①ものorこと(動詞の前に置き、それを名詞化する)
②~される。(受身)
→「為A為B(AノBスル所ト為ル)」の形もあり。この場合は「所(る)」ではなく「所(ところ)」と読むので注意!
③(「所以(ゆえん)」で)理由・根拠。
④(「所謂(いわゆる)」で)いわゆる・世間で言う所の。
(⑤場所。)
例文
①富と貴 是れ人の欲する所なり。(『論語』)
→裕福さと高貴さは、人間が欲しがるものである。
②嗜慾 外に在れば、則ち明蔽(おお)わる。(『淮南子』)
→欲望が外に出ていると、正しい心が覆い隠されてしまう。
②梁の父即ち楚将の項燕、秦将の王翦の戮する所と為る者なり。(『史記』)
→(項)梁の父は楚の将軍の項燕であったが、秦の将軍の王翦によって殺されてしまった人である。
③上 徳行を離るれば、民 賞罰を軽んじ、国を為(おさ)むる所以を失う。(『晏子春秋』)
→お上(=政府)が徳行を行わなければ、民衆は賞罰を軽視し、国を治める理由を失ってしまう。
④彼は所謂 豪傑の士なり。(『孟子』)
→彼はいわゆる「豪傑の士」である。
①は「所得」「所見」などの「所」と同じ用法です。「所得」「所有」の「所」は、
「得る所」→○「得たもの(特にお金)」
→×「得た場所」
「有する所」→○「有するもの」
→×「有した場所」
から分かるように、「場所」の意味ではありません。後ろの動詞を名詞化するという役割はありますが、意味はほとんどありません。
②は現代語にはない用法なので、特に注意です!
⑤は現代語の「場所」の「所」と同じ用法ですが、漢文においてこの用法はごく少数であり、①②③④のほうが圧倒的によく用いられます。注意しましょう!
①と②は直後の用言の送り仮名で判別しましょう。
①の場合は連体形(~スルor~セザルなど)、②の場合は未然形(サorハなど)の接続となります。