漢文の否定形の基礎をマスターしよう!

ポイント

  • 否定形をしっかりと解釈できない=漢文の内容を知ることができないというくらい大切なので、確実に訳せるようになるべし。
  • 否定を表す漢字として、「不(ズ)・弗(ズ)==ない/非(~ニあらズ)=~ではない/無(なシ)・莫(なシ)・亡 (なシ)=~ではない/勿(~スルコトなカレ)・毋( ~スルコト なカレ)=~してはいけない・不可(~ベカラず)」の9種類が挙げられる。
  • また、やや特殊な否定形として「未(いまダ~ず)=まだ~していない・不能(~スルコトあたワず)・不得(~ヲえず)=~できない」が挙げられる。
  • 特に「不得」の「得」は、日本語の感覚で「手に入れる」と解釈すると意味不明になるので、気を付けよう!

こんにちは。本日は、漢文を読んでいく上で非常に大切な「否定形」の基本について学んでいきましょう!

先生こんにちは。否定形って、そんなに大切なんですか?

とても大切です。なぜなら、否定形をしっかりと解釈できない=話の内容を知ることができないといっても過言ではないからです。

確かに、否定していれる文章を通常の文章で読むと、意味不明になりますもんね💦

そうです。さらに、漢文における否定形は、ある程度のバリエーションがあり、日本語とも異なる部分があります。ここでしっかりと抑えておきましょう!

1、 不(ズ)・弗(ズ)/非(~ニあらズ)/無(なシ)・莫(なシ)・亡 (なシ)/勿(~スルコトなカレ)・毋( ~スルコト なカレ)・不可(~ベカラず)

まず、否定を表す漢字として、「不(ズ)・弗(ズ)/非(~ニあらズ)/無(なシ)・莫(なシ)・亡 (なシ)/勿(~スルコトなカレ)・毋( ~スルコト なカレ)・不可(~ベカラず)」の9種類が挙げられます。

「不」「非」みたいななじみのあるものから、「弗」「亡」みたいにあんまり見たことないものもありますね💦

意外と多いですよね。それぞれ覚え方や日本語との関わりをまとめるので、しっかりご覧になって下さい💡

注目

否定形の表現 その1

①不(ズ)=~しないor~ではない

・主に用言(動詞・形容詞・形容動詞)を否定する。体言(名詞・代名詞・数詞)の場合は、「体言+アラズorナラズ」と読む。

・「不在(在らず)」「不安(安からず)」「不運(運あらず)」「不利(利あらず)」など、日本語の熟語としても現役で活躍している。

・書き下す際は、ひらがなにする。

②弗(ズ)=~しないor~ではない

・用法は「不」と同じだが、日本語としてはほぼ使われていない。

・「弗」のコアイメージは、「払いのける」。弗=「弓」+「八」で、「八」から「払いのける」のイメージが連想できる。ここから、「弗」=「動作や状態を払いのける」=「否定する」覚えるべし。

③非(~ニあらズ)=~ではない

・「不・弗」と比べ、体言を否定する。

・「非情(情非ず)」「非行(正しい行いに非ず)」「非道(正しい道に非ず)」など、日本語の熟語としても現役で使われている。

④無(なシ)=~がない。

・基本的に体言を否定するが、たまに用言も否定する。その場合は「=スルコト無シ」と読む。

・「無理(理無し)」「無縁(縁無し)」など、「無」も日本語の熟語として現役で使われている。

⑤莫(なシ)=~がない。

・用法は「無」と同じ。

・「無」と比べると馴染みがないが、「莫大(大なるは莫し)→これ以上大きいものがない=とても大きいor多い」という熟語として現役で用いられている。

⑥亡 (なシ)=~がない。

・用法は「無」と同じ。

・日本語としては用いられていないが、「亡(ほろ)ぶ」のイメージから「無し」の意味を連想するのは比較的容易か。

⑦ 勿(~スルコトなカレ)=~するな。

・用言について禁止する。(まれに「無」と同じように用いる。)

・「勿論(論ずる勿く)」のように「勿」自体は用いられているものの、どちらかというと「禁止」の意味というよりは「否定」のニュアンスが強いので注意。

・「勿」は、元々「様々な旗が風に吹かれているさま」を表した漢字だが、雑多なので目立たずはっきり見えないことから、禁止・否定の意味が定着した。

⑧毋(なカレ)

・「勿」と用法は同じ。日本語としてはほとんど用いられない。

・「毋」は元々「母」から分かれて生まれた文字であり、「母胎は暗い→見えない→無い」から「毋」に禁止・否定の意味が 定着した。

⑨不可(~ベカラず)=~するな。or~できない。

・禁止の意味(=~するな)と不可能の意味(=~できない)がある。

・「初心忘るべからず(初心を忘れてはいけない)」のように、ことわざなどで現在でも用いられる。

・「不可能」の「不可」は不可能の意味(=~できない)。

※漢字の語源やコアイメージは、加納喜光『常用漢字コアイメージ辞典』(中央公論新社、2011年)を参照。

しっかり読みましたけど、改めて見ると色々気付くことがあります。
例えば、 不(ズ)・非(あらズ)・無(なシ)・莫(なシ)・勿(なカレ)は、日本語の熟語として現役だって所は、なるほどって思いました💡
あと、「不可」は熟語やことわざでも用いられているから、親近感が湧きますね!

やっぱり、漢文と日本語の関係って深いですね✨

その通りです。漢文は難しい部分もありますが、日本語の知識と絡めれば割と簡単に理解できたります。

あと、 弗(ズ) ・勿( ~スルコト なカレ) ・毋( ~スルコト なカレ)については、漢字自体の元々のイメージから否定や禁止の意味を連想するのが楽しかったです。

このような文法上、重要な語は、日本語との関係で抑えるか、漢字自体のコアイメージで抑えるかすれば、単純な暗記より楽に定着させることができると思います

ちなみに、「弗」については、「沸」=「気泡がお湯を払いのけてグツグツした状態になる=沸騰する」、「費」=「お金を払いのける=使う」のイメージと合わせて覚えると、日本語の語彙力も上がります。

確かに、「弗」って割と我々が使っている漢字に含まれていて、全て「払いのける」が関係した意味ですね。ビックリしました💡

2、 未(いまダ~ず)・不能(~スルコトあたワず)・不得(~ヲえず)

次に、2語で否定を表す語や、特殊な否定形である「未(いまダ~ず)・不能(~スルコトあたワず)・不得(~ヲえず)」を学びましょう。

注目

否定形の表現 その2

未(いまダ~ず)=まだ~していない。

・未来のことについて否定する表現。いわゆる再読文字。

・「未定(未だ定まらず)」「未完(未だ完からず)」「未熟(未だ熟せず)」のように、日本語の熟語としても現役で使われている。

不能(~スルコトあたワず)=~できない。

・「能」は、「能力(能(よ)く=できる力)」から分かる通り、「できる」という意味。

※「能」単体で用いる際は、「能(あた)ウ」ではなく「能(よ)ク」のように読む。

不得(~ヲえず)=~できない。

・意味は「不能」と同じ。

・ここでの「得」は「手に入れる」ではなく「できる」の意味なので注意。「手に入れる」と「できる」は意味的には近いので、連想して定着させるべし。(例:スマートフォンを手に入れると、世界中の人間と連絡を取ることができる

「未」は再読文字の所で勉強しましたが、「不能」「不得」ははじめて学びます。「能」「得」に「できる」の意味があることをしっかりと覚えておきます!

特に「得」は、日本語の感覚で「手に入れる」と解釈すると意味不明になるので、気を付けましょう!

3、練習問題

否定形の基本をマスターするために、練習問題を解いていきましょう。
次の漢文を書き下しした上で現代語訳しましょう。

注釈

①滑稽…口が達者である 軌法…手本

②幽王…人名。

③史…史官。

⑤事…自分の実力に合った仕事 仞…引き受ける 名…自分の評判に合った地位。

⑥自為用(自ら用を為す)…将軍のために働く兵士。  為己用(己の用を為す)…自身のために働く兵士。

⑦身治…君主の振る舞いが正しい。

※出典は①=『史記』、②③④=『呂氏春秋』、⑤⑥⑦=『淮南子』。

4、練習問題 解答

①夫儒者滑稽而不可軌法。(夫れ儒者は、滑稽にして軌法とすべからず。)

→そもそも儒者は、口が達者(なだけであり)、手本としてはいけない。

②幽王撃鼓、諸侯兵不至。(幽王 鼓を撃つも、諸侯の兵至らず。)

→幽王が太鼓を叩いたが、諸侯の兵は来なかった。

③吾非不得為史也。(吾 史と為るを得ざるに非ざるなり。)

→私は、史官になれなかったわけではない。

④聖人深慮天下、莫貴於生。( 聖人深く天下を慮るに、生より貴きことは莫し。 )

→聖人は深く天下について考え、「生命より価値があるものはない」(と結論づけた)。

⑤非其事者勿仞也。非其名者勿就也。( 其の事に非ざるは仞すること勿かれ。其の名に非ざるは就く勿かれ。 )

→自分の実力に合った仕事でないならば、引き受けてはいけない。自分の評判に合った地位でなければ、就任してはいけない。

⑥善用兵者、用其自為用也。不能用兵者、用其為己用也。( 善く兵を用いる者は、其の自ら用を為すを用うるなり。兵を用うること能わざる者は、其の己の用を為すを用うるなり。 )

→うまく兵を用いる者は、率いる者自身のために働く兵士を用いる。兵士を(うまく)用いることができない者は、兵士自身のために働(き、率いる者のためには働かない)者を用いる。

⑦臣未嘗聞身治而国乱者也。未嘗聞身乱而国治者也。( ⑥臣 未だ嘗て身治まりて国乱るる者を聞かざるなり。未だ嘗て身乱れて国治むる者聞かざるなり。 )

→私は、君主の振るまいが正しくて国が乱れたケースを聞いたことがなく、(逆に)君主の振るまいが正しくなくて国がうまく治まったケースも聞いたことがない。

以上が解答となりますが、いかがだったでしょうか?

かなり難しかったです。今回学んだことだけじゃなくて、注釈を活かしたり、うまく補足したりと大変でした💦割と分からない所も多かったです💦

本来は文脈を踏まえて現代語訳するものなので、これだけでは分からないくても仕方がない部分はあります。今回学んだ部分がうまく訳せていればひとまずOKです💡

なんか、③は短いけど「非」+「不得」の合わせ技で一瞬頭がこんがらがりました💦
でも、読み順的に「不得(できない)」+「非(ではない)」なので、「~できない訳ではない」と訳せました!

素晴らしい!「非」+「不得」は二重否定という表現です。近々取り上げますが、フライングして問題に出してみました笑

意地悪ですが、今回は分かっていたので許します!笑

また、⑤⑥⑦のような対句(ついく)をうまく訳せるかは、漢文では重要です。
さらに、⑦の「臣」=「わたし」は呼称の部分で学びましたね。

漢詩の部分で対句は勉強したことありますが、こっちのほうはより同じ文字を使っていてますね💡

良い所に気がつきましたね。その通りです。普通の漢文のほうが、対と明らかに分かる書きぶりであることが多いです。こういう形はよく出てくるので、今のうちに慣れておきましょう💡

今回も難しかったですが、否定形を含め、漢文の読解力が上がった気がします。ありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です