漢文に頻出の「動物を用いた比喩表現」を理解してうまく補足できるようになろう!

こんにちは。このページでは、漢文でよく出てくる「動物を用いた比喩」について学んでいきましょう!「虎の威を借る狐」「蛇足」「牛耳を執る」のように、現代日本語では、動物を用いた比喩表現が多く存在しています。

このような比喩を用いる漢文は受験漢文でもよく出てきており、例えば共通テストでは2012年・2015年で登場しています。これを機に、しっかり理解できるようになりましょう!

まとめ

  • 漢文で動物が現れた場合は、人間の性質や状態を比喩をしている可能性を疑ってみましょう。
  • それぞれ動物のイメージや文脈に沿って、具体的に比喩しているものを探し当てましょう。
  • 漢文における各動物の具体的イメージは、「龍・虎=支配者or強者」「犬(狗)=粗末・貧弱」「馬=人にとってなじみ深く、高貴から低俗まで様々」「羊=貴重・立派」
    ※あくまで典型であり例外もあるので、最終的には文脈で判断しましょう!

1、漢文で動物が出てきたら人間の比喩だと考えてみよう!

そもそも、なぜ漢文で動物を出すのでしょう?一つの大きな目的として、「人間の性質・状態を表現するため」というものがあります。これは現代日本で用いられている表現も同じです。
「負け犬の遠吠え」「犬猿の仲」「蛇ににらまれた蛙」など、どれも実際の動物ではなく、人間の様子や性質を表現する場合に用いています。漢文も同じです。

なお、漢文の一大特徴に「比喩表現の多用」が存在しており、その一つが「動物を用いた比喩法言」ということになります。漢文の特徴を知って、より漢文を読みやすくなりたい方はこちらも合わせてどうぞ。

まずは、有名な表現について、それぞれ人間のどのような性質・状態を表しているのか考えてみましょう。

虎の威を借る狐→権力者の権威に頼るつまらない人物のたとえ。
虎=権力者のたとえ。
狐=つまらない人物のたとえ。

窮鼠猫を噛む→追い詰められると、弱者でも強者に反撃することのたとえ。
鼠=弱者のたとえ。
猫=強者のたとえ。

二兎を追う者は一兎をも得ず→二つのことを同時に成し遂げようとしても、結局どちらも失敗に終わることのたとえ。
兎=目標or目標物のたとえ。

鶏口と為るも牛後と為ること無かれ→大きな集団に従うより、小さな集団のトップでいたほうがよいことのたとえ。
鶏口=小さな集団のトップのたとえ。
牛後=大きな集団に従うことのたとえ。

いかがでしょうか。それぞれ意味や動物のイメージから、何をたとえているのか分かりましたか?

2、実際に何の比喩か予測してみよう! 練習問題

大分慣れてきたと思うので、ここでは少しマニアックな表現を自力で理解してみましょう!

Q1:以下の文章を読み、太文字中の動物が何を表しているのか説明して下さい。

 漢の六年、ある人が①韓信(かんしん)の謀反を密告した。②高祖(こうそ)は③陳平(ちんぺい)の計略によって、巡狩と称して諸侯と会合しようとした。南方に雲夢(うんぼう)があり、そこで使者を発して諸侯に告げるには、「陳(ちん)に会合せよ。私はもうすぐ雲夢に着こうとしている。」ということであった。(しかし)実は韓信を襲撃しようとしたのである。韓信はそれを知らなかった。

 高祖は楚に着こうとしていた。韓信は兵を動かし謀反しようと考えたが、いくら探しても高祖を糾弾できる罪は見当たらなかった。(ひとまず)高祖に拝謁しようかとも思ったが、捕らえられることを恐れた。ある人が韓信に説いて言うには、「④鍾離眜(しょうりまい)を斬って高祖に拝謁しなさい。(そうすれば)高祖はきっと喜んで、あなたの憂いは無くなるでしょう。」と。韓信は眜に会って相談すると、眜が言うことには、「漢が攻撃して(韓信の国である)楚を取らないのは、私があなたの元にいるからです。もし、あなたが私を捕らえて自ら漢に媚びようと望むなら私は今日にでも死にましょう。(ただし)あなたも私に続いて滅びるでしょう。」と。さらに韓信を罵って言うことには、「あなたは徳のある人物ではありません。」と。そして、ついに自ら首を刎ねた。

 韓信はその首を持参して高祖に陳で謁見した。高祖は兵士に命じ、韓信を縛り上げて車に乗せた。韓信が言うことには、「やはり世の人が言う通りだ。「すばしっこい兎が死ぬと優れた猟犬は煮殺され、高く飛ぶ鳥が尽き果てると優れた弓はしまわれ、敵国が無くなると知謀の臣下も滅ぼされる。」と。天下は既に定まっているので、(用済みの)私が殺されるのは当然である。」と。高祖が言うには、「お前の謀反を密告したものがいるのだ」と。こうして、韓信を捕らえ、洛陽(らくよう)に到着すると韓信の罪を許し、王から位を下げて淮陰侯(わいいんこう)とした。(『史記』淮陰侯列伝)

①韓信…高祖の臣下で将軍・王。「国士無双」「背水の陣」で有名。
②高祖…劉邦のこと。漢の皇帝。
③陳平…高祖の臣下。謀臣。
④鍾離眜…項羽の臣下で、かつて高祖とは対立していた。高祖が捕らえようとしていた。

A:兎=敵国 犬=臣下(特に発言者である韓信自身)

いかがだったでしょうか?この問題部分は、「狡兎(こうと)死して走狗(そうく)烹らる」として、中国の歴史書だとよく出てきます。それくらい、建国した後の優れた臣下というのは、用済みor危険分子として粛清されてきたということですね。まぁ今回は反乱しようとしていた韓信に非があるとは思いますが…汗

Q2:以下の文章を読み、登場する「虎」「狐」がそれぞれ何を表しているのか説明して下さい。

 荊(けい)の宣王(せんおう)が臣下たちに「私は北方の国々が昭奚恤(しょうけいじゅつ)を恐れていると聞いた。(これは)はたして本当なのか。」と尋ねた。臣下たちは答えなかった。江乙(こういつ)が答えて言った。「虎が沢山の動物を探して食べていたところ、狐を捕まえました。狐は「君は決して私を食べてはいけない。天帝は私を全ての動物の長とした。今、君が私を食べたら、それは天帝の命令に逆らうことになるのだ。(もし)君が私の言ったことを信じないのならば、私は君のために先に立って進もう。君は私の後ろに従って見てみなさい。全ての動物は私を見ると必ず逃げ出すだろう。」と言いました。虎はそれをもっともだと思い、狐と(一緒に)歩きました。動物たちは狐と虎を見るとみな逃げました。虎は動物が自分を恐れて逃げるのを知りませんでした。狐を恐れているのだと勘違いしたのです。

 (さて)今、王様の領地は五千里四方で兵士は百万人おりますが、それを全て昭奚恤に任せております。ですから、北方の国々は奚恤を恐れていますが、実のところは王様の兵隊を恐れているのです。このことは、全ての動物が虎を恐れていたのと同じなのです。」と。(『戦国策』楚策)

A:虎=宣王 狐=昭奚恤

いかがでしたでしょうか?これは有名な「虎の威を借る狐」ですが、実はこれには前後の文章が存在しており、「虎の威を借る狐」はたとえのために出された話だったのです。教科書だと前後が削られているため、初耳だった方も多いと思います💡

3、中国における各動物のイメージ・比喩 龍・虎・狗・馬・羊

上で述べた通り、漢文に出てくる動物は、人の何かしらの性質をたとえたものであることが多いですが、そのたとえには動物ごとの傾向があります。下に挙げているので、(例)で何が何にたとえられているのか理解しましょう!

龍・虎=支配者or強者のイメージ・比喩
(例)虎の威を借る狐→権力者の権威を笠に着て威張るつまらない人物のたとえ。
虎=権力者のたとえ。
狐=つまらない人物のたとえ。

(例)龍虎相搏(う)つ→強い者同士が激しく戦うたとえ。
龍・虎=共に強い者のたとえ。

犬(狗)=粗末・貧弱なイメージ・比喩
(例)虎を描いて狗に類す→凡人が優れた人の真似をして失敗すること。
→虎を描いて=優れた人の真似をすることのたとえ。
→狗に類す=狗のような貧弱な存在の絵になってしまう=失敗することのたとえ。

馬=人にとってなじみ深く、高貴から低俗まで様々な比喩・イメージが存在。
(例)千里の馬は常に有れども伯楽は常には有らず。→優秀な人材はいつでもいるが、それを見つけてくれる優秀な指導者は少ないこと。
→千里の馬=千里を走る程優れた馬=優秀な人材のたとえ。
→伯楽=馬を見極める達人の名前=優秀な指導者のたとえ。

(例)犬馬の労→他人のために尽くすことの謙遜。
犬馬の労=犬や馬程度の低い労働のたとえ。

羊=貴重・立派な存在
(例)羊頭狗肉→外見を立派に見せかけて、実質が伴わないことのたとえ。
羊頭→立派で人を惹き付ける存在のたとえ。
狗肉→粗末で価値のない存在のたとえ。
羊の頭を看板に出すものの、実際は犬のような粗末な肉を売るという所から。

(例)多岐亡羊→選択肢が多くなるからこそ、本当に大切なものを得るための道筋を見失ってしまうことのたとえ。
羊=本当に大切なもののたとえ。

以上、「動物を用いた比喩表現と補足」というテーマで解説してきましたがいかがでしたでしょうか?漢文で動物が出てきた時、うまく情報を補足して理解できそうですか?
漢文にはこの他にも補足が必要な場合が多くあるので、合わせてそれらも学んでみましょう!お疲れ様でした!

漢文で現代語訳する際は補足をしよう! ―主語と目的語の省略と補足
反語と抑揚では補足して意味をしっかり理解しよう!
ストーリーがある漢文の場合は、積極的に過去のニュアンスを補足しよう!
上下関係が存在する漢文では敬意の補足をしよう!

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