ポイント
- 熟語は細かく分けると、25種類はある。
- ただし、25種類はあくまで目安。品詞の要素まで踏まえて分類しはじめると、色々とややこしく、厳密に分けることは不可能。
- ㉔=当て字(例:蒙古・旦那・奈落・台風)と㉕故事成語(例:矛盾・逆鱗・折檻・杜撰)は初見殺し。漢字のみから熟語の意味を類推することができない点で特殊。
1、熟語の種類は25コ?
こんにちは。前回の授業では、熟語が5種類であることを勉強したけど、今日は上級篇?なんですね💡
熟語をそれぞれバラバラにして理解していくのは、難しいけど少し面白かったですよ。
本日は、より熟語の分類について学んでいきましょう。
実は、熟語を細かく分けると、25種類はあります。
25!?そんなに多いんですか?なんでそんなに多いんですか?💦
前回紹介した5種類は、「熟語を大まかに分けたら、5種類に分けることができる」というものであり、品詞や特殊な例については考慮していません。
細かく見てみると、以下のようになります!
熟語の25種類
名詞+名詞のパターン
①「A≒B」型(両者が何らかの点で共通するものを重ねたもの)
(例:父母/どちらも「親」 山河/どちらも「自然」)
②「A⇔B」型(両者が対立の関係にあるもの)
(例:左右 上下)
③「A=B型」(両者が同義の関係にあるもの)
(例:災禍/災+禍)
④「AのB型」(AがBを修飾しているもの)
(例:城門/城の門)
名詞+動詞のパターン
⑤「AがBする」型(例:日没/日が没する)
⑥「AのようにBする」「AでもってBする」「AにおいてBする」型(例:蛇行/蛇のように移動する 紙包/紙でもって包む 国産/国において産す )
動詞+動詞のパターン
⑦「AしてBする」型(例:撃破/撃って破る 教育/教えて育てる)
⑧「AとB」or「AもしくはB」型(例:殺傷/殺すor傷つける 見聞/見るor聞く)
⑨「A=B」型(例:傷害/傷(そこ)なう+害(そこな)う)
⑩「A⇔B」型(例:取捨・進退)
⑪「Aである状態でBする」型(例:立飲/立ちながら飲む)
動詞+名詞のパターン
⑫「BをAする」型(例:読書/書を読む)
⑬「Aしている状態のB」型(例:流水/流れている水)
副詞or形容動詞+動詞のパターン
⑭「Aである状態・程度でBする」型(例:晩成/晩く成る)
形容詞が入っているパターン
⑮「A=B」型(例:曖昧/曖(くら)い+昧(くら)い)
⑯「A⇔B」型(例:貧富/貧しいか富んでいるか)
⑰「Aである状態・程度のB」型(例:大国/大きい国)
⑱「Aである程度のBという状態」型(例:最高/最も高い 酷暑/酷く暑い)
やや特殊パターン
⑲「A=否定(不・未・非…)・有無」型(例:不安/安んじない 有害/害が有る)
⑳「然」「如」「的」などの接尾語や「所」などの接頭語が付いており、それらに意味がほとんど無いもの。
(例:突然・突如・知的・所得)
㉑二字重ねる型(例:堂々・人々・我々)
㉒受身形が熟語の形で定着したもの(例:被告・被害)
㉓二字以上を省略したもの(例:高校/高等学校の略・入試/入学試験の略)
特殊(初見殺し)パターン
㉔外来語を漢字表記する際、字義を軽視(時に無視)して音によって固有名詞となったもの
(例:蒙古(モンゴル)→モンゴル語 旦那(ダーナ)・奈落(ナラカ)→サンスクリット語)
㉕故事から生まれたもの(例:矛盾・逆鱗・折檻)
多すぎて開いた口が塞がりません…というか、なんだか笑えてきました笑
もちろん、これは目安です。品詞の要素まで踏まえて分類しはじめると、色々とややこしく、厳密に分けることは不可能です。
例えば、動詞+動詞の⑨「A=B」型について、「障害」を例として挙げていますが、「損なうことと害(そこな)うこと」、つまり③名詞+名詞で 「A=B」型 と解釈できないこともありません。
なるほど…先生が言う通り、品詞についてはざっくり考えてみます。
今23種類を見てますけど、品詞を無視すると、③⑨⑮は全部「A=B」型だし、②⑩⑯も「A⇔B」型で一緒ですね💡
あと、⑲⑳㉑㉒㉓は単純で一発で分かります✨
よく分析できていますね。おっしゃる通り、細かく分けても、全てがそんなに難しい訳ではありません。
2、注意すべき熟語のパターン ⑥名詞が副詞的に修飾する
分類の中で特に気を付けて欲しいのは、⑥と㉒㉓のパターンです。
私も⑥は少し引っかかってました。⑥「AのようにBする」「AでもってBする」「AにおいてBする」型って、それぞれ別物なんだから、一つずつ分けたほうが良くないですか?💦
よい気付きですよ!確かに、3つに分けてもよいです。一方⑥は、「名詞が副詞的な修飾語となる」という点で共通しているので、それを重視して1つの種類にカウントしています。
具体的には、「Aが状態・材料・手段・場所などを示して、Bを修飾する熟語」が⑥となります。
なるほど…確かに「蛇行/蛇のように移動する」「紙包/紙でもって包む」「力説/力でもって説く」「国産/国において産出する」も、全てA=名詞でB=動詞を修飾してますね。
修飾語といえば、副詞や形容詞が思い浮かぶので、名詞が修飾語になるって、何だか不思議に感じます💡
そうですね。⑥はその点でやや特殊ですね。でもこれが面白いんですよ!!詳しく説明すると…
先生!先に㉔㉕の解説を聴きたいです!笑
3、注意すべき熟語のパターン ㉔外来語
はい笑
「㉔外来語を漢字表記する際、字義を軽視(時に無視)して音によって固有名詞となったもの」は、いわゆる「当て字」です。漢字の音だけを借りて、意味を軽視or無視してできた言葉です。(たまに意味も関係するものもあります。)
例えば、「モンゴル」を表す「蒙古(もうこ)」という熟語は、昔のモンゴル民族が自分たちのことを表現していた言葉を、漢字で表したものです。
ちなみに「蒙」=「愚か」「植物」「(恩を)受ける」「物怖じせず進む」、「古」=「歴史がある」「古くさい」という意味ですが、「蒙古」がこれらの意味を含んでいるのかどうか、含んでいるのならどの意味なのかは不明です。
ちなみに、現代において、「蒙古=「愚かで古くさい」の意味で蔑称(=差別的な呼び名)だ!」として活動している方々がいらっしゃるみたいですが、事実かどうかは分かりませんね。
蒙古=差別的表現なら、蒙古タンメンはめっちゃ批判されませんか?笑💦
実際されるかもしれませんね。まぁ蒙古タンメンに差別的な意図はないとは思いますが、少なくともモンゴルの方々は使って欲しくないようです。
えっ!?本当ですか💦?
歴史的に見ると、そこまで「蒙古」に差別的な意識はないと思うんですけどね?このたりは、日を改めて解説しましょうか。
その他、㉔の例として、「旦那(だんな)」「奈落(ならく)」が挙げられます。
共にサンスクリット語(古代インドの言葉)が由来で、仏教が中国へ伝わる過程で定着し、日本にも伝わったとされています。
旦那と奈落って元々サンスクリット語なんですか!?
そうですよ。ちなみに、旦那は「ダーナ(お布施or施す者)」、奈落は「ナラカ(仏教における地獄)」の音訳です。
また、旦那の「旦」は「はじめ」、「那」は「なんぞ(疑問の助字)」なので、「夫」という意味とは全く関係ありません。
確かに、旦那をバラバラにして意味を考えても、夫になりませんね。これは完全に初見殺しですね…笑 知らないと分からない💦
でも、今だと旦那は「夫」を表すのに、元々「 お布施or施す者 」という意味だったんですよね?なんでこんなに違うんですか?
それは、昔の夫婦関係は、「夫が稼ぎ、妻が家事を行う」のように、役割分担されていたからです。稼ぐ者→夫のように意味が変化して定着しました。
なんか…古くさくないですか?今だと働いて稼ぐ女性も多いから、時代遅れな気がします。
そうですね。これを知っている一部の方は、「旦那は差別用語だ!」って騒いでますね。いわゆるジェンダー的視点というやつです。
確かに!あんまり使わないほうがよいのかな?
熟語と差別については、別の機会に話しましょうか。とにかくここでは、「外国語を漢字で表した熟語」が存在していることを抑えておきましょう!
4、注意すべき熟語のパターン ㉕故事成語
初見殺しの1つのパターンが(故事)成語です。成語も漢字だけから意味を類推してもできない熟語となっており、その点で非常に特殊です。
成語って、矛盾とかですよね?学校で読んだことありますよ。最強の矛と最強の盾を戦わせたらどうなるのか!?みたいな話ですよね?
そうです。我々はこの「矛盾」という言葉を「つじつまが合わない」という意味で用いていますが、「矛盾」という漢字のみからは分かりません。
確かに、「矛盾」は「矛と盾」だから、どう頑張っても 「つじつまが合わない」 にはなりませんね。
成語の意味は、故事=エピソードに基づいて成立した特殊な熟語なので、漢字と意味の間には大きなズレがあります。
これも知らないと分からないなぁ…でも、普段私たちが使っている熟語の中に、エピドードがぎゅっと詰まってるって考えると、面白いですね✨
5、練習問題を解いてみよう!
最後に、熟語の分類問題を解いてみて、熟語力を鍛えましょう!
Q1:以下の熟語を構造的に解釈し、①~⑥のどれかに分類してください。
(1つの番号につき、1つの熟語が当てはまります)
利害→ 男女→
火傷→ 牛乳→
油脂→ 全壊→
Q2:以下の熟語を構造的に解釈し、⑦~⑭のどれかに分類してください。
(1つの番号につき、1つの熟語が当てはまります)
焼死→ 租借→
往来→ 頻出→
飲食→ 座視→
投球→ 行雲→
Q3:以下の熟語を構造的に解釈し、⑭~㉕のどれかに分類してください。
(1つの番号につき、1つの熟語が当てはまります)
教免→ 被疑→
急激→ 新旧→
杜撰(ずさん)→ 台風→
鬱々→ 漫然→
優秀→ 非常→
美女→
Q1
利害→②(利益と損害) 男女→①(男と女)
火傷→⑥(火でもって傷付いてしまう) 牛乳→④(牛の乳)
油脂→③(どちらも「あぶら」の意味) 全壊→⑤(全てが壊れる)
※「全壊」は「全て壊れる」=⑥で考えることもできる。
Q2
焼死→⑦(焼けてから死ぬ) 租借→⑨(どちらも「かりる」の意味)
往来→⑩(往=行く。行く&来る) 頻出→⑭(頻(しばしば)出(題)される)
飲食→⑧(飲んだり食べたり) 座視→⑪(座ったまま視ているだけ)
投球→⑫(球を投げる) 行雲→⑬(移動している雲)
※焼死は⑥(焼けたことが原因で死ぬ)のような解釈も可能。
Q3
教免→⑱(教育免許の省略)
被疑→⑱(疑わる 現在、「被疑者」のように罪を犯したと判断される人物を称する際に用いられる)
急激→⑱(急に激しくなっている)
新旧→⑯(新しいか旧(ふる)いか)
杜撰→㉕(「杜」黙という人物の作詩(=「撰」)スタイルがいい加減だったことから生まれた)
台風→㉔(英語のTyphoonから生まれた当て字)
鬱々→㉑
漫然→⑳
優秀→⑮(「優」「秀」ともに「優れている」という意味)
非常→⑲
美女→⑰(美しい女)
※「激」は「激しくなる(動詞)」で捉えてもよいか。
いかがだったでしょうか?
だいたいできましたが、杜撰と台風は分かりませんでした。やっぱり初見殺し笑
その2つは知らないと分からないので大丈夫です。これを機会に知っておきましょう!今日もお疲れ様でした!