1、3つの「是」の意味を抑えよう!
①これ・ここ
(人や物事・場所や事態を指す。代名詞の役割。)
【例文】
子曰、「君子成人之美、不成人之悪、小人反是。」(『論語』)
子曰く、「君子は人の美を成し、人の悪を成さず。小人は是(こ)れに反す。」と。
→孔子がおっしゃるには、「立派な人物は、他者の良い所を(褒めて)伸ばそうとし、悪い所は指摘しない。未熟な人間は、これ(=他者の良い所を褒めること)とは反対の言動を取ってしまう。」と。
②~である。
(英語のbe動詞の役割。特別訳す必要無し。)
【例文】
我是鬼也。(『搜神記』)
我は是れ鬼なり。
→私は幽霊である。
③正しい。(「是非」の「是」。「是トス」のように動詞でも用いる。)
【例文】
覚今是而昨非。(陶淵明/帰去来辞)
今の是(ぜ)にして昨の非を覚(さと)る。
→現在の自分が正しく、昨日までの自分が間違っていたと悟った。
※③の「覚」にはニ点が付きます。ミスです。
2、「是」を含む慣用表現も抑えよう!
①是以(ここヲもっテ)
→従って・こういうわけで
(②の「是」と異なり、上文全体を指し、後ろで話の結論や物語の結末を示すための役割。)
【例文】
項羽乃敗而走、是以兵大敗。(『史記』)
項羽乃ち敗れて走(に)げ、是を以て兵大敗す。
→項羽はすぐさま敗走し、こういうわけで(項羽の)軍は大敗した。
②以是(これヲもっテ)
→これによって・このため
(①の「是」と異なり、「是」が特定のものを指し、代名詞の役割を果たす。)
【例文】
(項梁)陰以兵法部勒賓客及子弟、以是知其能。(『史記』)
(項梁は)陰かに兵法を以て賓客及び子弟を部勒し、是を以て其の能を知る。
→項梁はひそかに兵法に従って食客や青年たちに役割を分担させ、それによって彼らの能力を把握した。
【ポイント】①②について
①と②なら①のほうが登場頻度は圧倒的に多いですし、役割としても重要(=後ろで話の結論や物語の結末を示すための役割)なので、基本的には①のほうを抑えておけばOKです!
③於是(ここニおいテ)
→そして
(①②と比べ、軽い話の展開を示す。特に訳す必要無し。)
【例文】
於是張良至軍門、見樊噲。(『史記』)
是に於て張良 軍門に至り、樊噲に見ゆ。
→(そして)張良は軍門にたどり着き、樊噲に会った。
④如or若是(かクノごとシ)
→このようである
【例文】
匈奴毎入、烽火謹、輒入収保、不敢戰。如是数歲、亦不亡失。(『史記』)
匈奴(きょうど)入る毎に、烽火謹み、輒ち収保に入りて、敢へて戦わず。是くのごとくすること数歳、亦た亡失せず。
→匈奴が(趙に)侵入するたびに、のろしを上げるのは控え、砦に入って戦おうとしなかった。このようにすること数年、(戦力を)失うことはなかった。