漢文の「百姓(ひゃくせい)」「千乗(せんじょう)」「万乗(ばんじょう)」を解説 漢文と数字

ポイント

  • 「百姓(ひゃくせい)」=「庶民」の意味。
  • 元々「百姓」は、「限られた姓(を持ったエリート層)」というニュアンスだったが、後に多くの民衆が姓を得るようになり、「庶民」という意味に変わって定着した。
  • 「千乗(せんじょう)」=「諸侯」「弱国」、「万乗(ばんじょう)」=「天子」「強国」の意味。
  • 「千乗」は、「千乗(=千台の戦車隊)を有する国(有千乗国)」の略語であり、「千もの乗=部隊を出せるほどの国力を持った国」→「諸侯」「弱国」を表すようになった。
  • 「万乗」は、「万乗(=万台の戦車隊)を有する国(有万乗国)」の略語であり、「万もの乗=部隊を出せるほどの国力を持った国」→「天子」「強国」を表すようになった。
  • 「「吾日に吾が身を三省す(1日に何度も自分の行ったことを反省すること)」など、「三」に「多い」「何度も」の意味が含まれる場合もあり。

1、漢文で注意すべき頻出単語 百姓(ひゃくせい)

本日は、漢文読解で注意すべき頻出単語のうち、数字を含むものについて学びましょう💡

具体的には、「百姓」「千乗」「万乗」が対象となります。まずは「百姓(ひゃくせい)」を取り上げましょう!

先生!百姓の意味、私知ってます!「民衆」って意味ですよね?「農民」じゃない点に注意しておけば大丈夫って学びました。

さすがナナさん、重要な所はきっちりと抑えていますね。では、なぜ「百姓」=「民衆」の意味なのか、分かりますか?

分かりません…💦

せっかくなので、そこまで知っておきましょう。「百姓」とは、元々「百という限られた姓」という意味です。

???

まず、周の時代までは、限られた官僚(とその一族)のみにしか姓は与えられていませんでした。従って、元々の「百姓」という言葉は、「限られた人々にしか与えられていないもの」というニュアンスがありました

つまり、「百姓」の「百」って、元々「少ない」って意味なんですか?

そうです💡しかし、戦国時代以降になると、多くの人々が姓を持つようになり、姓を持つこと時代が当たり前になってきました。そこから「百姓」=「民衆」と変化していきました。

なるほど…「百姓」にはそんな意味の変遷があったんですね!

ちなみに、日本でも江戸時代までは、百姓=民衆という意味でしたが、江戸時代以降、百姓=農民という意味に変化し、今まで受け継がれています💡

そんな経緯で「百姓=ひゃくしょう」になったんですね。1つの言葉にもドラマがあって面白いなぁ…

2、 漢文で注意すべき頻出単語 千乗・万乗

次に千乗(せんじょう)・万乗(ばんじょう)について学びましょう!

これも知ってます!千乗=諸侯、万乗=天子ですよね?

素晴らしい!よく勉強してますね✨

でも、なんで千乗=諸侯、万乗=天子になるのかは分かりません…💦

大丈夫ですよ。これから一緒に学びましょう!

はい!

まず「乗」とは、戦車を含む兵士の部隊を指します。時代にもよりますが、一乗=数十人~百人であり、御者(戦車)を操縦する人と、戦車の上に乗る人、戦車の左右に付きそう歩兵、補給部隊から構成されます。

ちなみに、古代中国の戦車は下みたいな感じです💡

古代中国の戦車

古代中国 戦車

「戦車」っていうと、なんか鉄の塊のイメージがありますが、めっちゃ原始的ですね笑
キングダムでもこんな感じだったかな?

確かにキングダムでも出てきましたね!序盤の魏との戦いで登場しました。

話を本題に戻しましょう。
そして「諸侯」としての「千乗」とは、「千乗を有する国(有千乗国)」の略語であり、「千もの乗=部隊を出せるほどの国力を持った国」の意味です

一乗=数十人~百人なら、仮に一乗が50人として、千乗は5万人ってことですね?💡5万人の兵士や5万台の戦車を用意できるんなら、それくらい豊かな国なんだろうなぁ…

そうですね💡そこから千乗=諸侯(地方で土地を持って支配している人)の意味に定着しました。

じゃあ、万乗はそれより単位が1つ違うくらい多いから、諸侯より上の身分ってことで、万乗=天子という意味になったのでは?

鋭いですね。その通りです!
とはいっても、春秋時代や戦国時代などは、天子=周王朝に万乗を率いる程の国力がないことから、諸侯への抑えが効かなくなり荒れてしまったので、実際そうであったとは限りません。

また、「千」「万」も厳密な数字というよりは、ざっくりと「それくらい多い」くらいの認識で大丈夫です。

今まで千乗=諸侯、万乗=天子と機械的に覚えていたけど、上のような理由で意味が定着したんですね💡

ちなみに、千乗・万乗が並んで使用される場合、「千乗」=「弱国」、「万乗」=「強国」と解釈されることがあるので、一応知っておいて下さい。

なんでですか?💦

さっきも言ったように、特に戦国時代において、万乗=天子とするには天子が弱すぎたことから、天子のことではなく単に「強国」を表すようになりました。それに対し、「千乗」は単位が1つ下がるので「弱国」と表されるようになりました。

なるほど…実態に合わせて意味が変わってしまうことがあるんですね!💡

3、「三」=「多い」と解釈されることもある!

これまで「百姓」「千乗」「万乗」について解説しましたが、「百」「千」「万」がそれぞれ「多い」の意味を持っていました。「百」「千」「万」は、数字のイメージから分かりやすいと思います。しかし、漢文においては「三」でも「多い」という意味が含まれるケースもあります。

「三」に多いってイメージはないなぁ…💦

「三」=「多い」は、現代日本だと中々思い浮かびにくいと思うので、ここで抑えておきましょう!

例えば、「吾日に吾が身を三省す」「三人言いて虎を為す」「三年鳴かず飛ばず」という漢文由来のことわざの「三」は、全て「多い」という意味です

それぞれどんな意味なんですか?

せっかくなので、今日はナナさん自身で調べてみましょう!ググって大丈夫です。

はーい💡えっと…
「吾日に吾が身を三省す」→1日に何度も自分の行ったことを反省すること。
「三人言いて虎を為す」→事実ではない事柄でも、多くの人が言えば真実になってしまうこと。
「三年鳴かず飛ばず」→何年も何もしない、もしくは結果が出せずに過ごすこと。
です!

「三」が「何度も」「多くの」「何年も」のように、具体的な数字ではなく「多い」と解釈されています!

それぞれ、辞書によっては「三」の数字を重視して解釈するものもありますが、「多い」と解釈されることもあります。この現象については、知っておいて損はないと思います💡

なお、現代日本語だと、「三日坊主」「三日天下」のように、「三」=「少ない」というケースもあることには注意です。

同じ「三」なのに、真逆の意味になっちゃうこともあるんですね。ややこしい…💦

確かにややこしいですが、漢文における「三」は、8割方「多い」と解釈して大丈夫ですよ!

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