もくじ
ポイント
- 漢詩には、季節を描くものが多く、春の漢詩として「春暁(しゅんぎょう)/孟浩然」「春夜(しゅんや)/蘇軾」、夏の漢詩として「夏夜追涼(夏の夜に涼を追う)/楊万里」「夏日題悟空上人院(夏日、悟空上人の院に題す)/杜荀鶴」、秋の漢詩として「秋日/耿湋」「感秋 其五(秋に感ず 其五)/楊万里」、冬の漢詩として「除夜作(除夜の作)/高適」「臘月独興/菅原道真」が挙げられる。
- 「春暁(しゅんぎょう)/孟浩然」は、春の陽気で過ごしやすい朝の様子を詠い、「春夜(しゅんや)/蘇軾」は、春の夜の素晴らしさを詠う。
- 「夏夜追涼(夏の夜に涼を追う)/楊万里」は、暑い夏の夜に、風以外の涼しさを風流に詠い、「夏日題悟空上人院(夏日、悟空上人の院に題す)/杜荀鶴」は、酷暑を精神統一で乗り越えようとする様を詠う。
- 「秋日/耿湋」は、秋ならではのもの悲しさや寂しさを詠い、「感秋 其五(秋に感ず 其五)/楊万里」は、秋は読書や飲酒・行楽にふさわしいことを詠う。
- 「除夜作(除夜の作)/高適」は大晦日の孤独を詠い、「臘月独興/菅原道真」は過ぎゆく年への焦燥感・反省と春が到来する嬉しさを詠う。
こんにちは💡本日は、「四季(春夏秋冬)の情感をうたった漢詩」ということで紹介します!
先生こんにちは。季節の漢詩は、何となく漢詩っぽい感じがします。優雅って感じです笑
なんとなく気持ちは分かります笑。マオさんは、どの季節が好きですか?
私は圧倒的に春が好きです。桜がキレイだし、プロ野球も開幕するので笑
なるほど…笑 私は夏が好きですね✨炎天下で汗だらだらになりながら外でスポーツするのが好きです💡
それって、熱中症で倒れたりしません?笑
最近年を取ってきて、結構きつくなってきていますね笑
皆さんにもそれぞれ好きな季節や、季節ならではの楽しみ方があると思いますが、今回紹介する漢詩で、それを改めて認識すると共に、新しい季節の味わいもしてもらえれば嬉しいです✨
1、春の漢詩 春暁(しゅんぎょう)/孟浩然 春夜(しゅんや)/蘇軾
春の漢詩その1 春暁(しゅんぎょう)/孟浩然
【現代語訳】
(心地よい)春の眠りで、日が明けたのも気付かないほどである。所々で鳥のさえずりが聞こえてくる。
昨夜の風まじりの雨の音からすると、(庭の)花はどれほど散ってしまっただろうか。
【本文・書き下し】
春眠不覚暁 処処聞啼鳥 春眠 暁を覚えず 処処啼鳥を聞く
夜来風雨声 花落知多少 夜来 風雨の声 花落つること知る多少
孟浩然とは?
・唐の時代に生きた詩人・政治家。自由気ままであり、立身出世や上下関係より、自分の価値観や友人関係を重んじる性格。王維や李白などとは友人。自然を描写した詩が評価されている。
春の漢詩その2 春夜(しゅんや)/蘇軾
【現代語訳】
春の夜のひとときは、千金の価値がある。
花が清々しい香りに包まれ、月は(雲で)かげっている。
にぎやかな歌や音楽が響いていた高くて大きな建物も、すっかり静まりかえった。
(中庭には)ブランコがひっそりとぶら下がり、夜は静かに更けていく。
【本文・書き下し】
春宵一刻値千金 春宵一刻 値千金
花有清香月有陰 花に清香有りて月に陰有り
歌管楼台声細細 歌管楼台 声細細
鞦韆院落夜沈沈 鞦韆院落 夜沈沈
蘇軾とは?
・北宋時代の詩人・政治家・画家。王安石の新法に反対したことにより、左遷されて苦しい目に遭う。その後も政治的闘争を行い敗れたり、誹謗中傷を受けたりしてたびたび左遷される。
・政治家としては苦しい出来事が続くが、詩の中では過度に憂うこともなく、私生活を楽しんでいることが窺える。
「春暁」は知ってます!学校の教科書によく載っていますよね!
おっしゃる通り、「春暁」はめちゃくちゃ有名ですね💡ご存じの方も多いと思います。特に「春眠 暁を覚えず」の部分が印象的ですね。
春に暖かくなってくると、陽気で寝心地がよくて、ついつい沢山寝てしまいます…笑
孟浩然の気持ちがよく分かります!
私もよく分かります。しかし私の場合は、花粉症の作用で頭がぼんやりする感じで二度寝してしまうので、孟浩然とはまた別の感覚かもしれません…笑
そういえば私も花粉症で、同じ症状によくなります…💦孟浩然も花粉症だったんですかね?笑
どうでしょう?花粉症は現代人のアレルギーのイメージなので…でもそうだったら面白いですね笑
「春夜」のほうはどうですか?
「春の夜のひとときは、千金の価値がある」には賛成です!私は春が好きですが、特に春の夜が好きです✨なんだかワクワクしますし、夜桜はキレイですし✨
なるほど💡確かに夜桜はキレイですね✨あと、年度が新しくなったばかりで、その意味で私は何となくワクワクしますね。
それだ!新学期で新しいことが起こりそうでワクワクするのかもしれません✨
一方で、清少納言は、「春はあけぼの(春は明け方が良い)」と言っていますね。マオさんは「春は夜が良い派」「春は明け方が良い派」のどちらですか?
「春は夜が良い派」ですかね?というか、そもそも明け方って6時前とかですよね?その時間帯に起きてないので、選べない…笑
私も同じ理由で「春は夜が良い派」ですが、実際に明け方の春を体感すると、また変わってくるかもしれませんね💡
2、夏の漢詩 夏夜追涼(夏の夜に涼を追う)/楊万里 夏日題悟空上人院(夏日、悟空上人の院に題す)/杜荀鶴
夏の漢詩その1 夏夜追涼(夏の夜に涼を追う)/楊万里
【現代語訳】
夜の暑さは変わらず昼の暑さのまま。
門の外に出て、月明かりの中でしばらくたたずんだ。
竹や木が生い茂り、虫の声が聞こえてくる所(があり)、
ふと微かな涼しさを感じたが、これは風によるものではな(く、竹や木、虫の声といったもののおかげだった。)
【本文・書き下し】
夜熱依然午熱同 夜熱依然として午熱に同じ
開門小立月明中 門を開いて小立す、月明の中
竹深樹密虫鳴処 竹深く樹密なり、虫鳴く処
時有微涼不是風 時に微涼有り、是れ風ならずして
夏の漢詩その2 夏日題悟空上人院(夏日、悟空上人の院に題す)/杜荀鶴
【現代語訳】
猛暑の時期に、門を閉ざしてお坊さんの服を着る。
加えて、松や竹が建物を覆ってくれず(日差しが直に降り注ぐ)。
坐禅で精神統一するには、山や水(のような涼しげな風景)を用いる必要はない。
頭や心の(雑念を払って)なくせば、火でさえ涼しく(感じるものである)。
【本文・書き下し】
三伏閉門披一衲 三伏 門を閉じて一衲を披(ひら)く
兼無松竹蔭房廊 兼ねて松竹の 房廊を蔭(おお)う無し
安禅不必須山水 安禅は必ずしも山水を須いず
滅得心中火自涼 心頭を滅卻(めっきゃく)すれば火も亦た涼し
三伏…猛暑の時期。 一衲…僧が着る服。
「夏夜追涼(夏の夜に涼を追う)」は、寝苦しい夏の夜に、風以外の涼しさを感じた所が面白くて風流ですね💡
竹や木や虫の鳴き声で涼しさを感じるのは確かにオシャレですね✨
私はホラー映画や北極の画像を見ると涼しくなります笑
現代人はエアコンを使えば涼しくなりますが、電気代がかかったり、身体に悪かったりするので、他の涼み方を知っていても損はないかもしれませんね💡
私はベタですが風鈴の音を聞くと涼しい気持ちになります。
風鈴もいいですね✨昔の中国人も、現代日本人と同じように、夏の暑さに苦しんできたと思うと、親近感が湧きます笑
「夏日題悟空上人院(夏日、悟空上人の院に題す)」のほうも暑さがテーマとなっていますね💡
「頭や心の(雑念を払って)なくせば、火でさえ涼しく(感じるものである)」って、これは実際にできることなんですかね?💦
確かに、体感は心の持ちようで変わるものですが、正直暑いものは暑いし、寒いものは寒いです…笑
同感です…笑
でも、暑い暑い言ってたら余計に暑く感じますし、寒い寒い言ってたら余計に寒くなるので、あんまり口に出さないほうがよいのかもしれませんね💡
ちなみに、この部分の原文「滅得心中火自涼(心頭を滅卻(めっきゃく)すれば火も亦た涼し)」は、現代日本語でもたまに使われる名言なので、知っておくとよいでしょう💡
なんか聞いたことがあります!「夏日題悟空上人院(夏日、悟空上人の院に題す)」が出典だったんですね💡
3、秋の漢詩 秋日/耿湋 感秋 其五(秋に感ず 其五)/楊万里
秋の漢詩その1 秋日/耿湋(こうい)
【現代語訳】
夕日の光が村里に差し込んでいる。不安や憂いが胸にわいてくるが、いったい誰と一緒に語り合えばよいのか。
古い道には往来する人もまれである。ただ秋風だけが稲やきびをゆり動かしているだけだ。
【本文・書き下し】
返照入閭巷 憂來誰共語 返照 閭巷に入る 憂い来たりて誰か共に語らん
古道少人行 秋風動禾黍 古道 人の行くこと少(まれ) 秋風 禾黍を動かす
秋の漢詩その2 感秋 其五(秋に感ず 其五)/楊万里
【現代語訳】
書籍を読むのには秋がふさわしく、詩作の楽しみも秋にまさるものはない。
(秋は)長い夜に思う存分酒を飲むのもよいし、遠くに出かけるのも良い。
【本文・書き下し】(前後を省略)
書冊秋可読 詩句秋可搜 書冊秋に読むべく、詩句秋に捜すべし
永夜宜痛飲 曠野宜遠遊 永夜 痛飲に宜しく、曠野 遠遊に宜し
同じ秋の漢詩だけど、2つで雰囲気が大分違いますね。「秋日」は寂しげで、「秋に感ず」は秋を楽しんでいる感じです💡
中国の伝統的な秋の漢詩は、「秋日」のように悲しげで暗い感じの作風がオーソドックスです。秋はもの悲しくなる気持ちは、何となく分かります。
私もなんとなく分かります。夏が終わって気温が下がっていって…
でも、「秋に感ず」の気持ちも分かります。涼しいから読書もしやすいし、お出かけもしやすいので✨
「読書の秋」「芸術の秋」「食欲の秋」「行楽の秋」「スポーツの秋」のように、現代でも「○○の秋」と言われるもののルーツがこの「秋に感ず」かもしれません💡
マオさんにとって秋は何をするのに適したものですか?上から選んでみて下さい。
私は「読書の秋」ですかね💡気になってて読めていない小説を一気に読みます!
私は「行楽の秋」ですかね💡紅葉とかイチョウとか見に行きます✨
行楽も良いなぁ✨
4、冬の漢詩 除夜作(除夜の作)/高適 臘月独興/菅原道真
冬の漢詩その1 除夜作(除夜の作)/高適(こうせき)
【現代語訳】
旅の宿の寒々とした灯り(の下で)ひとり眠れない(夜を過ごしている)。
旅の(途中である私の)心は、どうしたことか、ますます悲しくなるばかりだ。
故郷では今夜、千里(も遠く離れている私のこと)を想っている(ことだろう)。
霜のように側頭部の髪の毛が白くなった(私の身)は、明日の朝になれば、また1つ年(を取ってしまうのだ)。
【本文・書き下し】
旅館寒燈独不眠 旅館の寒灯独り眠らず
客心何事転凄然 客心 何事ぞ転(うた)た凄然
故郷今夜思千里 故郷 今夜 千里を思う
霜鬢明朝又一年 霜鬢 明朝又た一年
高適とは?
・唐の詩人・政治家。李白・杜甫とは友人。性格は豪快で、若い頃は定職につかず派手にギャンブルして過ごして落ちぶれる。その後、玄宗に仕える。辺境を題材とした作品が有名。
冬の漢詩その2 臘月独興(ろうげつどっきょう)/菅原道真
【現代語訳】
冬(=年)の終わりも迫ってきて、嘆くことを耐えられようか。(いや耐えられない。)
(一方で、季節が)春に向かおうとしていて、決して遠くはないことを逆に喜ぶ。
(私が)尽きて欲しいと思う弱々しい日光は、(あと)何カ所で休むのだろうか。
もうすぐ来る暖かい陽気は、(現在)誰の家に泊まっているのだろうか。
氷は水面を封鎖する(ように張り付いていて)、波(の音)も聞こえない。雪は木々の先に乗っていて、花が咲いているようである。
学業に励むことができず、書斎の窓の下で年月が過ぎてしまうことを、反省しなければならない。
【本文・書き下し】
玄冬律迫正堪嗟 玄冬 律迫りて 正に嗟くに堪え
還喜向春不敢賒 還りて喜ぶ 春に向いて敢えて賒かならざることを
欲尽寒光休幾処 尽きんと欲する寒光 幾ばくの処に休わん
将来暖気宿誰家 来らんとする暖気 誰が家に宿らん
氷封水面聞無浪 氷は水面を封じて 聞くに浪なし
雪点林頭見有花 雪は林頭に点じて 見るに花有り
可恨未知勤学業 恨むべし 学業に勤むることを知らずして
書斎窓下過年華 書斎の窓の下に年華を過さんことを
菅原道真とは?
・日本の平安時代の詩人・政治家。若くから才能に溢れており出世するものの、宇多天皇が引退すると讒言を受け、太宰府に左遷される。漢詩人としても有名。「臘月独興」は、道真が14歳の頃の作品。
「除夜作(除夜の作)」の「除夜」って、12月31日の大晦日(おおみそか)ってことですよね?大晦日に1人で旅行しているってことか。それは寂しく感じると思いますね💡
大晦日は、今も昔も家族と賑やかに過ごすのが常識なので、なおさら寂しかったと思いますし、年が改まるということで、焦燥感を覚えることもあったでしょう。
なるほど…今私は当たり前のように年越しを家族と過ごしていますが、1人で年越しって大分寂しい気がします💦
私は1人で年を過ごすことがありますが、「除夜作(除夜の作)」の作者の気持ちがよく分かります💡1人の寂しさと年越しの焦燥感を消すため、めちゃくちゃ仕事してます笑
大晦日も休まないんですか!?たまには休んで下さいね笑💦
ありがとうございます笑。休める時にはばっちり休んでるので大丈夫ですよ!
もう一方の「臘月独興(ろうげつどっきょう)」も、同じく1年の終わりを嘆いたり、うまく勉強できないことを反省していますね💡
やろうと思ったことを年末にできなかったと後悔するのは、私も毎年のようにあります…昔の人も変わらなくて、なんだか安心しました✨
作者の菅原道真は若い頃からめちゃくちゃ優秀だったので、実際は沢山勉強していて、それで謙遜しているだけな気もしますが…
じゃあ安心できないです笑。てゆうか、これ書いたの道真さんが14歳の頃なんですね。凄すぎでは?
当時(平安時代)の寿命は、今の半分以下とされていたので、14歳の感覚はかなり違いますが、それを加味しても凄いですね✨
私も道真を見習って勉強頑張ります!
以上、季節の漢詩を合計8つ紹介しましたがいかがだったでしょうか?
春夏秋冬それぞれの季節ならではの描写や感情が描かれていて、とても面白かったです✨なんだか、四季があることの素敵さを改めて感じられた気がします!
よかったです💡私は、もう少し季節を楽しむのもありかなと思いました✨お疲れ様でした!
なお、冬の漢詩といえば、梅にまつわる漢詩も挙げられます。以下にまとめてありますので、よかったらご覧になってみて下さい。