こんにちは。このページでは、論語(孔子)に登場する政治・リーダーにまつわる名言を分かりやすく紹介します!
親・先生・上司など、人を引っ張る立場の方にとって役立つものとなっているので、是非ご覧になってみて下さい!
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もくじ
- 1、自分がしっかりしていないと相手を正すことはできない! 其の身を正しくする能わずして人を正すを如何せん
- 2、道徳こそが人を導く根本! 政を為すに徳を以てするは、譬えば北辰其の所に居りて、衆星 之に共(むか)うがごとし
- 3、ルールで厳しく縛り付けるより、まごころと礼儀で接するべし! 之を導くに政を以ってし、之を斉えるに刑を以てすれば、民免れて恥なし
- 4、あなたは自分の役割にふさわしい言動をしていますか? 君 君たり、臣 臣たり、父 父たり、子 子たり
- 5、あなたは他者に言うだけで自分は何もしていない、そんなことはないですか? 之に先んじ、之を労す
- 6、ルールで厳しくするよりまごころで接するべし! 之を道くに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥ずる有りて且つ格し。
- 【番外篇】7、リーダーがろくでもないのが最大の脅威! 苛政は虎よりも猛なり(『礼記』)
- 8、まとめ
1、自分がしっかりしていないと相手を正すことはできない! 其の身を正しくする能わずして人を正すを如何せん
【現代語訳】
孔子がおっしゃるには、「もし自分の身を正せば、政治に関わるにあたって特別行うことはない。(つまり、あれこれ政策を考えるより、自分が正しくあるだけで政治はうまくいく。)自分の身を正しくできていないのに、どうして他者を正すことができようか。(出来るはずがない。)」と。
【原文】
子曰、「苟正其身矣、於従政乎何有。不能正其身、如正人何。」
【書き下し】
子曰く、「苟(いやし)くも其の身を正しくせば、政に従うに於いて何か有らん。其の身を正しくする能(あた)わずして、人を正すを如何せん。」と。
【解説】
・政治を行う立場の人や、人の上に立つ立場の人は、あれこれ指摘する前に自分の身を正しておくべきという言葉。
・自分ができていないのに、「もっと真面目に勉強しなさい」「もっとキチンとしなさい」という人や、自分が失礼なのに他者へ「常識が無い」と指摘する人など、世の中には自分のことを棚に上げて他者を攻撃する人間が非常に多いです。
→言われた側からすると、「お前が言うな!」とツッコみたくなりますし、何より親や両親に言われたら一気に信頼できなくなり、何を言われても響きません。
→人を指導・教育する立場の方は、まずは自分ができているかどうかをしっかりと見直しましょう!

2、道徳こそが人を導く根本! 政を為すに徳を以てするは、譬えば北辰其の所に居りて、衆星 之に共(むか)うがごとし
【現代語訳】
先生がおっしゃるには、「徳を用いて政治を行うとする。それは、北極星を中心としてその周りを星がめぐるようなものである。」と。(為政篇)
【原文】
子曰、「為政以徳。譬如北辰居其所而、衆星共之。」
【書き下し】
子曰く、「政を為すに徳を以てするは、譬えば北辰其の所に居りて、衆星 之に共(むか)うがごとし。」と。
【解説】
・政治を行う上で最も根本とすべきは道徳であるという言葉。
・予算を作ったり法律を立案したりと、政治家には仕事が沢山ありますが、忘れてはならないのは、他者に対する道徳心(まごころ)です。相手の気持ちを慮ることを忘れないようにしましょう!
・これは政治家だけでなく、家族やクラス、部活など、グループを率いるリーダーにも当てはまります。自分のすべきことばかりが頭の中を占めてしまい、周りへの優しさが欠けていませんか?
3、ルールで厳しく縛り付けるより、まごころと礼儀で接するべし! 之を導くに政を以ってし、之を斉えるに刑を以てすれば、民免れて恥なし
【現代語訳】
先生はおっしゃるには、「民衆を導くために法律を用い、また治めるために刑罰をもってすれば、民衆は法律の穴を見つけようして、節操のない人間となってしまう。(しかし、)徳でもって民衆を導き、礼でもって国を治めるならば、民衆はその身を正すようになる。」と。(為政篇)
【原文】
子曰、「導之以政、斉之以刑、民免而無恥、導之以徳、斉之以礼、有恥且格。」
【書き下し】
子曰く、「之を導くに政を以ってし、之を斉えるに刑を以てすれば、民免れて恥なし。之を導くに徳を以てし、これを斉えるに礼を以ってすれば、恥有りて且つ格(ただ)し。」と。
【解説】
・「ルール」「罰」によって厳しく取り締まるより、「まごころ」「礼儀」によって寛大に接するほうを重視する。
・ルールは大切ですし、ルールは本来まごころや配慮から生まれるものです。しかし、ルールや罰ばかりを重視していると、「ルールを破らないなら何してもよい」という無節操で不誠実な人間になってしまう危険性があります。「法律(ルール)の根本には道徳があってこそ」ということを、ルールを決める立場のリーダーは常に忘れないようにすべきです。

4、あなたは自分の役割にふさわしい言動をしていますか? 君 君たり、臣 臣たり、父 父たり、子 子たり
【現代語訳】
斉の景公が政治の(理想の)あり方を孔子に尋ねた。孔子が答えるには、「臣下は君主を君主として(臣下らしく)仕え、君主は臣下を臣下として(君主らしく)扱い、子は父を父として(子どもらしく)仕え、父は子を子として(父らしく)扱うのが、(政治の肝要)です。」と。
景公が答えるには、「本当によいことを言って下さった。誠にもしも、君が君として尊ばれず、臣が臣として扱われず、父が父として尊ばれず、子が子として扱われないならば、たとえ米がそこに貯えてあっても、私がそれを口へ運ぶことができず、(反乱などが起こり立場が危うくなる)に違いない。」と。(顏淵篇)
【原文】
斉景公問政於孔子。孔子対曰、「君君、臣臣、父父、子子。」公曰、「善哉。信如君不君、臣不臣、父不父、子不子、雖有粟、吾得而食諸。」
【書き下し】
斉の景公、政を孔子に問う。孔子対えて曰く、「君 君たり、臣 臣たり、父 父たり、子 子たり。」と。
公曰く、「善きかな。信(まこと)に如し君 君たらず、臣 臣たらず、父 父たらず、子 子たらずんば、粟(ぞく)ありと雖も、吾れ豈に得て諸(こ)れを食らわんや。」と。
【解説】
・いわゆる「正名(名称=肩書き通りに正しく行動する)」思想に基づいた言葉で、どの団体においても、秩序を乱す原因は、各々が自分の役割を果たせていないからであるという指摘。
→「正名」は、言われてみれば当たり前だが、実践することは難しい思想である。
・あなたは、自分の役割(両親・子ども、先生・生徒、部長・部員、上司・部下)にふさわしい言動ができていますか?それぞれ「らしさ」というのは、人によって変わる部分もあるので、まずはあなたが思う各役割らしさ=理想を考え、それを自分ができているのか考えてみましょう。

5、あなたは他者に言うだけで自分は何もしていない、そんなことはないですか? 之に先んじ、之を労す
【現代語訳】
子路が政治のやり方を尋ねた。先生がおっしゃるには、「部下に先立って働き、思いやりを示すことだ。」と。子路が述べるには、「ただそれだけですか。」と。孔子がおっしゃるには、「ただこれを根気よく継続すればよい。」と。(子路篇)
【原文】
子路問政。子曰、「先之勞之。」請益、曰、「無倦。」
【書き下し】
子路(しろ) 政(まつりごと)を問う。子曰く、「之に先んじ、之を労す。」と。益さんことを請う。曰く、「倦(う)む無かれ。」と。
【解説】
・人を率いる上で大切なのは、常に自分が率先して動くことだという言葉。
・あなたは、「部下や子ども、部員に言うだけ言って、自分は何もしない」なんてことはないですか?このような人物が信頼を得られることはまずないでしょう。
・他者からの信頼を得たいのなら、まずは自分から動いてから指導・指摘する必要があります。偉そうなだけで口だけな姿勢を他者は案外見ているものですし、見えていなくても分かるものです。

6、ルールで厳しくするよりまごころで接するべし! 之を道くに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥ずる有りて且つ格し。
【現代語訳】
孔子がおっしゃっるには、「(民衆を)ルールや制度でもって導き、刑罰で治めようとすれば、民衆はただその刑罰を逃れようとするだけで、(なぜ罰せられるかという理由を考えず、)何も恥じなくなる。道徳によって導き、マナーを伝えて治めていくと、民衆は恥の概念を持(って反省し)、(自ずと自分を)正して良い方向へ向かっていく。」と。
【原文】
子曰、「道之以政、斉之以刑、民免而無恥。道之以徳、斉之以礼、有恥且格。」
【書き下し】
子曰く、「之を道(みちび)くに政を以し、之を斉(ととの)うるに刑を以てすれば、民免れて恥ずること無し。之を道くに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥ずる有りて且つ格(ただ)し。」と。(為政篇)
【解説】
・リーダーがルール+罰で人々をマネジメントすることのデメリットと、道徳+マナーで人々をマネジメントすることのメリットを述べる発言。
・ルールや罰則が全て悪という訳ではありませんが、ルールは万能ではなく、「ルール違反にはならないけど、他者の迷惑になること」というのは無数に存在します。チームで成果を出していくためには、ルールを守るだけではなく、他者のことを考えて柔軟に連携を取りながら取り組む必要があります。
・また、他者の感情についてしっかりと学ぶことができれば、「恥」の概念が生まれ、自然と善人になっていき、あなたの団体は良い雰囲気となっていくでしょう。これは、もちろんトップになる人物がそれなりの道徳心があることが大前提であり、それを生徒や部下、子ども、部員に波及させていくことができればの話です。(これが難しい…)
【番外篇】7、リーダーがろくでもないのが最大の脅威! 苛政は虎よりも猛なり(『礼記』)
【現代語訳】
孔子が泰山の近くを通りかかると、墓で泣いている婦人がいた。孔子は密かにその泣き声を聴き、孔子は子路に婦人へ尋ねさせた。「奥様の泣き声を聴き、かなり悲惨なことに遭ったのでしょうか。」と。
婦人が言うには、「私の義父は昔、虎に殺され、夫も虎に殺され、今回は息子も虎に殺されました。」と。孔子が(婦人に)言うには、「どうしてここを離れないですか。」と。婦人が答えるには、「この地域は重税がないですもの。」と。
孔子は弟子達に向かって言った。「みなの者、よく覚えておきなさい。(重税を課すような)ろくでもない政治は、虎より害悪となるのだ。」と言いました。
【原文】
孔子過泰山側。有婦人哭於墓者而哀。夫子式而聴之、使子路問之曰、「子之哭也、一似重有憂者。」而曰、「然。」昔者吾舅死於虎、吾夫又死焉、今吾子又死焉。夫子曰、「何為不去也。」曰、「無苛政。」夫子曰、「小子識之。苛政猛於虎也。」
【書き下し】
孔子 泰山の側を過ぐ。婦人 墓に哭する者有りて哀しむ。夫子式して之を聴き、子路をして之に問わしめて曰く、「子の哭するや、一に重ねて憂い有る者に似たり。」と。
而(すなわ)ち曰く、「然り。昔者(むかし)吾が舅(しゅうと) 虎に死し、吾が夫又た死し、今吾が子又た死せり。」と。夫子曰く、「何為(なんす)ぞ去らざるや。」と。曰く、「苛政無ければなり。」と。
夫子曰く、「小子之(これ)を識(しる)せ。苛政は虎よりも猛なり。」と。
【解説】
・時ろくでもない政治(やリーダー)は、獰猛な人食い虎より猛威を振るって人民に害を与えるという言葉。
・政治はもちろん、上の立場にある人物というのは、様々な裁量を与えられています。それをしっかりとした道徳心に基づいて用いなければ、下の立場にある人物は苦しむことになるでしょう。
・あなたは、生徒や部下、子どもに自慢話をして偉ぶったり、酷い扱いをしたりして、立場による権力を私利私欲のために用いていませんか?
・逆に、自分が下の立場の人によって、そのようなろくでもない人物の害悪は計り知れません。可能な限り速やかに離れましょう。

8、まとめ
・孔子はリーダーが有するべき素質を「道徳」に求めた。これは、その後の中国政治に絶大な影響を与える。政治家・官僚という「リーダー」になるための素養として「道徳的であること」が必須とされた。
→ただしこれは、「人に優しくするためには法を犯しても構わない」という考えにも至ることが多く、汚職や癒着など、犯罪が助長される側面を有していた。
・また、孔子のこのような言葉は、そのままリーダーとして気を付けるべきことにもなる。自分が道徳心を持って、寛大な姿勢で下の立場と接し、自分が率先して動くのように、上の立場としてふさわしい態度を取れば、リーダーとしてうまく引っ張れることが分かる。