漢文における良い君主(リーダー)と臣下(部下)とは?

ポイント

  • 「漢文における「理想の君主(リーダー)」とは、①「私利私欲に走らず、民衆のために政治を行う」、②「有能な人材を見極めて大切にする」、③「臣下になめられず、しっかりコントロールできる」人物のことを指す。
  • 漢文における理想の臣下としては、①「私利私欲に走らず謙虚であり、国家や君主に忠実であること」と②「優れた道徳・賢さで君主を導くこと」の2つが挙げられる。
  • 「漢文における「理想の君主(リーダー)・臣下(部下)」とは、現代日本でも通用する内容であり、学びになりうる。

1、漢文と現代日本の理想のリーダーは似ている?

こんにちは。本日は、漢文でよく論じられたり登場したりする「理想の君主(リーダー)」と「理想の臣下(部下)」について学びましょう💡

先生こんにちは。いわゆるリーダー論・部下論ってやつですね。やっぱり、今と違って、漢文のやつって、独特の内容だったりするんですか?

全然そんなことないですよ!実は、中国の理想のリーダー像・部下像は、そのまま日本の理想にも当てはまる部分があります💡

マオさんは、「中国古典に学ぶリーダー論」みたいな本を本屋さんで見たことないですか?

ないです💦

まぁこういった類いの本は、ビジネス書コーナーに並べてあるので、あんまり見る機会ないかもですね💦

私は小説と漫画と雑誌のコーナーしか見ません!笑

中国古典からリーダー論を学ぼう!みたいな書籍は、定期的に出版されるくらいには人気です。特に、30歳以降の部下を持つ世代の社会人に重宝されているのでしょう💡

なるほど…だったら、漢文読解のためだけじゃなくって、実践的にも効果がありそうですね✨

そうですね✨今後生きる上で、心に留めておいてよい内容でもあるので、その意識も持ちつつ、話を聴いてみましょう!

2、理想の君主その①= 私利私欲に走らず、民衆のために政治を行う

漢文における理想の君主その①は、「私利私欲に走らず、民衆のために政治を行う」ということです。

まぁ、これは何となく分かりますね。自分の高い立場を利用して、好き放題しているリーダーなんて、嫌われて当然ですし笑

「民衆のための政治」ってのも理解はできるんですが、具体的にはどんな政治ですか?

そうですね。具体的には経済を発展させたり、税金や労役を軽くしたり、様々な脅威から国民を守ったりする政治を指しますね。

なるほど…確かに、どれも民衆が暮らしやすくなるような政策ですね💡

このようなリーダー(名君)として、趙匡胤(ちょうきょういん)が挙げられますね。特に彼は、質素倹約に努めたエピソードが有名です。

趙匡胤さんってどんな人だったんですか?

彼は、北宋という王朝を建国した皇帝ですが、皇帝になった後も質素に生きました。例えば、趙匡胤は着古して色あせた服を使っていましたし、自分の娘が派手でキレイな服を着ていたら、質素な服を着るよう注意しました。

すごい…皇帝とかって、めちゃくちゃ贅沢しているイメージしかなかったので意外ですし、素直に凄いなと思います✨

皇帝の権力は絶大なので、贅沢しようとすればいくらでもできるんですけどね💦実際、たいていの皇帝は、贅沢しまくっています笑
だからこそ、趙匡胤は凄いですし、「名君」といって良いと思います💡

あと、荒れた中華を統一すること自体、民衆の安定した生活に繋がるので、その点でも名君ポイント高いです✨

名君ポイントって笑。でも、言われてみればそうですね。統一王朝がないと、その分戦争が絶えないイメージがあるので💦

3、理想の君主その②= 有能な人材を見極めて大切にする

次に、理想の君主その②とは、「有能な人材を見極めて大切にする」ことです。

組織のトップなら、必須級の能力だと思います。リーダーだけが有能でも、中々国というのは良くならない気がします💦

おっしゃる通りです。特に国という大きな組織を運営する上では、いくら有能な人材or部下がいても、余るということはないでしょう。それくらい必要です。

また、その人が有能かどうか見極める能力も必要になってきます。

昔の中国のリーダーは、どうやって優秀さを見極めたんですか?

だいたいは、世間の評判や、優秀な人物からの推薦ですね💡中国における理想の妻とは?「賢さ」と「忠節」の樊姫のエピソードでも出てきましたが、それなりの地位にいる臣下は、優秀な人材を推薦し、国に尽くすというのが推奨されます。それがきっかけとなります。

「類は友を呼ぶ」ってやつですね💡優秀な人材同士のネットワークみたいなものがあったんですね。

おっしゃる通りです。
また、「君主におべっかを使わず、しっかりと注意する」ことも、優秀な臣下の基準になることが多いです。そして、「正しい注意をする臣下を大切にし、その人のしっかりと聴く」ことが「有能な人材を見極めて大切にする」ことになり、ひいては優秀なリーダーの基準になります。

部下がリーダーをヨイショしかしない「裸の王様」状態になっちゃいけないってことですね✨そのためには、聴きたくないアドバイスも、逆ギレしたりせず、しっかり聴く必要があるってことですね💡

やっぱり、「良薬は口に苦し」というように、正しいことというのは、中々聴いたり実行したりするのが難しいです。有能なリーダーは、その難しいことを実践するためにサポートしてくれる人材を大切にするということです。

私も「甘い物食べ過ぎない方が良いよ」とか「もっと勉強したほうが良いよ」って両親に言われますけど、正しいと分かっていながら中々できないですし、親切で言ってくれたのに怒っちゃうこともあるから、気を付けなきゃ💦

分かっちゃいるんですけど、中々できないですよね💦

あと、逆にリーダーに気に入られようと、悪い所があっても言わず、褒めるばっかりの臣下は、遠ざけた方がよいってことですね✨

そうですね💡「巧言令色鮮し仁」というやつです。

「有能な人材を見極めて大切にする」というか、「正しい注意をする臣下を大切にし、その人のしっかりと聴く」といえば、李世民=唐の太宗が思い浮かびます💡

彼は、部下からの厳しいアドバイスも積極的に聞き入れ、言ってくれた部下を褒めてたり、感謝の言葉を伝えていました。また、アドバイスを聴くときは、できる限り優しい顔つきで聴くよう努めていました、
もちろん、優秀な人材を沢山登用し、仕事を任せもしました。また、自身は倹約に努めました。

凄すぎる笑。まさしく理想のリーダーですね✨

4、理想の君主その③= 臣下になめられず、しっかりコントロールできる

最後に、理想の君主その③は、「臣下になめられず、しっかりコントロールする」ことです。

これはその②と関わりが深いですね💡
というか、「なめられる」って笑

部下に舐められないことは大切ですよ!舐められると、部下が好き勝手やったり、君主の言うこと聴かなくなりますからね。政治がうまくいかなくなる原因になります。

これは、どんな組織のリーダーにとっても大切です。リーダーはリーダーらしく名実共にトップだからこそ、組織は健全に機能します💡

あー少し分かるかも…中学校の時の先生が、やんちゃな生徒にしっかり注意しなかったから、エスカレートしてまともに授業が出来ていなかった時があります💡

それは、明らかに先生というリーダーが、生徒に舐められていますね笑。

じゃあ、どうすれば部下に舐められないんですか?

色々な方法があるとは思いますが、やはり「自身が優秀であること」「好き勝手やっている部下は厳しく罰するor解雇する」ことが大切だと思います💡

リーダー自身が優秀ならば、それだけで部下は気が引き締まりますし、罰則や解雇もありえると思わせていれば、軽々しい行動をしようとは思わないはずです。

逆にそういうのができていないと、魯の哀公みたいになっちゃうんですね💦

よく覚えていますね💡おっしゃる通りです。哀公は、国のトップでありながら、部下の季氏をうまくコントロールできず、国外追放されています💦

5、理想の臣下(部下)① 私利私欲に走らず、謙虚で忠実であること

理想の臣下の条件その①として、「私利私欲に走らず謙虚であり、国家や君主に忠実であること」が挙げられます。

これは、君主の理想とほぼ一緒ですね💡

そうですね。君主も臣下も、富や権力を持っているという点では同一なので、それに振り回され、自分勝手に振る舞ったり、調子に乗ったりしてしまう人は多いです💦

でもそれは、理想の在り方ではないってことですよね?

その通りです。また、贅沢するだけならまだましですが、臣下の場合は反乱を起こしたり、他国にそそのかされて裏切ったりすることがあります。

そういう事を行わず、自分の国のために尽くす臣下こそが、理想だとされます💡

なるほど…確かに、臣下は君主と違って裏切る可能性がありますね。

例えば、どんな人が挙げられるんですか?

「私利私欲に走らずに謙虚」という点では、晏子(あんし)が挙げられます💡

晏子は斉の宰相(ナンバー2)として国に長い間尽くし、非常に功績がありました。しかし、必要以上の土地や褒賞を受け取らず、謙虚な態度をとり続けました。また、非常に質素で、30年以上同じ服を着ていたという逸話もあります。

国のナンバー2で仕事ができるんなら、威張ったり贅沢しても許されるのに…凄すぎます💦

中々できることではないですね。だからこそ「理想」として漢文の中でしばしば語られるのだと思います✨

なお、この理想とは逆の臣下であった人物として、郭開(かくかい)という人が挙げられます。

郭開って人はどのような人なんですか?

郭開は、戦国時代の趙に仕えていた宰相ですが、私利私欲に走り、また敵国の秦から賄賂をもらい、李牧(りぼく)や司馬尚(しばしょう)といった有能な人材を謀反人に仕立て上げました。

晏子とは真逆ですね💦ていゆか、李牧ってあのキングダムの李牧ですか?

そうです。確か郭開も、キングダムに出てきていたような…

結局、趙が秦によって滅ぼされた後、郭開は売国奴として処刑されます。

自業自得だと思いますが、それをけしかけた側が処刑するのもなんかすごいですね💦

ちなみに、郭開のような臣下を「佞臣(ねいしん)」「奸臣(かんしん)」と表現し、忠臣の対義語として用いられることがあります。

さらに、郭開のような臣下として、趙高(ちょうこう)・黄誥(こうこう)などが挙げられます。気になる場合、調べてみましょう。彼らも中々ひどいです笑

5、理想の臣下(部下)②優れた道徳・賢さで君主を導くこと

理想の臣下その②として、「優れた道徳・賢さで君主を導くこと」が挙げられます。

これは第1のやつとセットみたいな所はありますね💡

そうですね。①を満たしている人は、だいたい②も満たしたりしています。例えばさっき挙げた晏子はもちろん、管仲(かんちゅう)・孫叔敖(そんしゅくごう)・伍子胥(ごししょ)など、有名な臣下は、だいたいその道徳か賢さ(もしくは両方)でうまく君主をサポートしました。

具体的にはどのようなことをやったんですか?

そのあたりはあんまり気にせず、ざっくり「凄い人」くらいの認識で良いです。
漢文においては、彼らのような過去の有能が臣下の名前が手本として挙がるくらいで、彼らの細かい政策自体が語られることほぼありません。

ただし、どのような人物が理想なのか、という点は知っておきましょう。それが内容読解のヒントになることがあります。

はーい💡漢文読むのに関係なくても、時間があったら知りたいなぁ…

どの人も面白いエピソードがあって魅力的ですよ!いつか紹介しますね✨

ちなみに『三国志』でいったら、荀彧(じゅんいく)、諸葛亮(しょかつりょう)、張昭(ちょうしょう)などが挙げられます💡

三国志はよく知りませんが、諸葛亮は知ってます。なんか凄い人なんですよね?

そうですね。諸葛亮も「私利私欲に走らず謙虚であり、国家や君主に忠実であること」と「優れた道徳・賢さで君主を導くこと」という2つの条件を満たしています。

あと荀彧は、自分の知っている優れた人材を推薦するという点でも「理想の君主」と言うことができます。この人に推薦された人は多いですが、その多くが活躍しました✨

荀彧さんすごいですね。優秀な人材を紹介しちゃったら、自分の立場が無くなってしまう可能性もあるのに💦本当に君主や国のことを思っていたんですね✨

漢文では、晏子・諸葛亮・荀彧のような臣下を理想とし、郭開のような臣下を下劣としています。理想の君主像と合わせて覚えておきましょう!

理想の君主像も含めて、どれも納得できるものだったから、苦労せず抑えられました。ありがとうございました!

このような漢文の常識を知っていると、読みやすくなる漢文は増えます。そういう意味でも是非抑えておきましょう。お疲れ様でした!

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