ポイント
- 漢詩においては、桜より梅のほうが詠まれる傾向にあった。
- 梅は、寒い季節にも関わらず花を咲かすという所から、「周りに流されない高潔な人間」「辛い時でも頑張ることができる忍耐強い人間」のたとえとして用いられることがある。
- 1鮑照「梅花落」は、いかに梅の木が優れているのかを詠った作品。
- 2王安石「梅花」は、寒い中咲いている白い梅の花を香りという面から詠った作品。
- 3菅原道真「月夜見梅花」は、梅の白い花を星にたとえ、月と対比して美しさを詠った作品。
- 4西郷隆盛「識天意」は、梅や楓の木をたとえとして、「困難を乗り越えた先には大きな成果が待っている」ことを伝え、読者を励ましてくれる作品。
こんにちは。本日は、「梅が登場する漢詩 4選」ということで紹介させていただきます。
こんにちは。私は梅より桜派ですが、梅も割と好きですよ!
私もどちらも好きです。漢詩との関わりで見ると、桜より梅のほうが題材にされていることが多い印象です💡
日本だと2月~3月にかけて咲く品種が多いですね。
梅ってそんなに種類あるんですか?
沢山あるみたいですよ!色だけで見ても、紅・ピンク・白・黄色などがあり、その中でも微妙に形や咲き方が違ってくるみたいです💡
一口に「梅の花」って言っても、沢山種類があるんですね。どれもキレイです✨
どれもキレイですよね✨ではここから、梅が昔の中国や日本でどう詠まれてきたのか、探っていきましょう!
1、鮑照 梅花落(ばいからく)
中庭には様々な木が植えてあるが、
私が褒め称えるのは梅の木だけだ。
(他の樹木が)悲しんで私に言うだろう。
「どうして梅ばかり褒めるのですか」と。
(私はこう答える。)「考えみよ。(梅は)霜(が降りている寒い)中でも花を開き、
露(が沢山表れるような厳しい気候の)中でも実を結ぶ。
お前たちはただ春風に揺れ、暖かい春の日に咲くだけではないか。
いざ寒い風が吹いてくると枯れて萎んでしまうじゃないか。
考えてみよ。お前たちは(寒くなると)枯れ落ち、寒い風を追うように(散ってしまい)ただ霜のように花は咲くだけであり、寒さに耐えられるほどの強さはないではないか。」と。
※「霜質」は、「植物が寒さに耐えられるほどの強さ」を指すが、転じて「人が高潔で優れた品格」を示すようにもなった。
中庭雑樹多 中庭に雑樹多きも
偏為梅咨嗟 偏(ひと)えに梅の為に咨嗟(しさ)す
問君何独然 君に問う「何ぞ独り然るや」
念其霜中能作花 「念(おも)え 其れ霜中に能く花を作し
露中能作実 露中に能く実を作すを
搖蕩春風媚春日 春風に搖蕩(ようとう)し 春日に媚ぶるのみ
念爾零落逐寒風 念え 爾らは零落して寒風を逐い
徒有霜華無霜質 徒らに霜華有りて霜質無きを。」
木が作者に話しかけてくるって、なんか面白いですね笑
確かにそこは面白いですね✨
あとは、「なぜ作者は梅を特別高い評価しているのか?」という点も面白いです。
作者が言うように、「寒い中でも花が咲く」というのは、確かに珍しいですね。花が咲く=春のイメージが強いので。
冬にも咲く花は、山茶花(さざんか)や椿(つばき)など、梅の他にもありますが、当時から「冬に花が咲く植物といえば梅!」というイメージがあったのかもしれませんね💡
また、梅は「周りに流されない高潔な人間」「辛い時でも頑張ることができる人間」のたとえとして用いられることがあります。
どっちの解釈もピッタリですね✨納得できます。私も梅を見習って頑張ります!!
2、王安石 梅花(ばいか)
垣根のかどには数本の梅の枝(が見える)
寒さをものともせずに、自力で花を咲かせている。
遠くから(見てもその梅の花が)雪ではないとわかるのは、
ほのかに香ってくる(花の匂い)があるからだ。
墻角数枝梅 墻角(しょうかく) 数枝の梅
凌寒独自開 寒を凌ぎて 独り自ら開く
遥知不是雪 遥かに知る 是れ雪ならざるを
為有暗香来 暗香の来たれる有るが為に
これは梅の花の香りに注目した作品ですね。短くてシンプルですが、後半2句が粋な感じがして好きです✨
この詩の前提として、「木に積もっている雪」と「白い梅の花」は、遠目に見ると見分けが付かないということがあるのでしょう。しかし、雪には匂いがないから分かるってことですね💡
なるほど💡
ところで、梅の花の匂いってどんな匂いなんですか?この詩を読むと気になってきます。
良い匂いですよ。中々表現しづらいですが笑
是非ご自身で味わってみて下さい!全国的に梅の花の名所は多いので、2~3月ごろになったらお近くの所までお出かけしてみましょう!
ちなみに梅は、「雪裏清香(せつりせいこう)」という別名があります。「雪裏清香」とは、「雪が降る中(=裏)でも清い香りを立てる」という解釈であり、ぴったりですね💡
梅の名所→https://www.jalan.net/news/article/526479/
3、菅原道真 月夜見梅花(月夜に梅花を見る)
月が輝いているのは、まるで晴れた日に(見えるきらきらした)雪のようである。
梅の(白い)花は照らされている星に似ている。
とても愛おしいことよ。黄金色の鏡(のような月)が移りゆくにつれ、
庭では玉のように白い梅の花が香ってくるのは。
月耀如晴雪 月の耀(かがや)くは晴れたる雪の如し
梅花似照星 梅花は照れる星に似たり
可憐金鏡転 憐れむべし 金鏡の転じて
庭上玉房馨 庭上に玉房の馨(かお)れることを
これは、今までの詩と違って、梅というよりは「梅と月」が主役って感じですね。これもまた良いです✨
梅の花と月をうまく対比させながら、美しく詠っている作品だと思います✨
あと、「梅花は照れる星に似たり」のように、梅の白い花を星にたとえているのも、個人的にはポイント高いです💡
てゆうか、これってあの菅原道真(すがわらのみちざね)の作品なんですね!あの人って漢詩作れたんだ…なんか太宰府に流されたイメージしかないです笑💦
道真は漢詩の才能めちゃくちゃあって、沢山作品を残していますよ!
ちなみにこの「月夜見梅花(月夜に梅花を見る)」は、道真が11歳の時、はじめて作った作品です💡
11歳!?天才じゃないですか…💦
当時の寿命は今の半分くらいだったので、今の11歳と昔(平安時代)の11歳は大分イメージ違うと思いますが、それを加味しても凄いですよね✨
今日1番印象に残りました…笑
4、西郷隆盛 識天意(天意を識る)
「はい」と言って一度承諾したことは、最後まで貫き通さ(なければならない。)(それには)昔から鉄や石(のような)堅い覚悟(が必要とされている。)
貧しい生活が偉大な人物を生み出し、立派な成果は、多くの困難(を乗り越えてこそ)生まれるのである。
(厳しい冬の)雪の中に耐えて梅の花は麗しく(咲き)、(冷たい)霜の厳しさを乗り越えて楓(かえで)の葉は赤く色づく。
(あなたが)もし(困難を乗り越えた先に立派な成果が表れるという)天の法則を知っているのなら、どうしてのんびり物思いにふけっているのか。(いや、努力すべきだ。)
一貫唯唯諾 従来鉄石肝
一貫す唯唯の諾 従来 鉄石の肝
貧居生傑士 勲業顕多難
貧居 傑士を生じ 勲業 多難に顕(あらわ)る
耐雪梅花麗 経霜楓葉丹
雪に耐えて梅花麗しく 霜を経て楓葉(ふうよう)丹(あか)し
如能識天意 豈敢自謀安
如し能く天意を識らば 豈敢えて自ら安きを謀らんや
なんか、「武士!」って感じの詩ですね。さすが西郷隆盛です。イメージ通りです笑
この詩は、隆盛の妹の息子がアメリカへ留学する際、その息子(=甥)に送った漢詩だとされています。アメリカ留学という辛い時期を乗り越えた先には、大きな成果が待っているという、隆盛なりのエールを読み取ることができます。
それ聞くと西郷隆盛のイメージがなんか変わりますね。良い叔父さん…笑
はじめで「「はい」と言って一度承諾したことは、最後まで貫き通さ(なければならない。)」=「途中で留学を止めて帰国することなく頑張れ」なので、やや圧は感じますが、励まされる感じだと思います✨
ここでは、梅と楓が並んで「困難を乗り越えて成果を残す存在」として登場している訳ですね💡
1の所で紹介した梅のイメージが、この詩でも共有されていますね💡
ちなみに、「耐雪梅花麗(雪に耐えて梅花麗し)」は、元プロ野球選手の黒田博樹選手の座右の銘としても有名ですね。
黒田選手知ってます!なんか意外でびっくりしました💦
学生時代に先生から紹介されて気に入られたようですよ。
この作品の印象がかなり良くなりました笑✨
以上、梅が登場する漢詩を4つ紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
どれも素敵な詩だと思いました!ありがとうございました!