もくじ
ポイント
- 『菜根譚(さいこんたん)』という漢文の本には、幸せになるためのコツとなる言葉がいくつか収録されている。
- 1、後集109では、幸福になるカギが認識であることを教えてくれる。
- 2、後集30では、無限の欲望に振り回されず、ほどほどで満足することが幸せへの道であることを教えてくれる。
- 3、後集118では、仕事or学業とプライベートを両立させることが、人生の充実へ繋がることを教えてくれる。
- 4、前集74では、苦労して得たものだからこそ幸福を感じられることを教えてくれる。
こんにちは。本日は、「幸せになるコツとは?」というテーマで、『菜根譚(さいこんたん)』という漢文の言葉を4つ紹介したいと思います。
先生こんにちは!幸せになりたいですが、漢文を読んで幸せになれるものなんでしょうか?
いきなり劇的に幸せになるのは難しいとは思いますが、しっかり理解して普段から実践していれば、少しずつでも幸せに近づいていくと思いますよ!
理解して幸せになれるよう頑張ります!!
なお、幸不幸については、下のページの「2、何が幸運で何が不幸かは、時間が経たないと分からない 「塞翁(さいおう)が馬」」でも取り上げているので、興味があればあわせてご覧になってみて下さい💡
1、幸福になるカギは「認識」?(後集109)
幸福になるカギは「認識」?(後集109)
【現代語訳】
人生の幸不幸の境目は、全て人の心が作り出すものである。
だから釈迦も言う。「利益や欲望に向かう心が強すぎると、それはあたかも燃えさかる炎の海であり、貪欲に心が溺れてしまうと、それはさながら苦しみの海である。心を少し綺麗にすれば、炎の海も池となり、はっと目覚めれば、苦しみの海を渡る船も彼岸(=悟りの境地)に至る」と。
心持ちが少し違うだけで、こうも境界が異なってくる。(何が幸で何が不幸かということは)よくよく考える必要がある。
【本文】
人生福境禍区、皆念想造成。 故釈氏云、利欲熾然、即是火坑、貪愛沈溺、便為苦海。 一念清浄、烈焔成池、一念警覚、船登彼岸。 念頭稍異、境界頓殊。 可不慎哉。
【書き下し】
人生の福境禍区は、皆 念想より造成す。 故に釈氏云う、「利欲に熾然(しねん)ならば、即ち是れ火坑なり。 貪愛に沈溺すれば、便ち苦海と為る。 一念清浄なれば、列焔も池と成り、一念警覚を覚すれば、船 彼岸に登る」と。 念頭 稍(やや)異なれば、境界は頓(とみ)に殊なる。 慎しまざるべけんや。
「人生の幸不幸の境目は、全て人の心が作り出すものである(人生の福境禍区は、皆 念想より造成す)」は、さすがに屁理屈というか精神論過ぎでは?
素直な感想ありがとうございます笑。気持ちは分かります。例えば、「生まれた時に両親に捨てられ、親戚をたらい回しにされて愛されず、容姿も悪く、頭も運動神経も悪い若者」が現代日本にいたとして、この人が自分を幸せと思うのはとても難しいです。
その若い人の想像をするだけで辛くなってきます…💦
でも、この若者も考え方次第によっては、100%不幸とも言えません。
どういうことですか?
まず、この若者は
頭は悪いですが大きな疾患を持っている訳ではなく、その点で恵まれています。
老い先短い訳ではなく、まだまだ時間がある点で恵まれています。
景気が悪いとはいえ、世界有数の経済大国で治安がよい日本に生まれた点で恵まれています。
厳しい環境で育ってきたので、誰よりもハングリー精神がある点でも恵まれています。
なるほど…持病や老いや出身国が原因で苦しんでいる人はいますもんね💦あと、恵まれた家庭で育った子どもがダメダメになることもよくありますよね💦
こう考えると、この若者がなんだかそこまで不幸でもないように見えてきました!
そして、「人生の幸不幸の境目は、全て人の心が作り出すものである(人生の福境禍区は、皆 念想より造成す)」の説得力が上がってきたのではないでしょうか?
自分が不幸なのは、恵まれていないからではなく、恵まれている点を認識しておらず、恵まれていない点にばかり目を向けているからかもしれません。
人間は、今あるもの幸せを感じず、ないものに不幸を感じがちです。だからこそ、今あるものの価値をしっかりと認識する必要があります。そうすれば、大金持ちでなくとも、容姿が良くなくとも、モテなくても、頭がよくなくとも、幸せになることはできます💡
もちろん、お金を稼ぐため、容姿を良くするため、モテるため、頭がよくなるために頑張ることは素晴らしいことです。しかし、それだけが幸せになる方法ではないことは、知っておくと幸せになりやすいと思います✨
視野を広く持って、色々な視点から判断するのが大切ですね!当たり前のことを当たり前に思わないよう、ありがたさや幸せを感じながら生きていきたいです✨
2、無限の欲望に振り回されず、ほどほどで満足することが幸せへの道!(後集30)
2、無限の欲望に振り回されず、ほどほどで満足することが幸せへの道!(後集30)
【現代語訳】
物欲に振り回されている者は、金を分けてもらっても(金より貴重な)宝石を得られなかったことを恨み、貴族の位を与えられても、(地位に加えて領土も持っている)諸侯になれなかったことを恨み、権力者であっても(心は)物乞いのよう(な貧しい状態に)甘んじているのである。
(一方でほどほどで)満足できる人は、質素な食事であっても豪華な食事よりおいしいと感じ、粗末な衣類であっても高価な衣服より暖かいと思う。身は貧しい庶民でありながら、心は王侯貴族にも劣らないのである。
【本文】
貪得者、分金恨不得玉、封公怨不受侯、権豪自甘乞丐。 知足者、藜羮旨於膏梁、布袍煖於狐貉、編民不譲王公。
【書き下し】
得ることを貪る者は、金を分かつも玉を得ざるを恨み、公に封ぜらるる侯を受けざることを怨み、権豪なるも自ら乞丐(きっかい)に甘んず。 足ることを知る者は、藜羮(れいこう)も膏梁(こうりょう)より旨しとし、布袍(ふほう)も狐貉(こかく)より煖(あたた)かなりとし、編民も王公に譲らず。
これは、1の主張である「人の幸不幸は考え方次第」というのと似ている感じですね💡
そうですね💡ここでは特に、人間の欲望はキリが無いからこそ、手に入れたものに満足できないという警告を読み取れます。
欲望の例で金とか宝石とか、貴族の位とか諸侯の位とか言われてもピンとこないので、現代風に例えてみて下さい!
うーん…こういうのはどうでしょう?
・もう充分に服を持っているのに、新しい服が中々買えなくて不幸だと思う。
・恋人がいるのに、恋人の言動が少し気に入らないだけで不満を抱く。
・それなりに容姿がよいのに、周りのより容姿のよい人に嫉妬する。
・テストで80点取れたのに、90点以上取れなかったことを嘆く。
あー…これは欲張りさんかもしれませんね。私は80点で充分満足できます笑!
もちろんこの例えは、ケースバイケースですし、テストのケースでは現状を満足せずに努力できるようになるので、悪いことばかりではありません。しかし、取れた点数やそれを取れた自分にひとまず満足するのは、ありだと思います💡
欲望(or向上心)と満足をバランス良く心の中に持っておけば良いですね!
とても難しいですが、その通りだと思います💡
3、仕事or学業とプライベートを充実両立させるべし!(後集118)
3、仕事or学業とプライベートを充実両立させるべし!(後集118)
【現代語訳】
人生は、あまりに暇過ぎるといつの間にか雑念が生じて(余計なことを考えてしまい)、あまりに忙し過ぎると人が本来持っている良さを発揮できない。
従って、立派な人物は、(仕事や学業で)心と身体を適度に疲れさせるようにするべきだが、一方で風流な趣を楽しむようにもしなければならない。
【本文】
人生太閑、則別念竊生、太忙則真性不現。 故士君子不可不抱身心之憂、亦不可不耽風月之趣。
【書き下し】
人生太だ閑なれば、則ち別念竊(ひそ)かに生じ、太だ忙なれば、則ち真性現れず。 故に士君子、身心の憂いを抱かざるべからず、亦た風月の趣に耽(ふけ)らざるべからず。
「人生は、あまりに暇過ぎるといつの間にか雑念が生じて(余計なことを考えてしまい)」はよく分かるなぁ…実際暇なときって、嫌な思い出や心配事ばかり考えて、嫌な気持ちになります…💦
逆に忙しすぎても、余裕がなくなって人間本来の優しさが発揮できないので、余裕と忙しさのバランスが重要ということですね💡
余裕を持つために「風流な趣」を持つように言っていますが、具体的にはどんなものですか?
当時の価値観だと、四季や草木、山川などの自然を楽しんで詩を作ったり絵を描いたり、旅行したりすることでしょうか?
今でもできはしますね💡つまり、心がリフレッシュできるような趣味を作れって事ですね。
世の中には色々な趣味がありますが、リフレッシュできるものは人によるので、試して自分に合った趣味を探したいものです✨
先生は何が趣味なんですか?
運動やゲーム、料理などでしょうか。このブログも趣味ですね。
漢文の先生の趣味が漢文のブログって、それリフレッシュできるんですか笑?
割とできますよ笑。でも、全く仕事にない趣味もあったほうがよいかもしれません。
逆に趣味だけ充実していても、うまくバランスが取れないってことかな?仕事(or勉強)と趣味は、車の両輪みたいに、進んでいくためにどっちも必要ってことですね!
うまいこと言いますね!その通りだと思います💡
4、苦労して得たものだからこそ幸福を感じられる?(前集74)
4、苦労して得たものだからこそ幸福を感じられる?(前集74)
【現代語訳】
苦しんだり楽しんだりして努力を重ね、その努力を突き詰めた後に得たものが真の幸福であり、その幸福は長続きする。疑ったり信じたりして考え抜き、その後に得た知識は、本当の知識である。
【本文】
一苦一楽相磨練、練極而成福者、其福始久。 一疑一信参勘、勘極而成知者、其知始真。
【書き下し】
一苦一楽して、相磨練し、練極まりて福を成さば、その福始めて久し。 一疑一信して、相参勘し、勘極まりて知を成す者は、其の知始めて真なり。
これは何となく分かります。テストでカンニングして100点取るのと、めちゃくちゃ頑張って100点とるのとでは、全然達成感が違う気がします💡頑張ったほうが絶対に嬉しいですし、ズルして結果出しても全然嬉しくないです💦
まるでカンニングしたことあるようないいぶりですが…💦
いやいやあくまで想像で言っているだけです!!笑
逆に、最初から得たものや楽して得たものは、あんまり有り難みを感じられませんよね。
じゃあ、最初から頭が良い人と、勉強ができないけど頑張って頭が良くなった人は、後者のほうが幸福度が高いってことですか?
場合にもよりますが、その可能性はあり得ると思いますよ💡
なんか、何事にも才能がないことを言い訳にして怠けず、頑張ろうって気持ちが高まってきました!✨
そうですね。もちろん道は険しいですが、成果が出た時の幸せはとてつもなく大きいと思います✨
以上「幸せになるコツとは?」というテーマで『菜根譚』の言葉を4つ紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
どれも味わい深くて、何度も読み返して意識するようにすれば、幸せになれるのかなって気になりました✨
『菜根譚』の「菜根(さいこん)」とは野菜の根っこを指します。これは、「野菜の根っこは筋が多くて硬いけど、それを苦にせずよく噛み続ければ、何事も成し遂げられる」という意味が込められています💡
納得のネーミングでびっくりしました笑。益々気に入った気がします。ありがとうございました!
『菜根譚』には、他にも味わい深い言葉が沢山収録されているので、よかったらご自身でも見てみて下さい。また、幸せになるコツについておすすめの本もあわせて紹介しておきます✨
お疲れ様でした!