ここでは、論語の名言を、「勉強・努力」「道徳・人間関係」「政治・リーダー論」に分けて解説しています!このページからお気に入りの言葉を見つけ、より良く生きるためのヒントを知りましょう✨
なお、『論語』以外の漢文の名言にも興味がある方は、是非下のページもご覧になってみて下さい。
より良く生きるためのヒントが得られるかも?💡
1、勉強・努力にまつわる名言
①学びて思わざれば則ち罔(くら)し、思いて学ばざれば則ち殆(あやう)し。
【意味】
先生がおっしゃるには、「(広く他人の説や解釈を)学ぶだけで自分なりに考えて理解しなければ、何も身に付かず(また活かせず)、(逆に)自分なりに考えるだけで(広く他人の説や解釈を)学ばなければ、(独断偏向に陥り)危ういものになってしまう。」と。
【原文】
子曰、「学而不思則罔、思而不学則殆。」
【書き下し】
子曰く、「学びて思わざれば則ち罔(くら)し、思いて学ばざれば則ち殆(あやう)し。」と。(『論語』為政篇)
【解説】
・真にあるべき理想の学び方を述べる。
・真の学習とは、「広く学ぶこと」と「自身で考えること」の両方ができてはじめて達成されるという言葉。
・あなたは、単に先生や上司の言葉を聞くだけでなく、自分なりに調べたり考えたりして学ぶことができていますか?
あるいは、自分の考えばかりを優先し、家族や友だちなど、周りの意見を無視していませんか?
②故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。
【意味】
先生がおっしゃるには、「昔の事柄をよく学んだ上で新たに気付(きうまく活用できれは)、先生となることができる。」と。
【原文】
子曰、「温故而知新、可以為師矣。」
【書き下し】
子曰く、「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、以って師と為るべし。」(『論語』為政篇)
【解説】
・勉強は、実践で活かせてこそ意味があることを述べる。
・いわゆる「温故知新」の出典。孔子は、単に教養としての学問だけでなく、現代で活用できるようになって初めて一人前と考えていた。実践的。
・あなたの勉強は、しっかり活用に繋げられていますか?
・あなたの学んでいる事は、どのような場面で役立つか考えていますか?
③今 女(なんじ)は画(かぎ)れり。
【意味】
(弟子の)冉求が言った。「先生の説かれる道(=正しい生き方)に心をひかれないのではありません。ただ、私の力が足りず、(実践することができません)」と。すると、孔子がおっしゃった。力が足りないかどうかは、限界まで努力してみなければ、分かるものではない。本当に力が足りなければ中途で諦めるだけだ。おまえは(始める前から、)自分の力に見切りをつけている(がそれがいけない)。」と。
【原文】
冉求曰、「非不説子之道。力不足也。」子曰、「力不足者、中道而廃。今女画。」
【書き下し】
冉求(ぜんきゅう)曰く、子の道を説(よろこ)ばざるに非ず。力足らざるなり。子曰く、「力の足らざる者は、中道にして廃す。今 女(なんじ)は画(かぎ)れり。」と。(『論語』雍也篇)
【解説】
・才能が無いことを言い訳にする弟子を諭す。理想と現実の間で苦しむ弟子と、それに対する孔子の言葉が述べられる。
・孔子は、人間の生まれながらの性質はそこまで違いが無いが、その後の習慣や努力で大きく変わってくると考えた。(性相近し。習い相遠し。)
・才能を言い訳に努力ができないと言い訳している人は、ひとまずやれるところまで頑張ってみればよいのでは?きっとその先にあなたなりの道が見えてきます。
④学は及ばざるが如くせよ。
【意味】
学びとは、(常に)「十分ではない」と思うようにすべきである。しかも、得た学びを失わないか常に恐れて(復習)すべきである。
【原文】
子曰、 「学如不及、猶恐失之。」
【書き下し】
子曰く、「学は及ばざるが如くせよ。猶お之を失わんことを恐れよ。」と。(『論語』泰伯篇)
【解説】
・継続と復習の大切さを述べる。
・前半では、ある程度学ぶと「自分は賢い」と調子に乗ってしまい、努力を怠ってしまうことを戒める。
・後半は復習の大切さを述べる。人間の頭はすぐに忘れてしまうため、面倒だが定着するまで繰り返し復習する必要がある。
・あなたは、「これくらい分かっている」「私はもうできる」などと調子に乗らず、常に謙虚な態度で、学びを忘れない姿勢を取っていれていますか?
⑤之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。
【意味】
(物事を単に学んで)知っている(だけ)の人は、好きで(学んでいる)人に敵わないし、好きで(学んでいる)人は、楽しみながら(学んでいる)人には敵わない。
【原文】
知之者不如好之者、好之者不如楽之者。
【書き下し】
之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。(『論語』雍也篇)
【解説】
・学び方の最上は、「楽しみながら学ぶこと」であることを述べる。
・孔子によれば、学び方のランクとは、楽しんで学ぶ>好きで学ぶ>とりあえず知っているだけ
学習(や仕事)は、楽しむことを忘れてはいけない。「やらされている」「言われたからとりあえずやる」だと、上達しないしつまらない?
→あなたは、楽しんで勉強できていますか?
→楽しんで勉強するためには、どのような工夫が必要でしょうか?
⑥学べば則ち固ならず。
【意味】
学びを深めれば、考え方が固定的ではなく柔軟となり、(視野が広くなって偏見が減る。)
【原文】
学則不固。
【書き下し】
学べば則ち固ならず。(『論語』学而篇)
【解説】
・学びを深めれば偏見が減ることを述べる。
・また、「差別や偏見は無知から生まれる」ということも暗に伝えている。
→我々はしばしば「自分の考え=正しい/自分とは異なる考え=誤り」とみなしたり、世間の一部で言われている価値観を鵜呑みにしたりする傾向にある。
(例)「○○」好きなor嫌いな人が理解できない。○○な人はクズ。
・しかし様々な考えや価値観を学べば、自分の考えが一意見でしかないことが分かり、良い意味で固執しないようになり、偏見や差別が減っていく。
・あなたは、差別や偏見に基づいた発言をしてしまった経験はありますか?ないと答えた方、それは気付いていないだけでは?
⑦道に聴きて塗に説くは、徳を之棄つるなり。
【意味】
先生がおっしゃるには、「道ばたで聞きかじったことを、またすぐに道ばたで(他者へ)伝えるのは、道徳を失ってしまうことになる。」と。
【原文】
子曰、「道聴而塗説、徳之棄也。」
【書き下し】
子曰く、「道に聴きて塗に説くは、徳を之棄つるなり。」と。(『論語』陽貨篇)
【解説】
・少し聞きかじった(学んだ)だけで知ったふりをすることを戒める。
・いわゆる「道聴塗説(どうちょうとせつ)」という言葉の出典。特に、大して勉強しておらず、単なる受け売りになってしまっているさまを表す。
(例)テレビやネットの発言を無批判に取り入れ、自分の意見として自慢げに話してしまう。
→あなたは、上の例のような振る舞いをしたことがありますか?
⑧知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。
【意味】
孔子がおっしゃっるには、「由(=子路)に「物事を知る」とは何か教えよう。自分が知っていることは「知っている」として、知らないことは「知らない」と素直になることが、(本当の)「知る」ということだ。」と。
【原文】
子曰、「由、誨女知之乎。知之為知之、不知為不知。是知也。」
【書き下し】
子曰く、「由、女(なんじ)に之を知るを誨(おし)えんか。之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。」と。
【解説】
・見栄を張って知ったかぶりをすることを戒める。
・「知る」とはどういうことなのかを説いた言葉。
・特に、人がしばしば知ったふりをしていることに対する戒めの言葉でもある。なんでも知っている事が素晴らしいのではなく、知らないことは知らないと言えるのが本当に素晴らしいことである。
2、道徳・人間関係に関する名言
①己の欲せざる所、人に施す勿れ。
【意味】
子貢が孔子に質問した。「死ぬまで行うべきことを一言で表すなら、どのように表せますか?」と。孔子はこう答えた。「それは「恕」だね。自分がされたくないことを他者にしないようにすることだ。」と。
【原文】
子貢問曰、「有一言而可以終身行之者乎。」子曰、「其恕乎。己所不欲、勿施於人。」
【書き下し】
子貢 問いて曰く、「一言にして以て終身 之を行うべき者有るか。」と。子曰く、「其れ恕か。己の欲せざる所、人に施すこと勿れ。」と。
【解説】
・自分がされたくないことを他者にすべきではないことを述べる。
・非常にシンプルながらも実践が難しい内容の言葉。あなたは、「自分がされたくないことを他者にしてしまった経験」はありますか?機嫌が悪くて八つ当たりしたり、愚痴を言ったり、傷付けたり、他者からの優しさに感謝しなかったり…大概の人はあるのではないでしょうか。
・中々完璧に行うのは難しいですが、常に心がけておくと、少しは自分がされたくないことを他人にしてしまう機会が減るかも?
②備わらんことを一人(いちにん)に求むる無かれ。
【意味】
周公は魯(ろ)の君主(となる息子)にこう訓戒された。「立派な人物は、親族を忘れないものである。大臣に対しては上手く用いて恨みを買わないようにしなさい。昔からの知人は、大罪を犯していないのなら見棄ててはならない。一人に対して完璧を求めてはならない。」と。
※周公…魯を建国した人物。孔子が理想とした。
【原文】
周公謂魯公曰、「君子不施其親、不使大臣怨乎不以、故旧無大故、則不棄也、無求備於一人。」
【書き下し】
周公 魯公に謂いて曰く、「君子は其の親(しん)を施(す)てず。大臣をして以(もち)いざるに怨みしめず。故旧(こきゅう) 大故(たいこ)無ければ、則ち棄てざるなり。備わらんことを一人(いちにん)に求むる無かれ。」と。
【解説】
・他者にあれこれ求めることを戒める言葉。
・人は、ついつい他人の欠点や至らない所ばかりに目を向け、批判的になりがちです。特に親や教師、上司という立場ならなおさらです。しかし、完璧な人間など存在しませんし、悪い所ばかりの人間も存在しません。
→視野を広く持ち、寛容に他者と接すれば、人間関係がうまくいくかもしれません。
③君子は人の美を成す。
【意味】
孔子がおっしゃるには、「立派な人物は、他者の良い所を(褒めて)伸ばそうとし、悪い所は指摘しない。未熟な人間は、これの反対の言動を取ってしまう。」と。
【原文・書き下し】
子曰、「君子成人之美、不成人之悪、小人反是。」
子曰く、「君子は人の美を成し、人の悪を成さず。小人は是れに反す。」と。(先進篇)
【解説】
・他人の短所ばかりに目を向けて批判するのではなく、長所に目を向けて褒めるべきことを述べる。
・あなたは、同僚の良い所と悪い所、どちらが目に付きやすいですか?恐らく、悪い所のほうに注目しやすいのではないでしょうか?一方、良い所は当たり前だと感じ、あまり意識してないかもしれません。
→恐らく褒めた他者は、より頑張るエネルギーが得られますし、あなたに良い態度を取ってくれます。人は常に、自分の価値を認めてくれる人を探しているものです。
→あなたが友だちや同僚を褒めて、その人を評価してあげる1人になってみるのはどうでしょう?
④三人行えば、必ず我が師有り。
【意味】
孔子がおっしゃるには、「三人が行動をともにすれば、必ず自分の先生となる人がいる。(そのうち、見習うべき)善良な人を選んでその人を見習い、(見習うべきではない)不善良な人を見て(その人を反面教師として)改める。」と。
【原文】
子曰、「三人行、必有我師焉。択其善者而従之、其不善者而改之。」
【書き下し】
子曰く、「三人行えば、必ず我が師有り。其の善き者を択びて之に従い、其の善からざる者にして之を改む。」と。
【解説】
・そばにいる他者から、良い部分も悪い部分も積極的に学ぶべきという言葉。
・特に尊敬に値しないような人物に対する姿勢に注目したい。そのような人物の悪い所をしっかりと分析し、「自分はこうはならないように」と戒めることができれば、その分人間として成長できる機会が増える。
→このように考えれば、「他人は全員自分の先生」と考えることができるかもしれません。
⑤過てば則ち改むるに憚(はばか)ること勿かれ。
【意味】
先生はおっしゃるには、「立派な人物は、重厚な態度を取らなければ、威厳が出ない。学問をすれば考え方が柔軟になる。忠と信の心を大切にして、自分よりレベルの低い者を友としてはいけない。過ちがあったのなら、それを改めることをためらってはいけない。」と。
【原文】
子曰、「君子不重則不威。学則不個。主忠信、無友不如己者、過則勿憚改。」
【書き下し】
子曰く、「君子、重からざれば則ち威あらず。学べば則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること勿かれ。過てば則ち改むるに憚(はばか)ること勿かれ。」と。
【解説】
・自分の犯した過ちに対し、目をそらしたり言い訳したりせずに、しっかりと向き合って改めるべきという言葉。
・あなたは、自分の欠点や過ちとしっかり向き合えていますか?「自分は悪くない。他人が悪い。」などと言い訳して、目をそらしてはいませんか?それでは永遠に自分を成長させることはできません。
→自分の欠点や過ちと正面から向き合うことが成長の第一歩です。
⑥巧言令色、鮮し仁。
【意味】
孔子がおっしゃるには、「言葉が巧みで外面を飾って人に媚びへつらう人間は、仁(=まごころ)が少ない。意志が強く口下手な人間は、まごころのある存在に近い。」と。
【原文】
子曰、「巧言令色、鮮矣仁。剛毅朴訥、近仁。」
【書き下し】
子曰く、「巧言令色(こうげんれいしょく)、鮮し仁。剛毅朴訥、仁に近し。」と。
【解説】
・外面(洋服・メイク・言葉)ばかり取り繕う人は中身がないという言葉。
・あなたの周りに、「ごますりだけは上手いけど、人格や実力は大したことのない人物」はいますか?今も昔もそのような人は一定数います。アニメだと「どらえもん」のスネ夫のような人です。孔子は口ばかりうまく中身が伴わない人を批判的に捉えます。
・人はついつい目に見えて分かりやすい部分(外見・言葉)のみに重点を置きますが、それは本当に正しいのでしょうか?「人は見た目が9割」なんて言葉もありますが、そもそも人を外見のみで判断すること自体に問題があるのかもしれません。(一方、「中身と外見はリンクする」という考え方もあります。)
・言葉遣いや見た目を磨くことが悪いことではありませんが、人格を磨くことをおろそかにしていませんか?外見は中身を伴ってこそ輝くものでは?
⑦人の己を知らざるを患えず、人を知らざるを患う。
【意味】
先生がおっしゃるには、「他人が己(の価値)を知らないのを憂うのではなく、他人(の価値)を知らないことを憂う(べきである)。」と。
【原文】
子曰、「不患人之不己知、患己不知人也。」
【書き下し】
子曰く。「人の己を知らざるを患えず、人を知らざるを患う。」と。
【解説】
・「自分はどれだけ努力しても認められない」という考え方がダメなことを教え諭す。
・あなたは本当に周りより努力したのにも関わらず失敗したのでしょうか?自分の頑張りを認めて欲しい気持ちが強すぎて、他者の気遣いや頑張りを見つけて評価できていないことがないですか?
・自分が周りに認められたいのなら、まずは自分が周りの実力や努力を認める必要があるのでは?
⑧徳は孤ならず。
【意味】
先生がおっしゃるには、「道徳的な人物は孤立することがない。必ず理解者や協力者が現れるものである。」と。
【原文】
子曰。徳不孤。必有鄰。
【書き下し】
徳は孤ならず。必ず隣(となり)あり。
【解説】
・優しい人・正しい人には必ず味方が現れることを述べる。
・正論を吐く人間や道徳的な人間は、しばしば「偽善者」「自己中」のように批判されて孤立することがありますが、恐らく孔子はこのような背景を踏まえ、あえて「道徳的な人間は孤立しない!」と述べた可能性があります。
・今も昔も正論がまかり通らず、ズルい人間が幅をきかせることがあります。しかし一方で、分かってくれる人は分かってくれるはずです。独善的になるのは避けるべきですが、自分の正義や道徳心を貫くことも大切です。
⑨君子は和して同ぜず。
【意味】
先生がおっしゃるには、「立派な人物は、調和するが迎合はしない。未熟な人物は、迎合はするが調和はしない。」と。
【原文】
子曰、「君子和而不同、小人同而不和。」
【書き下し】
子曰く、「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。」と。
【解説】
・他者と関わり方として、良いパターン=調和と悪いパターン=迎合があることを述べる。
・自分で考えず、他者の言うことに何でも賛成する態度が「同(迎合)」であり、主体性を持って自分の意見を述べつつ、別の意見ともすりあわせて協調するのが「和(調和)」である。
・あなたは、親や先生、友人、恋人、上司の意見に迎合していませんか?特に立場が上の人に対しては、迎合せざるを得ない場面が出てくると思います。ただし、少しでも相手の言い分をしっかりと聴いた上で話し合い、調和する姿勢が必要なのかもしれません。
⑩仁者は難きを先にして獲るを後にす。
【意味】
(樊遅は)仁とは何かと尋ねた。孔子がおっしゃるには、「仁なる者は、難しい仕事を率先して引き受け、見返りを期待しない。この行いが仁というものだ。」と。(雍也篇)
【原文】
(樊遅)問仁。子曰、「仁者先難而後獲、可謂仁矣。」
【書き下し】
(樊遅)仁を問う。子曰く、「仁者は難きを先にして獲るを後にす。仁と謂うべし。」と。
【解説】
・本当に優しい人間とは、しんどい仕事を率先して引き受け、さらに見返りを期待しないことだと述べる。
・特にアルバイトや仕事においては、「できれば楽な仕事だけをしたい」というのが人情ではないでしょうか?また、頑張った分は評価が欲しいと思うものではないでしょうか?
→しかし、あえてしんどい仕事を引き受けてみれば、自身の成長にもなりますし、結果的に周りからの評価に繋がると思います✨
⑪孝弟なる者は、其れ仁の本為るか。
【意味】
有子(孔子の弟子の一人)がおっしゃるには、「人となりが「孝弟(こうてい。孝は父母によく仕えること、弟は良く年長の兄弟に仕えること)」である人物は、殆ど目上の人に逆らわない。目上の人に逆らうことを好まない(者の中で)反乱を起こしたものはいない。君子とは、物事の根本を大切にしている人である。根本が確立すると道(正しい生き方)が分かる。「孝弟」は「仁」を得るための根本である。
【原文】
有子曰、「其人為也、孝弟而好犯上者、鮮矣。不好犯上而好作乱者、未之有也。君子務本、本立而道生、孝弟也者、其為仁之本与。」
【書き下し】
有子曰く、「其の人と為りや孝弟にして、上を犯すを好む者は鮮(すく)なし。上を犯すことを好まずして、乱を作(おこ)すを好む者は、未だ之れ有らざるなり。君子は本を務む。本立ちて道生ず。孝弟なる者は、其れ仁の本為るか。」と。
【解説】
・「まずは親へ孝行を尽くすことが道徳の出発点」という発言。
・この発言からは、全ての人間がまず孝(父母によく仕えること=家族道徳)を身に付け、それを次第に他の人間関係にも広げていけば、世の中は平和になる、という考え方を読み取ることができる。
→あなたは、両親(家族)を大切にできていますか?恩返しできていますか?
・逆に、現代において犯罪を行う未成年は、家庭に問題があるケースが多いので、この点では説得力があるか…
⑫利に放(よ)りて行えば怨み多し。
【意味】
先生がおっしゃるには、「自分の利益ばかりを考えて行動していると、多くの人々から恨まれてしまう。」と。
【原文】
子曰、「放於利而行、多怨。」
【書き下し】
子曰く、「利に放(よ)りて行なば、怨み多し。
【解説】
・自分本位で利己的(=自分の利益を考えて行動する)な気持ちが大きすぎると、多くの周りの人の怨みを買ってしまうという発言。
・人間は元来、利己的な生き物ですが、人間誰しも自己中で利己的な人間は嫌いなものです。利益を得たいのなら、まずは周りに優しくして利益を与えてあげることが大切です。そうすれば、いずれ結果的に利益を得られるでしょう。
⑬過ぎたるは猶お及ばざるがごとし。
【意味】
子貢(しこう)が孔子に質問した。「子張(しちょう)と子夏(しか)では、どちらが優れていますか。」と。
先生がおっしゃった。「子張は(勉強や仕事などを行う量が)過剰である。(逆に)子夏は不足している。」と。
「それでは子張が優れているのですか。」
「いや、そうではない。やり過ぎはやり足りないのと同じくらいいけない。(何事も程々が大事である。)」と。
【原文】
子貢問、「師与商也孰賢。」子曰、「師也過。商也不及。」曰、「然則師愈與。」子曰、「過猶不及。」
【書き下し】
子貢問う、「師と商とは孰れか賢(まさ)れる。」と。子曰く、「師や過ぎたり。商や及ばず。」と。曰く、「然らば即ち師は愈(まさ)れるか。」と。子曰く、「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし。」と。
【解説】
・孔子が頑張りすぎる弟子と頑張りが足りない弟子とを批評して、不足していることだけでなく、やり過ぎることも戒めた言葉。
・頑張ること、真面目であること、優しいこと、誠実であること…どれも人間の美徳であり、理想とされています。ただし、頑張り過ぎたり真面目過ぎると、精神を壊してうつ病や適応障害になったり、不道徳な他者に利用されるかもしれません。自分の心身を第1に生きましょう!
⑭義を見て為(せ)ざるは、勇無きなり。
【意味】
孔子がおっしゃるには、「(自分の)祖先の霊でもないのにそれを祭るのは、媚びへつらっているからである。正義を行うべきなのを知っているのに実行できないのは、勇気がないからである。」と。
【原文】
子曰、「非其鬼而祭之、諂也。見義不為、無勇也。」
【書き下し】
子曰く、「其の鬼(き)に非ずして之を祭るは、諂(へつら)うなり。義を見て為(せ)ざるは、勇無きなり。」と。
【解説】
・正義の心があっても勇気がなければ、中々実行できないという言葉。
・いじめやポイ捨て、悪口、サボりなどを見て、止めるべきだと思っても、その人から嫌われたり批判されたりするのが嫌で、言えなかった経験はありますか?そういう経験がある方は、「義を見て為(せ)ざるは、勇無きなり」の意味がよく分かると思います。
→空気を読んであえて言わないのも処世訓としてはありですが、自分が正しいと思うことを貫き通すのは立派なことだと思います。
⑮富みて驕ること無きは易(やす)し。
【意味】
先生がおっしゃるには、「貧しい境遇で(他人や世の中を)恨まないようにするのは難しい(一方)、金持ちで驕りたかぶらないようにするのは(余裕がある状態なので)簡単である。」と。
【原文】
子曰、「貧而無怨難、富而無驕易。」
【書き下し】
子曰く、「貧しくして怨むこと無きは難く、富みて驕ること無きは易し。」と。
【解説】
・貧富が道徳心に与える影響について述べた言葉。
→「恒産無くして恒心無し」「金持ちケンカせず」という言葉にも通じる。
・逆に言えば、貧乏でありながら、周りを恨まずに前を向いて生きていける人間は、非常に高い道徳心を持っているということになります。
→あなたの他者への優しさは、お金から得られる余裕に支えられていますか?
→あるいは、自身が貧乏でも他者に優しくできますか?
⑯仁者は其の言や訒(じん)。
【意味】
司馬牛が仁について尋ねた。孔子がおっしゃるには、「仁なる者は、言葉を慎み深くする。」と。
司馬牛がさらに「言葉を慎み深くするだけで仁と呼べるのでしょうか。」と述べた。
孔子がおっしゃるには、「仁を行うのはとても難しいことだ。だからこそ仁なる人の発言は慎重なのである。」と。(顔淵篇)
【原文】
司馬牛問仁、子曰、「仁者其言也訒。」曰、「其言也訒、斯可謂之仁已乎。」子曰、「為之難、言之得無訒乎。」
【書き下し】
司馬牛 仁を問う。子曰く、「仁者は其の言や訒(じん)。」と。曰く、「其の言や訒、斯れ之を仁と謂うべきか。」と。子曰く、「之を為すこと難し。之を言うに訒なること無きを得んや。」と。
【解説】
・まごころのある人間は、発言に慎重だという発言。
・たとえば、「不用意に他者を不快にさせない」というものが挙げられます。「○○しない人はバカ」「○○な人はクズ」など、SNSなどで日常的に自身の価値観を表明したがる人は多いですが、それが特定の人物を傷付けている可能性があります。
→あなたは、自身の狭くて独善的な価値観によって発言していませんか?
3、政治・リーダー論にまつわる名言
①其の身を正しくする能わずして人を正すを如何せん。
【意味】
孔子がおっしゃるには、「もし自分の身を正せば、政治に関わるにあたって特別行うことはない。(つまり、あれこれ政策を考えるより、自分が正しくあるだけで政治はうまくいく。)自分の身を正しくできていないのに、どうして他者を正すことができようか。(出来るはずがない。)」と。
【原文】
子曰、「苟正其身矣、於従政乎何有。不能正其身、如正人何。」
【書き下し】
子曰く、「苟(いやし)くも其の身を正しくせば、政に従うに於いて何か有らん。其の身を正しくする能(あた)わずして、人を正すを如何せん。」と。
【解説】
・人の上に立つ立場の人は、あれこれ指摘する前に自分の身を正しておくべきという言葉。
・自分ができていないのに、「もっと真面目に勉強しなさい」「もっとキチンとしなさい」という人や、自分が失礼なのに他者へ「常識が無い」と指摘する人など、世の中には自分のことを棚に上げて他者を攻撃する人間が非常に多いです。
→言われた側からすると、「お前が言うな!」とツッコみたくなりますし、何より親や両親に言われたら一気に信頼できなくなり、何を言われても響きません。
→人を指導・教育する立場の方は、まずは自分ができているかどうかをしっかりと見直しましょう!
②政を為すに徳を以てするは、譬えば北辰其の所に居りて、衆星 之に共(むか)うがごとし。
【意味】
先生がおっしゃるには、「徳を用いて政治を行うとする。それは、北極星を中心としてその周りを星がめぐるようなものである。」と。(為政篇)
【原文】
子曰、「為政以徳。譬如北辰居其所而、衆星共之。」
【書き下し】
子曰く、「政を為すに徳を以てするは、譬えば北辰其の所に居りて、衆星 之に共(むか)うがごとし。」と。
【解説】
・人を導く上で最も根本とすべきは道徳であるという言葉。
・これは政治家だけでなく、家族やクラス、部活など、グループを率いるリーダーにも当てはまります。自分のすべきことばかりが頭の中を占めてしまい、周りへの優しさが欠けていませんか?
③之を導くに政を以ってし、之を斉えるに刑を以てすれば、民免れて恥なし。
【意味】
先生がおっしゃるには、「民衆を導くために法律を用い、また治めるために刑罰をもってすれば、民衆は法律の穴を見つけようして、節操のない人間となってしまう。(しかし、)徳でもって民衆を導き、礼でもって国を治めるならば、民衆はその身を正すようになる。」と。(為政篇)
【原文】
子曰、「導之以政、斉之以刑、民免而無恥、導之以徳、斉之以礼、有恥且格。」
【書き下し】
子曰く、「之を導くに政を以ってし、之を斉えるに刑を以てすれば、民免れて恥なし。之を導くに徳を以てし、これを斉えるに礼を以ってすれば、恥有りて且つ格(ただ)し。」と。
【解説】
・「ルール」「罰」によって厳しく取り締まるより、「まごころ」「礼儀」によって寛大に接するほうを重視する。
・ルールは大切ですし、ルールは本来まごころや配慮から生まれるものです。しかし、ルールや罰ばかりを重視していると、「ルールを破らないなら何してもよい」という無節操で不誠実な人間になってしまう危険性があります。「法律(ルール)の根本には道徳があってこそ」ということを、ルールを決める立場のリーダーは常に忘れないようにすべきです。
・また、他者の感情についてしっかりと学ぶことができれば、「恥」の概念が生まれ、自然と善人になっていき、あなたの団体は良い雰囲気となっていくでしょう。これは、もちろんトップになる人物がそれなりの道徳心があることが大前提であり、それを生徒や部下、子ども、部員に波及させていくことができればの話です。(これが難しいですが…)
④君 君たり、臣 臣たり、父 父たり、子 子たり。
【意味】
斉の景公が政治の(理想の)あり方を孔子に尋ねた。孔子が答えるには、「臣下は君主を君主として(臣下らしく)仕え、君主は臣下を臣下として(君主らしく)扱い、子は父を父として(子どもらしく)仕え、父は子を子として(父らしく)扱うのが、(政治の肝要)です。」と。
景公が答えるには、「本当によいことを言って下さった。誠にもしも、君が君として尊ばれず、臣が臣として扱われず、父が父として尊ばれず、子が子として扱われないならば、たとえ米がそこに貯えてあっても、私がそれを口へ運ぶことができず、(反乱などが起こり立場が危うくなる)に違いない。」と。(顏淵篇)
【原文】
斉景公問政於孔子。孔子対曰、「君君、臣臣、父父、子子。」公曰、「善哉。信如君不君、臣不臣、父不父、子不子、雖有粟、吾得而食諸。」
【書き下し】
斉の景公、政を孔子に問う。孔子対えて曰く、「君 君たり、臣 臣たり、父 父たり、子 子たり。」と。
公曰く、「善きかな。信(まこと)に如し君 君たらず、臣 臣たらず、父 父たらず、子 子たらずんば、粟(ぞく)ありと雖も、吾れ豈に得て諸(こ)れを食らわんや。」と。
【解説】
・どの団体においても、秩序を乱す原因は、各々が自分の役割を果たせていないからであるという指摘。
→「正名(肩書きにふさわしい活躍すること)」は、言われてみれば当たり前だが、実践することは難しい思想である。
・あなたは、自分の役割(両親・子ども、先生・生徒、部長・部員、上司・部下)にふさわしい言動ができていますか?
→それぞれ「らしさ」というのは、人によって変わる部分もあるので、まずはあなたが思う各役割らしさ=理想を考え、それを自分ができているのか考えてみましょう。
⑤之に先んじ、之を労す。
【意味】
子路が政治のやり方を尋ねた。先生がおっしゃるには、「部下に先立って働き、思いやりを示すことだ。」と。子路が述べるには、「ただそれだけですか。」と。孔子がおっしゃるには、「ただこれを根気よく継続すればよい。」と。(子路篇)
【原文】
子路問政。子曰、「先之勞之。」請益、曰、「無倦。」
【書き下し】
子路(しろ) 政(まつりごと)を問う。子曰く、「之に先んじ、之を労す。」と。益さんことを請う。曰く、「倦(う)む無かれ。」と。
【解説】
・人を率いる上で大切なのは、常に自分が率先して動くことだという言葉。
・あなたは、「部下や子ども、部員に言うだけ言って、自分は何もしない」なんてことはないですか?このような人物が信頼を得られることはまずないでしょう。
・他者からの信頼を得たいのなら、まずは自分から動いてから指導・指摘する必要があります。偉そうなだけで口だけな姿勢を他者は案外見ているものですし、見えていなくても分かるものです。
【番外篇】⑥リーダーがろくでもないとメチャクチャ害悪! 苛政は虎よりも猛なり(『礼記』)
【意味】
孔子が泰山の近くを通りかかると、墓で泣いている婦人がいた。孔子は密かにその泣き声を聴き、孔子は子路に婦人へ尋ねさせた。「奥様の泣き声を聴き、かなり悲惨なことに遭ったのでしょうか。」と。
婦人が言うには、「私の義父は昔、虎に殺され、夫も虎に殺され、今回は息子も虎に殺されました。」と。孔子が(婦人に)言うには、「どうしてここを離れないですか。」と。婦人が答えるには、「この地域は重税がないですもの。」と。
孔子は弟子達に向かって言った。「みなの者、よく覚えておきなさい。(重税を課すような)ろくでもない政治は、虎より害悪となるのだ。」と言いました。
【原文】
孔子過泰山側。有婦人哭於墓者而哀。夫子式而聴之、使子路問之曰、「子之哭也、一似重有憂者。」而曰、「然。」昔者吾舅死於虎、吾夫又死焉、今吾子又死焉。夫子曰、「何為不去也。」曰、「無苛政。」夫子曰、「小子識之。苛政猛於虎也。」
【書き下し】
孔子 泰山の側を過ぐ。婦人 墓に哭する者有りて哀しむ。夫子式して之を聴き、子路をして之に問わしめて曰く、「子の哭するや、一に重ねて憂い有る者に似たり。」と。
而(すなわ)ち曰く、「然り。昔者(むかし)吾が舅(しゅうと) 虎に死し、吾が夫又た死し、今吾が子又た死せり。」と。夫子曰く、「何為(なんす)ぞ去らざるや。」と。曰く、「苛政無ければなり。」と。
夫子曰く、「小子之(これ)を識(しる)せ。苛政は虎よりも猛なり。」と。
【解説】
・ろくでもない政治(やリーダー)は、獰猛な人食い虎より猛威を振るって人民に害を与えるという言葉。
・政治はもちろん、上の立場にある人物というのは、様々な裁量を与えられています。それをしっかりとした道徳心に基づいて用いなければ、下の立場にある人物は苦しむことになるでしょう。
・あなたは、生徒や部下、子どもに自慢話をして偉ぶったり、酷い扱いをしたりして、立場による権力を私利私欲のために用いていませんか?
・逆に、自分が下の立場の人によって、そのようなろくでもない人物の害悪は計り知れません。可能な限り速やかに離れましょう。
以上、『論語』の名言を紹介しましたが、お気に入りの言葉を見つかったでしょうか?
もしも他の漢文の名言に興味がある方は、下のページをご覧になってみて下さい💡
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国語の授業で「おすすめの論語を紹介する」っていうのをやったんですけど、そのときめっちゃ助かりました!とってもありがとう!!!