの調査ではなく、流行している詩歌から知ろうとしていたってことですね💡
あと1つの詩=「他者の気持ちを学んで道徳的になるための手段」とは、「詩とは感情の発露であり、詩を理解できる=他者の気持ちを理解できる」ということです。
もう少しかみ砕くと、「詩とは作者の感情が爆発した結果産み落とされたものだから、それが分かれば、その技術で対面でも他者に対し道徳的に振る舞うことができる」ということです💡
なるほど…つまり、詩は他人の気持ちを理解する能力を高めるための大切な要素ってことですか?
その理解でOKです!まぁ実際、詩が味わえれば道徳的になるかは分かりませんが…
つまり、このような背景があって、中国で詩はめちゃくちゃ重要視されてきた訳です。
分かりました。これまで漢詩を何となく読んできたけど、そんな背景があって作られていたんですね💡漢詩を見る目が根本的に変わった気がします。
メリット2 李白と杜甫の人生と性格が分かる!
次に、『梨花の下で 李白・杜甫物語』を読むメリットその2である「李白と杜甫の人生と性格が分かる」について解説させて下さい。
先生、李白と杜甫の人生と性格が分かると、なんで漢文が読めるようになるんですか?
①中国政治家の生き方・考え方が分かる
②李白・杜甫の詩が読みやすくなる
からです💡
「①中国政治家の生き方・考え方が分かる」については、中国政界の闇 左遷・死刑・自殺・族滅でも触れた通り、中々厳しくて面倒くさい中国の政界を知ることができるということです。
李白・杜甫も政治に携わっていて中々苦労していますが、マンガではそれがよく理解できるようになっています。
中国政界の面倒くささが分かれば、彼らの書く漢詩も理解しやすくなります。
「②李白・杜甫の詩が読みやすくなる」については、そのままの意味です。詩は、作者の性格や境遇が強く反映されます。例えば、李白は「天才肌で自由奔放」、杜甫は「真面目で秀才」という性格です。実際、李白の作品は、「表現が非常にきらびやかで華があり、かつ分かりやすい」という特徴があり、杜甫は「固くて分かりづらいけど、真摯に自分や社会と向き合っている」という特徴があります。
また、2人は唐の低迷期に生きた人であり、様々な社会問題や反乱が起こっていました。杜甫の「春望」も、安史の乱という大反乱が影響して生まれた作品です。
なるほど。確かに、詩と性格がリンクするのは分かる気がします。あと、春望で「烽火三月に連なり」って戦争の話が出てきていたと思うけど、そういうことだったんですね!
有名な漢詩の作者の性格や人生は知っておいたほうがよいと分かりました💡
「中国における詩とは何か?」「李白と杜甫の人生と性格」がいかに漢文(詩)の読解に大切か説明してきましたが、実際にマンガをご覧になってもらえると、より分かりやすいと思います。絵柄も見やすいですし、1巻だけですので、よかったらどうぞ✨
また、李白と杜甫の人生・性格については、以下のページにまとめてあるので、よかったらご覧になってみて下さい。
2、『史記』(しき) 魅力的な人物の生き様を紹介してくれるマンガ
『史記』とは、古代中国の有名な人(君主・政治家・将軍など)の生き様を、オムニバス形式で紹介する漫画です。 元々は司馬遷(しばせん)という歴史家が書いたものですが、それの一部を漫画化したものになります。
上のサイトで購入することができます。また、こちらのサイトで、少し試し読みができます。
https://ebookjapan.yahoo.co.jp/books/108090/
試し読みしてみました!うーん…絵がちょっと古いですね笑
確かに、絵が受け付けない方は一定数いらっしゃるかもしれません。また、この作者あるあるですが、顔の書き分けがあまりできていない場合があります。
しかし、読めば漢文読解にかなり役立ちますよ!
メリットその1 故事成語を学べる!
この『史記』ってマンガは、漢文読解する時、どんな点で役に立つんですか?
第1に、故事成語を学ぶことができます💡
故事成語って、確か…「矛盾」とか「逆鱗」とかですね。
横山光輝『史記』を読めば、多くの故事成語の由来について、詳しく知ることができます。具体的には、「屍に鞭打つ」「完璧」「臥薪嘗胆」「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」「背水の陣」「四面楚歌」といった故事成語が、どのようなエピソードがもとで作られたのか、漫画で分かりやすく理解できます💡
へぇ…ていうか、「完璧」って故事成語なんですか!?
そうですよ!「完璧」は、「璧を完(まっと)うす」と読みますが、元々は藺相如(りんしょうじょ)という人が、強国であった秦から国家の秘宝である璧(宝石の一種)を守り切ったことに由来します💡いつか詳しく紹介したいですね。
そして、受験で故事成語が問われることもあるので、知っておきましょう!
普段何気なく使ってる言葉でも、由来って意外と知らないんだなぁ…他の言葉の由来も知りたいので、漫画読んでみます!
メリットその2 中国政界の厳しさについて知ることができる
『史記』を読む第2のメリットは、「中国政界の厳しさについて知ることができる」です。
この前の授業でやったやつですよね!
その通りです。漢文に登場する人は、だいたい政治上「偉い人」ですが、中国の政界は非常に厳しく、地位や命を守りきることは難しいです。実際、『史記』に取り上げられている人たちも、左遷されたり死刑にされたりしています。
痛いのはやだなぁ…
『史記』は、そこまで描き方が生々しくないので大丈夫ですよ!是非読んで、漢文に登場する人や書く人が、どのような世界に生きたのか、知って欲しいです。その知識は、必ず読解に役立ちます✨
漫画読んで漢文が読めるようになると思えば、お得な感じがするので、頑張って読んでみます!
3、『孔明のヨメ。』 古代中国の新婚夫婦の様子を微笑ましく描いたマンガ
『孔明のヨメ。』は、黄月英(こうげつえい)という女性と、諸葛孔明(しょかつこうめい)の仲睦まじい新婚生活を描いた作品です。
女の子が主人公で、新婚生活が主になっているマンガなんですね!私は戦いとかには興味があまりないから、読みやすそう✨
内容が読みやすいのはもちろん、絵柄は可愛らしいですし、色々と漢文読解に役立つことも教えてくれるので、本当にオススメです。
絵柄が可愛らしいのはポイント高いです!笑
一部オンラインで無料公開されているので、よかったらご覧になってみて下さい。
https://comic.pixiv.net/works/4048
先生が言うとおり、絵柄が可愛いし、4コママンガで読みやすいです✨
また、2021年9月の時点で12巻まで出版されていますが、血なまぐさい表現は全くないので、その点でもオススメできます✨
私痛いのはマンガでも嫌なので、その点も安心だなぁ💡
そういえば、三国志って、マンガ・アニメ・小説・ゲーム・スマホアプリとか、沢山ネタにされてますよね?最近は、「新解釈・三国志」とかの映画も作られてますよね?
その通りです。三国志は、日本でもかなりの知名度を誇り人気です。一方で、「三国志に興味はあるけど、どれから手を付けてよいか分からない」という人がいると思います。そのような方に、『孔明のヨメ。』はオススメです。
三国志にあるあるなんですが、「人物が多すぎてストーリーが理解できない」というハードルがあります。
しかし、『孔明のヨメ。』は基本日常パートが多く、ストーリーもゆっくり進み、登場人物もそこまで多くないので、無理なく楽しめると思います!
私も少し三国志に興味あるけど、よく知らなかったから、ぴったりですね✨
このマンガをきっかけに、三国志の世界にどっぷりはまりましょう!
先生って三国志好きなんですか?
無限に話し続けるくらいには好きですよ✨話しましょうか?
マンガ読んで自分のペースで知っていきます!笑
メリット 当時の女性観・夫婦観・生活観などを知ることができる
『孔明のヨメ。』は、「当時の女性観・夫婦観・生活観などを知ることができる」というメリットがあります。
主人公が女性で、夫婦生活が主なので、これはあらすじだけでイメージしやすいですね✨
この作者の方は、古代中国の風俗・習慣について、研究者レベルで学ばれて、本当に学ぶことが多いです。
正直、私も初耳の情報が沢山あって、大変勉強になってます…笑
それはすごい!!広く当時のリアルな生活や価値観を学べば、漢文が読みやすくなりそうです✨
4、『千年狐』(せんねんきつね)
『千年狐』は、古代中国、1000年以上生きる狐の妖怪が、他の妖怪や人間と交わっていく様を、時にコミカルに、時にシリアスに描くマンガです。
上のリンクから第1巻が購入可能です。また、以下のアドレスでは、一部を無料で見ることができます✨https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF01200324010000_68/
メリット 志怪小説というジャンルに慣れることができる
漢文読解において『千年狐』を読むメリットとして、「志怪小説(しかいしょうせつ)というジャンルに慣れることができる」というものがあります。
「志怪小説」って何ですか?
「怪異を志(しる)す」というジャンルの小説であり、神様や妖怪、不思議な現象を題材とした内容ということです。
この怪異小説は、漢文の1ジャンルを形成しており、割と受験にも登場します。例えば、2012年度のセンター試験(本試験)や、山梨大学・上智大学などの試験にも出題されています。
受験に出るなら是非読まなきゃ!笑
志怪関係の漢文は、いくつかパターンがあるので、『千年狐』で慣れておくと、かなり読みやすくなると思います。
また、『千年狐』を含め、ここで紹介するマンガは、漢文読解に関係なく普通に楽しめるものなので、興味が湧けば是非ご覧になってみて下さい✨
5、『マンガで分かることわざ・故事成語』(上下)
『マンガで分かることわざ・故事成語』は、その名の通り、マンガの中で故事成語について解説しているものです。
「蛇足」「臥薪嘗胆」「朝三暮四」「五十歩百歩」など、現代でも用いている故事成語について、元となったエピソードを非常に易しくギャグ気味に解説してくれるので、楽しく故事成語を学ぶことができます。
単純に語彙力が高まるだけでなく、故事成語は漢文文化のキーワードである比喩表現と密接な関わりを持っており、慣れるだけで漢文全般が読みやすくなります。