もくじ
ポイント
- 漢文(中国史)におけるダメ妻の特徴として、「私利私欲を満たすために政治に口出しし、国を混乱させる」という点が挙げられる。
- 具体的には、妲己(だっき)、驪姫(りき)、呂太后(りょたいごう)が挙げられる。
- 妲己は、夫と共に贅沢三昧し、反乱した臣下を残虐な方法で罰し、国を滅ぼす原因を作った。
- 驪姫は、自分の息子を後継者にしようとし、他の後継者を排除し、国を混乱させた。
- 呂太后は、夫の死後自らが権力を握り、自分の一族を要職に就けて国を私物化した。
1、漢文におけるダメ妻の特徴とは?
みなさんこんにちは。前回は、漢文における理想の妻を学びました。
「夫に適確なアドバイスを行う賢い」妻や、「何があっても夫に忠節を捧げる」妻が賞賛されたんですよね?なんか、「古き良き妻」って感じでした💡
本日は、理想とは真逆のダメ妻について紹介します。
ざっくりと言うと、理想の妻像とは真逆の人がダメ妻です。
えっと…夫に良いアドバイスができず、裏切ったりする妻ですか?
アドバイスどころか、夫の足を大きく引っ張ることが多いです。さらに、美人の場合が多いです。
外見だけ良くて夫に愛されているけど、自分勝手に振る舞って国を混乱させる妻ってことですね。
その通りです。今でも社長やスポーツ選手の妻はだいたい美人ですが、たまに夫の仕事に口出しして業績や成績を悪化させてしまう場合がありますね。あれと少し似ています。
あー…たまにそういう人見る気がします。いわゆる「さげまん」というやつでしょうか。
今も昔もダメな妻は変わらないみたいですね笑
そうみたいですね。それでは、ダメ妻の具体例として3人紹介したいと思います✨
2、残虐な刑罰を考案した美人妻 妲己(だっき)
まず取り上げたいのは、妲己(だっき)です。
タイトルがめっちゃ不穏なんですが…笑
妲己は周王朝の紂王(ちゅうおう)という人物の妻でした。非常に美しかったとされます。
美人セレブ妻ですね✨
しかし、妲己は紂王が仕事を怠るのを注意するどころか、一緒に豪勢に遊びます。
例えば、酒を流して池を作り、木々に肉を吊して林を作り、人々を裸にさせて昼夜問わず酒を飲み続けました。
酒の池に肉の林って、とんでもない贅沢ですね。いくらかかるんでしょう?
いくらかは分かりませんが、自分たちの金をこんな風に使われて、民衆は紂王と妲己を恨んだようです。
それはそうでしょうね笑。現代でも政治家の税金の使い方は厳しく監視されていますし。
ちなみに、ここから「酒池肉林(しゅちにくりん)」という熟語が生まれ、「贅沢の限りを尽くすこと」という意味で今でも用いられます💡
言われてみれば、「酒池肉林」ってまんまですね笑 この言葉は、妲己と紂王が生んだ言葉だったんですね💡
2人がこのような振る舞いを行ったいたので、部下が意見したり反乱を起こすことがありました。妲己はそのような人々を罰する方法として、「炮烙(ほうらく)の刑」を考案します。
「炮烙(ほうらく)の刑」 ってどんな刑罰なんですか?
諸説ありますが、『列女伝(れつじょでん)』という文献によれば、銅の柱に油を塗り、下から熱させ、その上を罪人に渡らせたと言います。油が敷いてあるので、当然罪人は柱から落ち、焼けただれたそうです。
えぇ…なんかアトラクションっぽいけど、めちゃくちゃ残忍ですね💦
また妲己は、その落ちて焼け苦しんでいる罪人を見て、笑っていたそうです。
えぇ…さらにドン引きです💦道徳心のかけらもない!!
結局、紂王は部下からの反乱を抑えきれず、自殺します。妲己は捕らえられて、断首されました。
まぁ当然の結果って感じですね。しかし、妲己が悪いっていうか、紂王と妲己の2人が悪いって感じですね💡
そうですね。漢文において、紂王はダメ君主の代名詞、妲己はダメ妻の代名詞として登場することがあります。知名度が高いので、知っておいて損はないでしょう。
3、跡継ぎ問題を起こして国を混乱させた美人妻 驪姫(りき)
次に紹介するのが驪姫(りき)です。彼女は、春秋時代、晋(しん)の献公(けんこう)という殿さまの妻です。
タイトルから見るに、この人も大分やらかしてそうですね…💦
驪姫は、美しい女性であり、献公にとても愛され、献公の子どもを産みます。一方、その子どもより前に生まれた別の妻の子が跡継ぎとして既に決まっていました。さてマオさん。驪姫は何をしたと思いますか?
これって、前勉強した竇皇后(とうこうごう)と同じことしたんじゃないですか?つまり、その跡継ぎ予定の子どもを殺して…
その通りです。中国の政治あるあるが大分分かってきましたね✨
驪姫は、跡継ぎ候補はもちろん、その他に候補になりそうな子どもを次々と始末します。この方法が非常に狡猾(こうかつ)でした。
狡猾って、ずる賢いってことですよね?何したんですか?
例えば、ある息子が亡くなった母を祭る際、捧げる供物を用意し、献公に届けました。しかし献公は不在だったので、代わりに驪姫が受け取ります。
そして、その受け取った供物に対し、強力な毒を仕込み、「その人が献公を毒殺しようとしている!」と主張します。そのでっち上げた事件のせいで、その供物を用意した息子は自殺します。
思った10倍くらい狡猾でした…💦
その後、驪姫は念願であった自分の息子を跡継ぎにすることに成功しますが、献公が亡くなった後、臣下に国家を混乱させたとして殺されます。
痛々しいけど当然の結果というべきでしょうか…
このように、政治介入して自分勝手に振る舞って混乱させるのは、割とポピュラーなダメ妻です。割と登場するので、知っておくと良いでしょう。
現代だと、安○元首相の夫人が割と似ている気がしますね。
あー確かに、驪姫ほどではないですが、明らかに夫の足を引っ張っていましたしね💦あのイメージとある程度重なるかもしれません。
4、夫の国を乗っ取ろうとした妻 呂太后(りょたいごう)
最後に、呂太后(りょたいごう)という人物を紹介させて下さい。
今回もタイトルが不穏だぁ…💦
呂太后は、前漢の初代皇帝、劉邦(りゅうほう)の妻であり、2代目恵帝(けいてい)の母親です。
ざっくり言うと、呂太后のしたことは、驪姫の成功バージョンと言って良いと思います。
呂太后も、自分の息子を跡継ぎにするために色々したんですか?
頑張りましたが、驪姫のように汚いことを行わなかったです。臣下の反乱を未然に報告するなど、国のために働き、発言力を高めます。だからかもしれませんが、呂太后は無事、息子を後継者に据えることができました。
おー✨驪姫よりすごくやり手ってことですね!
そうですね。元々、夫の劉邦は、呂太后の息子=恵帝の穏和な性格を嫌っており、何度も後継者から外そうとしたり、他の後継者を立てようとしていました。それを呂太后がうまく工作し、恵帝が後継者となりました。
問題は、劉邦が死んでからです。まず、別の美しい夫人とその息子を殺します。
正体表しましたね💦
特にその殺し方が残忍でした。呂太后は夫人が晩年、劉邦に愛されたのが気に入らなかったようで、両手両足を切り、目をくりぬき、耳と喉を潰し、便所に放り込みました。呂太后は、その様子を見て笑っていたそうです。
えぇ…ドン引きです…
また、その後、呂太后は自身で政治を取り仕切るようになり、自分の一族を要職に就け、やりたい放題します。
驪姫はうまくできなかったけど、呂太后はうまくやりましたね!
そうですね。しかし間もなく呂太后は亡くなり、その後一族は全員殺されます。
あぁ…悪いことはするもんじゃないですね💦
以上の部分は、横山光輝『史記』で漫画として読むことができるので、読んでみて下さい。面白いですよ。
また、呂太后は、則天武后(そくてんぶこう)・西太后(せいたいごう)と共に「中国三大悪女」と呼ばれることがあります。
則天武后と西太后は世界史で聞いたことがあります。この2人の話もいつか聞いてみたいなぁ…
機会があればまた紹介しますね。本日もお疲れ様でした!