「虎の威を借る狐」の現代語訳・例文を紹介! | ハナシマ先生の教えて!漢文。

「虎の威を借る狐」の現代語訳・例文を紹介!

1、「虎の威を借る狐」(『戦国策』)の原文・書き下し・現代語訳

【原文】
 虎求百獣而食之。得狐。狐曰、「子無敢食我也。天帝使我長百獣。今子食我、是逆天帝命也。

 子以我為不信、吾為子先行。子随我後観。百獣之見我、而敢不走乎。」

 虎以為然。故遂与之行。獣見之皆走。虎不知獣畏己而走也。以為畏狐也。

【書き下し】
 虎 百獣を求めて之を食らう。狐を得たり。狐曰く、「子敢へて我を食らうこと無かれ。天帝 我をして百獣に長たらしむ。今 子 我を食らわば、是れ天帝の命に逆らうなり。

【現代語訳】
 虎が沢山の動物を探して食べていたところ、狐を捕まえた。狐は「君は決して私を食べてはいけない。天帝は私を全ての動物の長とした。今、君が私を食べたら、それは天帝の命令に逆らうことになるのだ。

 子 我を以て信ならずと為さば、吾 子の為に先行せん。子 我が後に随いて観よ。百獣の我を見て、敢へて走らざらんや。」と。

 (もし)君が私の言ったことを信じないのならば、私は君の(疑いを晴らす)ために先に立って進もう。君は私の後ろに従って見てみなさい。全ての動物は私を見ると必ず逃げ出すだろう。」と言った。

 虎以て然りと為す。故に遂に之と行く。獣 之を見て皆走る。虎獣の己を畏れて走るを知らざるなり。以て狐を畏ると為すなり。

 虎はそれをもっともだと思い、狐と(一緒に)歩いた。動物たちは狐と虎を見るとみな逃げた。虎は動物が自分を恐れて逃げたのだと理解できず、狐を恐れているのだと勘違いした。

2、「虎の威を借る狐」の意味・例文

【意味】
自分は権力を持っていないのにも関わらず、他の人の権力を盾にして偉そうにすること。

【例文】
①A君は親が社長であり、いつも威張った態度であり、典型的な虎の威を借る狐である。
②Bさんはクラスのイケてるグループに属して調子に乗っているが、彼女自身は特に優れた所はなく、虎の威を借る狐状態である。
③自分より学歴の低い人をいつも馬鹿にする学歴厨は虎の威を借る狐であり、周りから嫌われやすい。
④イケメン高収入な夫を持つBさんは、いつも偉そうであり、虎の威を借る狐である。

各例文の「虎」が何を指すが分かるのなら、「虎の威を借る狐」の理解は完璧だと思います!
①=社長である親
②グループの他の子
③自分が所属している学校
④イケメン高収入な夫
どれも権威をもっている凄い存在ですね💡現代では、人だけでなく③のような所属先も「虎」になることがあります。

+α「虎の威を借る狐」的なキャラ
・ドラエモンの「スネ夫」
・スパイファミリーの取り巻き2人(エミールとユーイン)
・島耕作シリーズの「今野」

3、【発展】「虎の威を借る狐」の本来の意味は「他人の権力を借りて威張る」ではない?

1で紹介した「虎の威を借る狐」の話は、実は本来は前後にも文章が存在しており、教科書などではその部分を削っています。以下に現代語訳があるので、太字にマーカーのある部分を中心に読んでみて下さい💡

 荊(けい)の宣王(せんおう)が臣下たちに「私は北方の国々が昭奚恤(しょうけいじゅつ)を恐れていると聞いた。(これは)はたして本当なのか。」と尋ねた。臣下たちは答えなかった。江乙(こういつ)が答えて言った。

 「虎が沢山の動物を探して食べていたところ、狐を捕まえました。狐は「君は決して私を食べてはいけない。天帝は私を全ての動物の長とした。今、君が私を食べたら、それは天帝の命令に逆らうことになるのだ。(もし)君が私の言ったことを信じないのならば、私は君のために先に立って進もう。君は私の後ろに従って見てみなさい。全ての動物は私を見ると必ず逃げ出すだろう。」と言いました。虎はそれをもっともだと思い、狐と(一緒に)歩きました。動物たちは狐と虎を見るとみな逃げました。は動物が自分を恐れて逃げたのだと理解できず、狐を恐れているのだと勘違いしました。

 (さて)今、王様の領地は五千里四方で兵士は百万人おりますが、それを全て昭奚恤に任せております。ですから、北方の国々は奚恤を恐れていますが、実のところは王様の兵隊を恐れているのです。このことは、全ての動物が虎を恐れていたのと同じなのです。」と。(『戦国策』楚策)

読んでもらった通り、本来の「虎の威を借る狐」のたとえ話は、王様の宣王が、自分より自分の部下(=昭奚恤)が他国で恐れられているのが不満であった所に、臣下の江乙が「一見、他国が昭奚恤を恐れているように見えるのは真実ではなく、実は宣王の威光を恐れているのです。」とフォローorこびを売るために述べたものです。

さらに具体的に言えば、具体的にここでの虎は「宣王」を指し、狐が「昭奚恤」を指します。

元々は上司をフォローor上司にこびを売るためのたとえ話が、独立して本来とはズレた意味で使用されているのは面白いですね✨前後の文脈を加味すれば、「虎の威を借る狐」は「権力を持つ人へごますりをして評価をあげる行為」といったところでしょうか?

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